ネット上でよく見かける「勉強しているのに、成績が上がらない。勉強の方法が間違っているのではないか? 何かもっと良いやり方があるのではないか?」というお悩み。今回の記事では、このお悩みに元 大手集団塾講師、現 家庭教師の立場からホンネでこたえます。
塾や家庭教師のウソ? ホント?
冒頭のお悩みに対する返答として、「今、やっている取り組みが、成績に反映されるまでには時間がかかるから、待つことが必要である」「学力自体は上がっているが、答案用紙に反映させる(点数を取る)だけのスキルが備わっていないので、それを与えてあげることが大事」といった内容が考えられます。
一般的に、塾や家庭教師などに相談をした場合は、概ねこのような話をされることが多く、私から見ても、子どもの状態によっては、その通りの場合もあります。
ただ、ホンネを言うならば、この業界にいて様々なご家庭や子どもと接してきた経験上、「勉強しているのに、成績が上がらない」事例に関しては、もっと別の要因があることが多いです。
人それぞれの「能力」がある
成績が伸びる要素として、勉強時間数を増やすことや正しい方法を取ることも挙げられますが、その子の元々持っている能力も重要です。
2人の子どもが、全く同じやり方で、勉強を1時間やったとします。すると、片方の子は、10を理解して応用問題まで解けるようになる。一方で、もう片方の子は、3の理解で基本問題もおぼつかない。こういった差は現実として存在します。
「努力を積み重ねたとしても、誰もが東大に入れるわけではない」「偏差値70になるわけではない」という言説に納得されない方はいないでしょう。
そして、この「東大」「偏差値70」という限界値の部分は、人それぞれの能力によって変わってくるわけです。それは、読者様ご自身の受験を振り返ってみることで、おわかりいただけるとも思います。
また、親御様の世代の「努力」とは、いわゆる「暗記(反復演習)」の積み重ねが多くの割合を占めていましたが、今は「いかに頭を動かすか」が重要である、というように、入試問題と受験勉強自体の変化も生まれています。
「能力」というものは、塾のテキスト学習では伸ばしづらいものです。
たとえば、国語であれば、語彙力、読んだ文章を頭の中でイメージする力、読んだ内容を一定時間、頭の中で記憶しておく力(ワーキングメモリー)、他人の話を理解しようと咀嚼する力、といった力が挙げられます。「本当の意味での学力」とも言い換えられるかもしれませんね。
「本当の意味での学力」を伸ばすには? 「受け身の学習」を避けるには?
ただし、ご理解いただきたいのは、私は「能力が高くない子は、成果を出せない」と言いたいのではない、ということです。能力を少しずつ上げること自体は可能ですし、上がった事例も見ています。そうなるように試みるのが、家庭教師としての自分の仕事だとも思っています。
では、本当の意味での学力を上げるには、どうすれば良いのか? そのポイントは、ご家庭での対話と読書習慣です。このブログで、ずっと書いてきたことでもあります。
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「中学受験は親が9割」と言われます。その言葉を、スケジューリングや問題のやらせ方が大事なのだ、という受け取り方をされるご家庭が多いです。
確かにそれはそれで大切なのですが、本質的には、親御様自身が思考する姿勢を見せることや、教養を持って、お子様と接することが大事、ということを示しているのだと、私は考えます。
また小学生は、中高生と違って、親主導で勉強習慣さえ作ってしまえば、量だけはたくさんこなせるようになる、という傾向もあります(中には拒否する子もいますし、子どもの性格にもよりけりですが)。
長時間、勉強をやってはいるものの、受け身になっていて、自発的な頭の動かし方ができていないため、結果に結びつかない、ということもあるでしょう。
中学受験においては、親御様が日々の学習の舵取りをするのは大事なことではあるのですが、「なんか伸びないな?」と感じたときには、ある程度の自走をさせるご覚悟や工夫も必要です。
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「中学受験 いかに子どもを自走させるか?(後編)-親が子どもの勉強に関わるべきタイミング」
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ここまでの話のまとめ
ここまでの話をまとめると、以下のようになります。
・ 長時間学習をしているのに、成績が伸びない要因は、(1)「能力」、(2)「受け身の勉強」にあることが考えられる。
・ 「能力」は、塾のテキスト学習では上がりづらい。
・ 保護者様の話し方や、環境の作り方次第で「能力」を少しずつ上げることはできる。
・ 「受け身の学習」になってしまっているのであれば、ある程度の自走をさせることも大切。
課題点を解決するために、具体的にどうすれば良いか? という話に関しては、当ブログの関連記事を参考にしていただければと思います。
基本的に、自分のブログの5割くらいはその手の話題なので、興味を持っていただけたのであれば、ぜひ関連リンク以外の記事もご覧いただければ幸いです。
また、個人的に何か質問・相談されたいことがある場合、メールをいただければ、私のおこたえできる範囲でおこたえいたしますので、遠慮なくご連絡ください。
補足説明:国語の能力は年齢と共に伸びることも
ここからは補足の説明になります。先に書いた国語の能力(語彙力、読んだ文章を頭の中でイメージする力、ワーキングメモリー、他人の話を理解しようと咀嚼する力 など)について。これらは、年齢と共に自然と伸びることもあります。
幼児期は、話し始めるのが早い子もいれば、遅い子もいます。文字を理解するタイミングも同様で、子どもによって差があります。ですが、だんだんみんなおしゃべりができるようになり、文章が読めるようになりますよね。
中学受験生も、まだ10~12歳で成長の途上にあるのですから、ある意味では幼児と同等なのです。今は伸びていなくても、この先、伸びていくこともあるのだ、とおおらかに構えていただくことも、まだまだ長いお子様の人生において、大切なのではないかと考えております。
(入試日というリミットがあることを考えると、そうお考えいただくのは、なかなか難しいものがあるのは重々承知ですが・・・!)
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