中学受験 語彙力アップの方法とは? 問題集・テキストの使い方

「国語」の指導・学習法

中学受験を目指すご家庭から、「うちの子、語彙力がないんです」とはよく受ける相談です。

市販の教材をやらせてみたものの、力がついている感じがしないのでやめたとか、難しい日本語は無限にあるので網羅しきれず、「キリがない」のでやめたとか、そういったご家庭も多いと思います。

実は自分も、以前は語彙力強化ドリルをやらせることに、効果を感じていなかったのです。ですが、最近は意味はある(=生徒の言葉の力を伸ばせている)と実感しています。

この違いはなんだろう? と考えてみました。まず、上手くいかなかったときは、個別指導塾に勤務していたときで、上手くいっている現在は、家庭教師をしている、という違いがあります。それらが何を示すかといえば、個別指導塾の勤務時代は、生徒の保護者とのかかわりは無く(←塾内規定のため)、家庭教師の今は常にかかわっているという違いがあります。

つまり、「親御様に話し方を変えていただくことが、子どもの語彙力を増やせるかどうかだ」、と気づきました。ご家庭での具体的な取り組み方については、この記事の後半に書きます。

語彙力アップのための家庭学習の方法

では、実際に自分が取り組んでいる語彙対策について書いてみます。

おすすめの語彙力問題集

まず「教材」ですが、空欄に入る言葉を選択肢で選び、言葉の意味も確認できるタイプのものをおすすめします。【例:さんざん歩いたので、(    )。】←このカッコを埋める問題があるテキスト、ということです。

『語彙力アップ1300 (1) 小学校基礎レベル』 https://www.amazon.co.jp/dp/4883999130/

たとえば、上記の教材がその一例です。ただし、同様のフォーマットのテキストは他にも色々と出版されており、どれを使ってもいいでしょう。

上記形式のテキストをおすすめするのには、言葉の意味は、文脈で考えて理解することが大事だからという理由があります。

たとえば、「皮肉」という言葉を辞書で調べると、「弱点をつくなど骨身にこたえる事を、それとなしに言う、意地悪な言葉」となっています。ただ、その解説を単体で読むよりも、同時に「足が遅い子に対して、『わ~、足が速くてスゴイね!』と皮肉を言った」という例文(使い方)も見た方が、納得感があるはずです。

また、そもそも論になりますが、語彙力対策なんてしていないのに、語彙が豊富な子どもは存在します。彼らがなぜ語彙力があるかといえば、会話の中で、他人が言葉を使っているのを聞いて、意味を推測するうちに、言葉を自分のものにしているからです。ですので、ドリルの穴埋め問題で、(疑似的ではありますが、)文脈から、使えそうな言葉を考えてみることにも意味はあります。

辞書型や単語帳型の語彙テキストを「読む」という学習法は、よほど言葉に強い興味がある子でない限りは、避けた方が無難です。

語彙力問題集の効果的な使い方

自分が国語を指導する際は、生徒に語彙力の教材をやらせっぱなしにはしません。必ず、教材を使って、問いかけたり、考えさせたり、会話したりしています。

全てをここで紹介することはできないのですが、一部の取り組みを紹介します。

・ 新しく例文を作って、言葉の使い方を示してみせる。
(例:先ほどの「皮肉」とは違う例文をつくるなら、「人々はさらなる科学の発展を願ったが、皮肉なことに、公害問題が発生した」といった内容が考えられます。それを教えた上で、「この文脈での『皮肉』の意味は何だと思う?」と本人に推測させるのも効果的です)

生徒にも例文を作らせる。

・ 「この言葉と似た言葉や、反対の言葉を教えて」と聞いてみる。

・ 普通は〇〇の場合にしか使わない、といった特記事項を話す。
(例:「『サッカーのPK戦に失敗する前兆があった』という言い方は、〇だと思う? ×だと思う?」と聞く。→「正解は×。『前兆』という言葉は、普通は自然現象にしか使わないよ」と教える)

・ 間違えやすい意味の言葉を解説する。
(例:「『気が置けない』は、『安心できない』のようなマイナスの意味に捉える人が多いけど、テキストに書いてある通り、逆の意味だよ」)

・ 語彙ドリルで勉強した言葉が、読解問題で再登場したら、それとなく気づくよう仕向ける。
(「なんか見たことない?」というように、あえて抽象的な問いかけをするのがポイントです)

「親の話し方を変える」とは?

冒頭の話題に戻ります。率直にいえば、上記のようなやり取りを、1週間に10分程度、家庭教師が行ったところで、根本的な問題は解決されません。ですので、あとは親御様に引き継ぐ形になります。記事冒頭で書いた「親御様の話しかけ方を変えていただく」というのは、このことです。

具体的にいえば、授業中の様子を見て、私の声かけの仕方を真似していただいています。ただ、それではブログの読者様にとっては不親切な書き方になってしまうので(汗)、2つほど取り組みやすい声かけの仕方を紹介しましょう。

・ 語彙ドリルに取り組んだ後、少し間を空ける。そのうえで答えを隠しながら、例文だけ見せて、「この言葉の意味は何?」と子どもに推測させる。

・ 意識的に語彙ドリルに載っている言葉を使って、子どもに話しかける。そのうえで、「今の意味わかる?」と聞いてみる。

語彙力問題集を使うときの注意点

最後に、語彙力ドリルを使う際に気をつけていただきたい点をお伝えします。

この記事の冒頭に書いた「語彙のテキストをやっても、キリがない」という発言は、受験に頻出の語句を、英単語のように「覚えきろう」という発想から来るように思います。

英単語だったら、[apple]を一度覚えてしまえば、すぐに他の教材やテストでも、何度も何度も[apple]が出てくるので、努力が報われた・勉強に役立っている、という気分になります。しかし、国語の語彙はそういった感覚にはならないので、「キリがない」と感じやすいのですね。

語彙力強化のテキストは、子どもが、ただ作業的に選択肢を選んでおしまい、としていると身に着くものは少ないと思います。教材を「解く」だけではなく、教材を使って「大人と子どもで話をする」ことが大切です。

こういってはなんですが、語彙ドリルでやった言葉なんて、入試本番では登場しないかもしれません。では、なぜ私は取り組むことを推奨しているのか? それは、語彙力が弱い子は、知らない言葉を見たときの頭の使い方を変える必要があるからです。また、言葉に対する解像度を高くすることが大切で、そのきっかけとして教材を使ってほしいと考えています。

繰り返すようですが、確かに語彙ドリルをやらなくても、難関校の国語の文章を読みこなし、合格していく子もいます。ですが、そういう子は知らない言葉を見たときの頭の動かし方が優れているのです。そして、それはご家族のお子さんへの話しかけ方が大きく影響しています。今お子様の語彙力が足りないと感じるのであれば、ここまで書いた方法をぜひ参考にしてみてください。応援しております!


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