中学受験の国語における定番の「接続詞の空欄補充問題」。お子さまが安定して正答できないことで、お悩みの読者様もいると思います。そこで今回の記事では、接続詞問題のつまずきの原因と、考え方のポイントを解説します。
大人が思いもよらないところでつまずいている
接続詞問題だけではなく、他の国語の問題も同様なのですが、小学生は大人が思いもよらないようなところでつまずいていることが多いです。
まずはそういった大前提を理解していただき、どう読んだか&どう解いたのか、子どもと対話を重ねることが大切です。
以下にありがちなつまずきのパターンを挙げてみました。もしかしたら、お子様も以下のいずれか(あるいは複数)に当てはまっているかもしれないので、参考にしてみてください。
・空欄の前 or 後ろしか読んでいない子が多い
接続詞の問題を考える基本は、(1) 「前の文章」と「後ろの文章」双方を読み込む(※)、(2) 前後の関係を考える(例:「逆になっている」など)、(3) 答えの見当がついたら、当てはめて読み返しておかしくないかを確認、という3ステップになります。
(※ ただし、段落の頭にある接続詞は、前段落の要約を受けるため、「前の段落全体の要点」を考えた上で、「後ろの文章」を読むことが原則です)
ですが、接続詞問題を解くときの、子どもの目の動きをよくよく観察してみると、「前」あるいは「後ろ」しか見ていない、ということが結構あります。あるいは、結論部まで読んでいないこともあります。
結論部まで読んでいない例としては、「かつての日本人は自然環境と共存してきたといわれているが、現在はそうではない」という文章があったとして、「現在はそうではない」を読み飛ばしている、等。
「そんなことあるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、子どもにおいては実によくあります。
ですので、まずは「前と後ろの文を読むんだよ」という声かけが大事になります。ここで「見るんだよ」と言ってしまうと、子どもによっては本当に「眺める」ので、必ず「読む」という言葉を使うのがポイントです。
そのうえで、昔から伝わる教え方の基本「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。(山本五十六)」に従って、子どもと一緒に手順を進めていくことです。
次のように声をかけていきます。「まず、空欄の前を音読して」→「次に後ろを音読して」→「前後はどんな関係になってる?」・・・。そして、山本五十六大将のように、お子様ができたら、ぜひ誉めてあげてください!
・「当てはめて読んだらおかしくないから」は△
他にありがちなのが、「空欄前後の関係を考える」のではなく、「接続詞を当てはめて読んでみたら、合っている感じだったから入れた」ことで起こるエラー。
先述したように、「空欄前後の関係を考える」→「答えの見当がついたら、当てはめて読み返しておかしくないかを確認」というステップなら良いのですが、「当てはめて読む」だけで答えを出してしまうのは避けましょう。
小5の一学期くらいまではそれで通用しますが、そのうち、確実にそのやり方では正答できなくなります。
ちなみに、接続詞「なぜなら」に関しては、文末が「~から」で終わることがほとんどなので、当てはめておかしくないなら入れて構いません。(例:「なぜなら、妹が泣いていたからだ」)
・接続詞の用法を学んだ後は、例文を作ってみる
接続詞問題を考える際は、前後の文章の関係性を考えることが大事です。ということは、まず「接続詞の用法(使い方)」を理解することが肝要になります。
接続詞の用法については、普通は塾で必ず学習するのですが、座学を少しやったからといって、いきなり問題演習で使いこなせるようになるわけではありません。
授業を聞いて、【「だから」は順接の接続詞だ】と丸暗記していても、「じゃあ、順接ってなんやねん」と腹落ちできていなければ、そこまでです。
ですので、接続詞の用法の学習をした後、あるいはテスト後などに問題の復習をする際には、
大人 「【だから】を使って、例文を作ってごらん?」
子ども「雨が降った。だから、運動会は中止だ」
大人 「どっちかの文章が、【理由】になっていない?」
子ども「『雨が降った』が中止の理由になってる」
大人 「じゃあ、順接の接続詞を挟んで、【前に理由】が来るんだね」
このように例文を作らせて、理解を深める/座学の内容を思い起こさせると良いでしょう。
ちなみに接続詞における「順接」というカテゴリは、子どもにとって意味を想起しづらいので、自分は【前理由】という名称に変えて教えてしまいます。
・消去法の観点も必要
小6以降のテスト(サピックスなら小5後半以降)や、入試問題になると、接続詞問題もだいぶ難しくなります。難しさの原因は色々あるのですが、まずひとつには「消去法の観点」が必要になるということが挙げられます。
たとえばですが、
「計画は順調に進んでいる。【 空欄A 】一部手直しが必要かもしれない。」
という例文があったとします。このとき、空欄Aに入るのは、「ただし(補足)」でも「しかし(逆接)」でも良いわけです。
ですので、他の空欄部から先に考えて、余った選択肢を空欄Aに入れる、という消去法を使う必要があります。
これも小5までのやり方を引きずっていると、愚直に前から攻めていき(例:空欄 A→B→C→Dといった順で答えを出していく)、結果として答えが合わなくなってしまうので、「消去法を使う必要もあるよ」と教えてあげましょう。
・そもそも語彙力不足のこともある
そもそも論になりますが、文章の意味がわかっていなければ、用法や解き方が身についていたとしても、接続詞の問題は解けません。
ものは試しに、以下の文章を読んだ上で、【 空欄 】に当てはまる接続詞を考えてみてください。
高次元データの2群の判別分析を考える.標本共分散行列Sin ,の逆行列が存在しないため , Fisherの線形判別方式 2次判別方式は使えない .2群の共分散行列が等しいと仮定すれば,Dudoitetal,(2002)や Bickela・1d Levina(2004)による標本共分散行列の対角成分だけを使った判別方式 , Srivastavaand Kubokawa (2007)のリッジ型逆行列による判別方式,Yata and Aoshima (2012a)のノイズ掃き出し法を用いた共分散行列の逆行列推定による判別方式がある. 【 空欄 】, 2群の共分散行列が等しいと仮定する問題設定の単純化は , 高次元データが本来もつ2群に差異に関する情報に目を瞑ることになる.
出典:『日本統計学会誌 第43巻 第1号』「高次元データの統計方法論」青島 誠、矢田和善
「・・・いや、わかるかい!」となる方がほとんどなのではないでしょうか(笑)。ちなみに、正解は「逆接の接続詞(『しかし』等)」です。
上記の体験を通してわかるように、そもそも、文章で使われている語句・表現・テーマについて理解できていなければ、接続詞問題はお手上げなわけです。
言葉の力がない子には、大人にとっては普通に読める文章でも、上記のような頭に入ってこない文章に見えているはずです。
国語をできるようにするにあたり、語彙力強化は避けて通れませんから、がんばって言葉の力をつけましょう。以下の記事をぜひご参考にしていただければと思います。
(※ 関連記事:『中学受験 語彙力アップの方法とは? 問題集・テキストの使い方』)
・基本的には「取りやすい問題」と認識して良いが、できていないからといって怒らない
基本的には、接続詞の空欄補充問題は「取りやすい問題」として認識して良いと思います。
なぜなら、文章の大きなカタマリ(段落)や全体像を把握するという高度なことをする必要はなく、前後の文だけ理解できれば正答できるからです。
ただし、先の項に書いた通り、文章中の言葉が理解できず、文脈が把握できていなければ解けません。
また、「段落の頭の接続詞は、前の段落の要約を受ける」という原則がある以上、段落の頭の接続詞を穴埋めする問題においては、前の段落を読んで「つまり、何が言いたいのか?」と頭の中で抽象化する力がなければ、誤答してしまいます。(ちなみに、大人でもこれができない人は多いかと・・・)
また、「アかウ、どちらが入るのか微妙すぎる」というようなパターンであれば、当て勘で正解した子が正答率を上昇させます。
つまり、1/2の確率で〇になるから正答率が高めに出ているだけで、実は判断が難しい問題だった、ということもあるわけです。
たまに「正答率が高い問題を落とした=無条件でダメ」という認識でいらっしゃる親御様もいますが、上記のような現象もあるので、そう単純な話ではありません。子どもが惜しいところ(二択まで絞れた、など)まで思考できたのであれば、ぜひ、健闘をたたえてあげると上手くいくと思います。
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