こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
「夏休み明けから、国語の点数が急に下がった」「なんでこんなに読めなくなったのか、理由がわからない」
小5の秋以降、サピックスにお通いの方から、こうした悩みのご相談が一気に増えます。
実はサピックス国語は、小5後半から「目に見えない壁」が立ちはだかるように設計されています。
夏休み前にそれを知っておくことで、有効な対策が打てるのです。
本記事では、過去に詳しく解説した内容を再構成し、小5後半の「説明文・論説文」「物語文」がなぜ難化するのか? を整理しなおしました。
夏の学習方針を考えるための参考になれば幸いです。
【再整理】小5の2学期 サピックス「論説文」、読めない原因はどこにある?
上記は、2年前に書いた記事です。「小5 1学期」と「2学期」のテストの文章を比較して、「何がどう難しくなるのか?」を具体的に解説しています。
2学期以降は算数も難しくなりますが、カリキュラムの「比」「割合」「立体図形」といった「新出単元」を見たとき、傍から見て「難易度が上がるんだろうな」と予測がつきやすい。
対して、国語のカリキュラムは、「物語文」「論説文」「随筆文」など今までと全く同じ。
その割に、テストだけステルスで難しくなるので、「急に成績が落ちた!」と戸惑う親御様が多いです。
2学期国語の「難しさ」の正体は、「文章内で使われる語彙」「テーマ」の抽象度の上昇にあります。
たとえば、1学期までは「日本と外国のコミュニケーション方法の違い」といった、具体的で想像つきやすいテーマが出されます。
しかし、2学期からは「人それぞれが持つ価値感」や「文明と自然の関係」というように、抽象的な内容になっていきます。
「方法」←→「価値観・関係」では、前者のほうが「抽象度が低く(簡単)」、後者は「高い(難しい)」のはおわかりいただけると思います。
夏休み中にやるべき、国語力の土台づくりとは?
夏明けの難易度上昇に備えて、ご家庭でできる対策は、(1) 語彙力を拡充することと、(2) 定期的に論説文に触れることです。
(1)については、『市販の語彙問題集』を使って、親御様が「声かけ」や「会話」をすることが大事でしょう。
語彙については、子どもに「ただ問題を解かせるだけ」だと、あまり定着は期待できないと思います。
子どもが「頭を使って解く」ことをせず、形式的に穴埋めをして終わるからです。
日本語の語彙は無数にあります。よって、英単語の暗記のように「覚えきろう」としてもキリがない。
そのため、子どもに言葉の「推測力」をつけてあげることが何よりも大切になります。それには「親御様の関わり」が有効です。
以下の記事で、『語彙問題集』の使い方について書いたので、ぜひ参考にしてくださいね。
「(2) 定期的に論説文に触れる」ことも大事です。
サピックスの夏休みのカリキュラムは、「物語文」の割合が圧倒的に多いです。
そのため、漠然と塾に通っているだけだと、「論説文」「随筆文」に全然触れないまま、45日間を過ごすことになり、9月には読み方を忘れてしまっています。
『国語の要』や、一学期の『Aテキスト』の「論説文」「随筆文」に意識的に触れると良いでしょう。
ただし率直にいえば、サピックスの国語で安定して得点するには、「大人度」が要求されるので、勉強っぽい勉強を重ねたとして、「完璧な対策」にはなりません。
最近、関西の大手進学塾「浜学園」が、「小4で『ヨンデミーレベル45』に到達していないと、塾の教材は読めない」と公式発表し、読書習慣の大切さを伝えました。
「ヨンデミーレベル45」とは、厚みのある児童文学を一人で読めるレベルを意味します。
「じゃあ、サピックスの小5後半の論説文を読めるようにするには、どのくらいの読書レベルが必要なんですか?」
こういった問いを受けたなら、「新書(『ちくまプリマ―新書』など、子ども向けのものでOK)が読めればベスト」と答えられます。
ただし、本人が新書に興味を持てなければ仕方がありません。「子ども」ですからそんなものです。その場合は、切り替えてやれる勉強をやっていきましょう。
【再整理】小5の秋、サピックス「物語文」で戸惑う理由を解説します
こちらの記事では、小5 2学期からの「物語文」の難化について解説しています。
個人的な感覚として、物語文のほうがさらに「大人度」が要求されて、論説文よりも対策が難しいように思います。
そもそも、「大人度」とは何なのか? 簡単に説明すると、以下の通りです。
「大人度」とは・・・「おぼっちゃま・お嬢ちゃまのお子様」にとって、身近ではない心情の理解ができるか否か?
例:【障がいを持つ人の心情】、【戦争中で死が間近に迫っている人の心情】など。
子どもが、一気に15歳や18歳に成長できる魔法があれば、サピ 2学期の問題にもすらすら対応できるのですが、そんなことはありえません。だからこそ、中学受験は難しいといえます。
そもそも、サピックスで2学期から出題される物語文は、偏差値60くらいの学校で出されてもおかしくないようなレベルの内容も多いです。
「小5の今、できるようになる」必要があるかといえば、そうでもないと思います。(「最上位校」を目指すなら少し別ですが・・・)
国語の点数が落ちると、大体、みなさん「問題を解く」ことで何とかしようとします。
しかし、「問題を解く」ことで対策できるのは、主に「問題の解き方」だけだと思います。
国語の場合、「語彙力」、「読むスピード」、「常識力」、「精読して要旨を掴む力」という4つが身について、はじめて「問題の解き方」対策が生きてくるのです。
サピの国語の偏差値が、平均で55に届かない子の多くは、4つの力のうちいずれか、あるいは複数が不足しています。
国語は、他科目と違って二度と同じ問題は出ません。すなわち、パターン認識や暗記が効かず、「頭の使い方(あとは教養)」が露骨に反映される教科です。
「頭の使い方」は、日々の正しい取り組みの中で、徐々に良くなっていくものです。
親御様が焦る気持ちはよくわかりますが、焦っても仕方ありません。地道にやれることをやっていきましょう。応援しております。
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