小5後半、サピックス国語の難易度上昇について(説明文・論説文の注意ポイント)

「国語」の指導・学習法

中学受験の国語のテストは、小5の後半(二学期以降)、急に難しくなります。特にサピックスにそれが顕著です。

算数であれば、小5夏~後半にかけて「比」「割合」「立体図形」といかにも難しそうな単元が並ぶので、ご家庭としても多少は心構えができますが、国語の場合、なんの予告も無く、唐突に難易度が上がります。

しかも、国語は難しくなった要因が、ぱっと見ではわかりづらい教科なので、保護者様は「いきなり成績が下がった」という現象だけに振り回され、悩まれることが多いように思います。

そこで当ブログでは、小5後半、サピックスの国語テストで何が起こるのか? を解説したいと思います。今回は、「説明文・論説文」についてです。

(※ 「物語文」についての記事はこちら:『小5後半、サピックス国語の難易度上昇について(物語文の注意ポイント)』

小5後半 サピックスの説明文・論説文とは

『小5前半のマンスリーテスト』と、『小5後半のマンスリーテスト』の文章内容(説明文・論説文)を引用してみました。まずは、双方を読んでみて、どのような違いがあるか考えてみてください。

【サピ 小5前半のテスト文章(2023年 4月マンスリーテストより引用)】

言葉の、すばらしい性質。目の前にそのモノがなくても、そのモノがあるかのように、考えることができます。
動物は、目の前にバナナがあれば、そのバナナのにおいを嗅いだり、見たり、触ったりって、いろいろできるけれど、目の前にバナナがない場合に、 バナナのことを考えるのはなかなか難しいのです。
人間は、「バナナ」という言葉があるので、バナナが目の前になくても、「バナナを買ってきて」とか、「バナナよりレモンのほうが黄色いよね」とか、そういうふうなことを言ったり、考えたりすることができます。これって、ほんとうにすごいことなんです。(後略)

橋爪大三郎『ふしぎな社会』筑摩書房

【サピ 小5後半のテスト文章(2021年 11月マンスリーテストより引用)】

言葉は常に変化する。諸行無常だ。
常日頃、そう公言している私にとって、若者の言葉が自分たちとかけ離れていても、さほど気になることはなかった。「ら抜き」言葉とか、何でもかんでも「カワイイ」と言うとか。それはそれでいいのではないか、カワイイじゃないか、とさえ感じる。
しかし、最近、少し気になることがある。
私が接する大学生の中に、やたらと自虐的な言葉を使いたがる人が多いことだ。
「どうせ、バカなので」
「俺、ヤバいでしょ」
「ゆとりですが、何か?」
よしたほうがいいと、いつも言う。使う言葉が、自らの行動を縛ることがあるからだ。

教育心理学に「ピグマリオン効果」と呼ばれるものがある。
ある実験によると「キミは本当に才能がある」と教師から期待の言葉をかけられた子どもは成績がどんどん上がることが分かった。逆に「お前は落ちこぼれだ。才能がない」と言われ続けた子は、言葉通りどんどん成績が落ちたという。これがピグマリオン効果だ。言葉による暗示が、人の行動や考え方を縛るというわけだ。(後略)

金田一秀穂『日本語のへそ』青春出版社

サピックスの小5前半と、小5後半の国語の文章の違い

私は、二つの文章の難しさの違いは、以下にあると考えます。

「読解テクニック」を必要とするか否かの違い

小5前半の文章と違って、後半の文章はエッセイ的なまわりくどい表現が多いです(説明的随筆文)。そのため、前者はざーっと読んでも意味が取れますが、後者は筆者が何を言いたいのかを、常に意識しながら読む必要性があります。たとえば、一段落は「しかし」という接続詞に着目すれば、その後に「筆者の主張」が来るのではないかな(そして、実際に来る)と考えながら読むことが大事です。その観点がないと、読み取りがぼんやりしてしまいます。

要求される「語彙力」の違い

前者より、後者のほうが「諸行無常」「自虐的」「教育心理学」「暗示」など使われている言葉が難しいので、子どもにとっては読み進めづらいです。国語が苦手な子の場合、「よしたほうがいい」という表現の意味がわからない、ということもあるはず。ちなみに、この文章の語彙レベルは、小5後半としては簡単なほうで、もっと使用されている言葉が難しいときもあります。

小5一学期中に取れる対策

では、難易度アップに備えて、小5一学期にどのような対策が取れるのでしょうか?

本文や問題文を斜め読みしていないかをチェック

小5一学期の説明文は、斜め読みや飛ばし読みをしていても、ある程度、点数は取れます。ですので、現段階で〇がついている問題があったとしても、子どもがしっかり読んだり、考えたりした結果ではないこともあるので注意が必要です。

特に選択肢問題は1/4の確率で正解するものですから、「当たりやすい」わけです。ですので、〇がついていても、「なぜ、アにしたのか?」「イの内容も本文に書いてあるが、何故それを選ばなかったのか?」など、子どもの問題解答の手順や頭の動かし方をチェックすることが大切です。着目すべきポイントをさらっと読み流してしまっているようなら、それとなく誘導することも肝要になります。

ただし、上記に書いたような確認・誘導作業は、結構さじ加減が難しいものです。これまでの学習の仕方や、子どもの性格によっては「別に〇がついてりゃいいじゃん」という発想から脱却しづらく、親子で衝突しやすいポイントでもあります。困ったら、プロの指導者にフォローを求めましょう。

論理的に読むための、読解テクニックを学ぶ

ここで言う「論理的な読み方」とは、【接続詞の用法を学び、筆者の主張を掴む】、【抽象例と具体例を読み分ける】など、要するに、保護者様が大学入試の「現代文」で実践してきたような読み方です。問題を解くために、本文で着目すべきポイントを知り、メリハリをつけた読み方を学んでいくことが、難しい文章読解に対応できるになるための一要素といえます。

しかし、小学生は言語が発達途上にあるので、読解テクニックの教え方には少々気を付けていただく必要があります。詳しくは、私が書いた以下の記事をご参考にしていただければと思います。

※ 参考記事:『中学受験 論理的な読み方を身に着ける(2)―国語の読解テクニックを紹介』

語彙力アップのための対策をする

語彙対策についても、別記事に詳しく書きましたので、そちらをご覧ください。

※ 参考記事:『中学受験 語彙力アップの方法とは? 問題集・テキストの使い方』

論説文特有の言葉は「知識事項」として覚える

たとえば、論説文特有の語句(対比の概念)に、[主観←→客観][絶対←→相対][普遍←→個別]といったものがあるのですが、これらは仮に普段から読書していても、身につかない語彙だと思います。ですので、論説文に頻出の難解な語彙は、少しずつ知識事項として覚えていく必要があります。

とはいえ、日本語の言葉なんて無限に存在しますから、あらかじめ全て潰そうとする行為は現実的ではないのも確かです。ある程度覚えたら、あとは二学期以降に取り組む文章の中で、わからないものが出てくる度に意味を調べる、というように実践の中で対処するのも大切です。

夏休みの説明文&A問題対策が、手薄になりがちなので気を付ける

小5の夏期講習、サピでは『サマーサピックス』というテキストを使います。これは『Bテキスト』と類似した記述問題中心の教材となります。

そして、『サマーサピックス』のジャンルは物語文が9割で、説明文・論説文は1割ほど、随筆文の扱いはゼロといった内容だったはずです。(※ すみません。ここに関しては、少しあやふや・・・。後日、詳細を確認の上、修正点があれば修正します。ですが、例年通りであれば、今年も大きな違いはないです)

要するに、『サマーサピックス』だけ漠然と取り組んでいると、45日間もの長期間、論説文、選択肢問題、書き抜き問題にほとんど触れないことになります。そして、読み方・解き方を忘れているところに、難化したテストが襲いかかる、という事態になってしまいます。

対処法を書きます。サピでは夏休みの家庭学習用の教材として、『国語の要』というテキストが配られます。このテキスト、多くの子は取り組まないままになりがちなのですが、二学期に備えて、特に説明文・論説文には意識的に取り組んでほしいです。また、一学期の『Aテキスト』で手付かずの読解問題があれば、そちらで演習してもいいと思います。

以下の記事では、サピ小5後半の「物語文」がどのように難易度が上がるか & サピックスの国語授業を受ける上での心構えについて、解説しております。


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