こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
以前、あるご家庭から「夏休みに塾の宿題を全てやらせれば、力は伸びますよね?」とご相談を受けました。
そう考えるお気持ちはよくわかります。しかし実は、それだけでは成績は伸びにくいというのが、私の実感です。
「夏休みで何とかしたい」というお気持ちを空回りさせないためにも、「家庭学習の取捨選択」、「塾の使い方(付き合い方)」を見直すことが大切です。
基本的には、小6生向けの記事ですが、それ以下の学年でも役立つ部分はあると思いますので、多くの方に読んでいただければと考えております。
夏休みの塾の宿題、全部やるべき?取捨選択の考え方
まず、夏休みや二学期以降を有意義に過ごすためには、塾から出される宿題は「取捨選択」をすることが大切といえます。
筆者も大手集団塾に勤めた経験があるのですが、塾の宿題は、何十人の生徒に対して、最大公約数での指示を出しているものです。
「あなたのお子様個人」が、どんな単元の、どんな内容に躓いているかに基づいて、宿題が出されているわけではありません。
塾から出される宿題の中には、その子にとって必要なものがある一方、そこまで重要でないものもあります。
実際には、別の問題に取り組んだほうが効果的なケースはよくあるのです。
また、だいたいの大手集団塾の課題量は非常に多く、まともに取り組んだら、終わらないくらいの量が出ることも珍しくありません。
なぜ、そんな出し方をするかというと、たとえば、塾に対して、「成績が上がらない」というご家庭からの相談があったとします。
その際、「〇〇さん、この単元ができていませんね。宿題のテキストに載っていますよ。繰り返し取り組んでいましたか? え、やっていない? じゃあやりましょう!」と対応できるからです。
各ご家庭で、子どもにとって必要な問題をピックアップして取り組ませられるのであれば、それが成績向上には一番良いと、塾講師の多くは理解しているのです(多分)。
しかし、それだと、親御様の伴走の負荷が大きくなってしまうので、「サービス」として宿題を出しているという事情があります。
中学受験で伴走する親御様は真面目な方が多いので、「宿題=義務」であると考えている方もいることでしょう。
また、「塾は子どもの成績をあげるために、宿題を出してくれているんだ」と漠然と捉えている方もいるはずです。
しかし、ここまでに書いた通り、塾の宿題は、主として成績向上を目的に出しているものではありません。(もちろん、成績向上の意味合いもありますけどね)
当たり前のことですが、塾もボランティアをしているわけではなく、ビジネスとして、経済的合理性に基づいた行動をしているのです。
だから、塾の言うことを全て鵜呑みにするのではなく、主体を家庭に置いて、塾を「活用する」心構えを持っていただくのが大事になります。
宿題を取捨選択する際は、「入試から逆算」した上で、「今、この子に本当に必要な課題は何か?」を考える必要があります。
親御様が「入試からの逆算」の意識を身に着けるには、志望校の過去問を見ていただいたり、あるいは、実際に解いていただいたりするのがベストでしょう。
ただ、それが難しいという場合は、塾の先生に「すべての宿題を終わらせることができないのだが、今のこの子に必要なことは何なのか? 内容を絞ってほしい」と相談してみてください。
年度初めや保護者会などで発表される「宿題の優先順位」も、結局はクラス全体に向けた最大公約数の指示でしかないので、必ず個別に質問してみましょう。
過去問は夏から解いてOK? 中学受験で失敗しないタイミングとは
志望校の過去問は、塾によって「9月から」、あるいは「10月から」取り組むように指示が出ます。
しかし、これも「そのタイミングで始める=合格できる」という理屈に基づいているわけではありません。
単純に、7月・8月などに生徒に答案を持ってこられると、講師のチェックが追い付かなくなるからです。
特に夏期講習中は超多忙であるため、生徒が50人いたとして、50人バラバラの受験校の問題を確認できるわけがありません。(自分は集団塾時代、夏休みに、最長で1日12時間の授業をしたことがあります)
さて、過去問にはいつから取り組むべきなのでしょうか?
とはいえ、過去問演習の実態をご存知でない方も多いと思います。そこでまずは、「2学期以降の過去問演習で直面する現実」を見てみましょう。
(1) 1年分解くのに180分+直しの時間がかかる。
(2) 2学期以降、毎週解けるとは限らない。
(1) 過去問演習は時間がかかる
過去問を解くのにかかる時間は、学校によりけりですが、一般的には、算数50分、国語50分、理科40分、社会40分で、計180分。
それに「直し」が加わるので、さらに時間を費やすことになります。
時間的なことを考えると、二学期以降に解いた場合は、1週間に1年分こなすのがやっとです。つまり、思ったほどは、たくさんこなせません。
(2) 2学期以降、毎週解けるとは限らない
塾によっては、9月以降に志望校別講座がスタートして、日曜も長時間拘束されるようになります。
さらにテストの回数も増えて、それらの復習も加わりますから(← これも「取捨選択」が必要ですが)、一学期よりも自由に使える時間が少なくなります。
すなわち、たまに過去問が解けない週が出てくる場合もあるわけです。
そのため、過去問についても、塾の「指示待ち」をせず、早めに開始してもいいでしょう。
実際にいつから始める?
個人的な考えとしては、カリキュラムが無い国語であれば、夏休みから少しずつ解いていってもいいと思います。
一方で他3科目は、基本的な解法や知識が身につかなければ、過去問も解けないので、夏明け開始がオーソドックスです。
しかし、社会は「基礎はあるが、知識の活用ができていない」という子に対しては、やはり夏から少しずつやらせる場合もあります。
ただし、これは、あくまで考え方の一つですので、各ご家庭でカスタマイズすることが大切です。
先ほど、宿題の取捨選択は、塾に相談すべきだと書きましたが、「過去問を早く始めたいのですが・・・」という相談は、塾からは歓迎されない可能性があります。
なぜなら、夏休みといった早い段階で解いたとき、点数が悪くて、親御様がむやみに焦るような事態を避けたいからです。
「必ず、過去問は第三志望校から解くように」と指示して、守れなかった生徒を叱る塾もありますが、それに関しても、「本来は、人によりけりですよね」としか言いようがありません。
中学受験の夏休み、塾との「まずい付き合い方」とは?
中学受験だけでなく、何にでも同じことがいえるのですが、成功者の「上手くいったパターン」を模倣するよりも、「やってはいけないパターン」を知り、それを回避するほうが大切だと考えます。
ということで、塾との向き合い方の「まずい例」を挙げましょう。
それは、以下の二つです。
・「塾を盲目的に信じてしまっているパターン」
・「塾に疑念はあるが、コミュニケーションを取れていないパターン」
(※ 「コミュニケーション」とは、自分の意見を正しく伝え、講師の話を正しく聞く行為を指します)
共通点として、どちらも主体的に塾を「使う」ことができておらず、追従しているだけになってしまっています。
また、いずれの場合も、「あの勉強方法は良い/悪い」「あの塾は良い/悪い」というように、単純な二元論で物事を捉えてしまっている傾向にあるのですが、もっと視野を広げて、柔軟にお考えいただくことが大切です。
塾からアドバイスされたことがあったとして、受け入れられる部分は素直に受け入れていただく。
一方で、「今の子どもの状況には合わないな」と思うことがあれば、その助言は受け入れなくても良い。
そして、講師と対話をしていて疑問に思った部分は、どんどん聞いてみましょう。
親御様が、「まともなコミュニケーション」をとってくださるのであれば、質問を嫌がるような先生はいません。
まとめ:夏休みの塾活用を成功に導くために
夏休みでがんばりたいと考えているご家庭は、まずは塾との関わり方について見直してみていただけると良いと考えます。
また、「やりたいと思っていたことは、7割やれればいい方」です。
夏期講習は、塾の拘束時間が長いですから、親御様が想像している以上に、個人的な弱点等を学習できる時間はないと思います。
そういう意味で、宿題の取捨選択は非常に大切ですし、場合によっては、集団授業をあえて休み(間引きし)、ご家庭で弱点補強をするのも、選択肢の一つになりますね。
あとは、他の子たちも相当がんばりますから、夏明けのテストで成績は足踏みになる可能性もあることは、想定しておいたほうがいいでしょう。
ぜひ偏差値ではなく、答案の内容(間違え方や、子どもの思考過程)を見てあげてください。
内容が以前よりも良くなっているのなら、あとは正しい努力の積み重ねがあれば、いつか成績も上がるはずです。応援しております。
このページ下部の【関連記事】では、「中学受験の塾の使い方」や「夏休み前の模試の受け止め方」、「悪いテスト結果をどう捉えるか」など、夏から秋にかけて重要なテーマを扱っています。
いずれも、この時期に欠かせない視点です。お時間のあるときに、ぜひお目通しください。
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