【中学受験】国語の勉強をしても、成績が上がらない理由。「見えない壁」を解説

「国語」の指導・学習法
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こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。

国語はとらえどころのない科目といわれています。

成績が良くないとき、「何をしたらいいのか?」がわからないというお悩みを抱えるご家庭は、多いのではないでしょうか?

今回の記事では、「国語の成績不振の背景にあるものは何か?」「本当にやらなければならないこととは何か?」について書いてみたいと思います。

国語の力を上げるために必要な「素地」とは?

他科目の場合、テストの点数が悪いと、「我が子は、『つるかめ算』が苦手なようだ」→「つるかめ算の問題をやろう」という発想になりますよね。

そして、ある程度は正答率が上がったり、成績が上がったりする。

このような他科目の勉強法を、国語にも流用して、「『テクニック(読み方・解き方)』の問題集をやろう」と考える方もいらっしゃいます。

しかし、「やってみたものの、国語の成績が上がらない」と悩む方は多いはずです。

その場合、そもそも、子どもが問題集の内容をものにするための「素地」が足りていないケースが考えられます。

国語の「素地」とは、大きく分けると、「(1) 活字慣れ(情報処理力)」「(2) 語彙力」、「(3) 一般常識力」です。

これらの力は、漠然とテキストに取り組むだけでは伸ばしづらいので、日常生活(ご家庭)における取り組みが大事になります。

(1) 活字慣れ(情報処理力)

当ブログでアクセスが多い記事に、『令和の中学受験国語は激ムズ。「テストで時間が足りない」悩みの解決策とは?(1)』があります。

アクセス数が多い=それだけ、「読むスピード」が遅いことに悩んでいるご家庭が多いということですね。

それに関連して、「制限時間をつくるなどして、読むスピードを速めさせてみたら、今度はまともに内容が理解できなかった」というのも「あるある」だと思います。

結論から申し上げれば、精読するスピードは、「まとまった文章を読んでいる経験が多いか・少ないか」という経験値の量に左右されるのです。

国語が苦手な子どもが10分かけて読む文章でも、大人であれば5分で読めます。

なぜ読めるかといえば、別にテクニックを駆使しているわけではなく、中学~高校~大学~社会人と経て、色々な文章を読んできているからです。

中学受験の国語の入試問題は、平均字数は約6,000字、学校によっては14,000字を超える場合もあると言われています。

さらに、「設問文」「選択肢」も読まなければいけないので、実際に読む字数は、↑よりもっと多いことになります。

ちなみに、この記事は約4,000字。読んでいて「長い」と感じる方もいると思います、でも実は、お子様が日々がんばって取り組んでいる、国語の平均文字数よりは、全然短いんですね・・・。

(※ データ参照元:ダイヤモンド・オンライン『【驚愕!】中学受験の国語の入試問題で要求される「文章を読むスピード」はどのくらいか?』

要するに、中学受験の国語の長文問題を読みこなすには、12歳にして、成人年齢と同等の「活字慣れ」が必要ということです。

それには、「普段から本を読んでいる子」が圧倒的有利であるのはおわかりいただけると思います。

(2) 語彙力

「英単語を知らない限り、英語の長文読解ができるわけがない」というのと同じで、中学受験の国語でも「語彙力」がない限りは、文章読解はできません。

それに気づいたご家庭は、『語彙力アップの問題集』に取り組むと思いますが、「効果が見られない」という話もよく聞きます。

その理由は、さきほどの「活字慣れ(情報処理力)」の理屈と似たものになります。

大人であれば、『語彙力アップの問題集』に取り組んだことがなくても、語彙は十分に身についていますよね。

大人は長く生きていて、色々な文章を読んできている。加えて、たくさんの会話をしてきた経験から、語彙を身に着けているのです。

色々なご家庭を見てきた経験から、「会話において、適切な表現を取る親御様の子は、国語ができる(できるようになる)という傾向は見出せます。

小学生の場合、子ども同士で話しても、そう高度な内容の会話なんてしませんので、難解な語彙・言い回しを学ぶのは、親御様(ご家族)からということになります。

かといって、親御様が子どもの話を聞かず、自分の言いたいことばかり、一方的にずーっと話しているようだと、当然ですが、子どものアウトプットの機会は失われるので、語彙力は磨かれなくなります。

なるべく、子どもに話をさせなければいけません。

「じゃあ、どうすればいいの?」という疑問に対してのお答えは、以下の二つの記事に書きました。

上の記事は、「語彙力の問題集を有効に使う方法」、下の記事は、「語彙力・表現力を伸ばすための対話の仕方」となります。いずれにせよ、ポイントは「親子間の対話」です。

(3) 一般常識力

文章を読むには、実は「一般常識」が必要です。

日本語には言葉が多い。それは、同じ物事を言うのに、いくつも言い方があるからだ。(中略)地位や職業による話し方の違いや、方言による話し方の違いもあり、日本語には言葉の数が多いということになる。

(出典:『国語〈1〉日本語の探検にでかけよう』 桐山久吉 汐文社)

たとえば、この文章は大人なら理解するのはたやすいですが、小4くらいだと理解できる子と、理解できない子にわかれます。

「地位や職業による話し方の違い」とか「方言による話し方の違い」が何なのかを、経験から知っている(気づいている)子と、知っていない(気づいていない)子がいるからです。

また、物語文であれば、以下のようなシーンを読み取るのにも、常識が必要になります。

「登場人物が、病気で苦しんでいる」→ (場面は一転) → 「箱の中で、さきほどの病人が目を閉じている。声をかけても、起き上がらない」

大人であれば、登場人物が「亡くなって、棺に入れられた」ことがわかりますよね。

しかし、これも子どもにおいては、大人と同様に理解できる子と、「なんで箱の中で寝てるの?」と感じる子に別れます。

読書しないなら、せめてマンガを読んでほしい

「亡くなった」ことがわかる子が、何故わかるかといえば、ここまでに書いたように、本を読んで知っていたり、親子の会話の中で知っていたりするからです。

あとは、マンガ、ゲーム、テレビドラマ等で、「死」に触れていたり、お葬式のシーンを見ていたりするパターンがあります。

一番わかりやすいのは、『ドラゴンクエスト(ドラクエ)』というゲームです。(最近の若い子は、あまりプレイしませんが・・・)

ドラクエでは、キャラクターが敵の攻撃を受けて死ぬと、「かんおけ」に入るのですが、子どもはそれを見て、「そうか。人間は死ぬと、かんおけに入るのか」と理解するのです。

さきほど、「方言」の話がありましたが、『名探偵コナン』に出てくる「服部平次」というキャラクターは、「西の高校生探偵」という異名を持ち、関西弁を使って話します。

ですので、コナンを読んだことある・観たことある子なら、服部平次の関西弁を思い出して、「方言による話し方の違い」という文章内容も、特につまづくことはなく理解できるでしょう。

大昔には、マンガやゲームやテレビといった、サブカルチャーが「悪」とされた時代もありました。

まあ、そういう意見が挙がる理由もわからなくはないのですが(「受験期」のゲームは、「節制」はすべきですし)サブカルチャーを極端に禁ずれば、結果として、文章もロクに読めない人間が出来上がってしまいます。

「机に座って、真面目にお勉強」だけしていれば、同世代の中で優位に立てるかといえば、そんなに甘くはないのが、現代のハイレベル化した中学受験。そのことを、親御様としては心に刻んでおいていただいたほうがいいでしょう。

また、最近はマンガを読む子すら減り、余暇にはYouTube動画を観ている子が多いです。

しかし、YouTubeは「自分の好きなものだけ」を観ることになり、「ああ、世の中には、そういう物事・考え方もあるのか」という新しい発見が少ないため、一般常識の幅は広がりづらいんですね。

私の生徒でも博識な子がいて、色々知っているので、「それ、どこで知ったの?」と聞くと、「こち亀」「ワンピース」などと返ってきたこともあります(笑)。

だから、「本を読まないなら、せめてマンガだけでも読んでくれ!」というのが、私の本音ですね。

まとめ:親御様の「理解」が最も大事

国語が伸びない理由は、必ずしも本人の努力不足とは限りません。

活字慣れ、語彙、常識といった「素地」が整っていなければ、どれだけ問題を解いても、結果につながりづらいのです。

本記事では、その「素地」をどうやって育てていくかについて、具体的にお話ししてきました。

もちろん、ご家庭にはそれぞれの事情があります。

できることからで構いません。「無理なく、でも見落とさず」気づいたところから、小さな変化を重ねていってください。

さて、国語ができない原因、つまり「見えない壁」は、1つではありません。

「常識・背景知識の不足」「読み方のクセ」「努力の方向性」など、子どもがつまずく理由は多面的です。気になるテーマがあれば、このページ下部の【関連記事】も、ぜひご覧ください。


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