夏休み明け、成績が上がらないことも想定する-偏差値10以上 上の学校を受けるには?

中学受験「あるある」な話題について

最近、以下の記事が読まれているようです。小6の中学受験生は、第2回サピックスオープン、合不合判定テスト、首都圏模試の結果が出たことで、志望校について、現実的な落としどころを考え始めた方が多いのはないでしょうか。

こちらは、11月に書いた記事ですので、今の段階(夏休み前)では、第一志望校を変える必要はないと思います。

これまでに、本人が「正しい」形での努力を積み重ねてきた場合、夏休み期間や二学期以降以降、学習を続けていければ、成績が上がる可能性は多々あるからです。

夏休みのがんばり方については、以下の記事に書きました。

ただし、現段階までの努力の総量が足りていないとか、あるいは、目指す偏差値のレベルが本人の持つ能力を大きく超えてしまっているといった場合、期待するような成績変化は望めないかもしれません。

夏休みは、他の子も非常にがんばりますし、偏差値は相対的なものですから、夏明けの成績が、夏前と同じ数値で踏みとどまれば、むしろ努力の成果としては十分ともいえます。

(※ ちなみに、ここまで話したことは算理社3科目の話だとお考え下さい。国語の場合、他科目のようなパターン認識が効かないので、良くも悪くも、学習量と成果は比例しません)

何が言いたいかというと、夏休み前の段階で、第一志望校を変える必要はありません。

しかし、親御様としては、「夏明けにも、成績が伴わなかった場合、第一志望校をどうするか?」、「2月1日以降の受験プランをどのように組み立てていくか?」について、今から想定はされたほうがいい、ということです。

そもそも、「成績が伴わない」とは?

「夏明けにも、成績が伴わなかった場合、第一志望校をどうするか?」、「2月1日以降の受験プランをどのように組み立てていくか?」を想定した方がいい理由は後述するとして、まずは、「志望校と、現状の成績が伴わない」の定義から始めます。

これは具体的には、合格判定が9月~11月まで、ずっと20%や再考圏だった場合です。

偏差値でいうと、子どもの4科目偏差値と、志望校の偏差値が10以上乖離している状態だとお考え下さい。

よく合格体験記に「志望校判定20%からの大逆転!」といった文章が載っていますね。

これは、あるテストのときに体調が悪かったとかで、たまたま1回だけ、20%取ったことを誇張して表現している(他の回では50%以上を取っている)なんてカラクリもあります。

あとは、志望する中学の受験者層の分布によっては、たとえば、模試で「7点」違うだけで、20% → 40%に跳ね上がる例もあります。

要するに、「実力は十分についているが、『数字のマジック』で、合否判定だけは悪い」場合もある。その状態で合格したとき、「志望校判定20%からの大逆転!」と言っていることもあるでしょう。

(※ ですので、裏を返せば、模試で良い結果が出ていないときも、「人数分布表」を見てみると、意外と悲観すべき状況ではない場合もありますので、冷静な分析をお願いします

ちなみに、親御様の中には、40~50%の判定でもパニックに陥る方がいらっしゃるのですが、実際のところ、ある学校の合格者において、「第一志望校は、ずっと80%でした」という人はほとんどいません。

80%の判定が取り続けられていたら、普通はもっと上位校を狙おうという発想になるからです。合格判定が40~50%なら、勉強の仕方次第で合格できます。

(※ ただし、第一志望校は不合格で、第二志望校に通うことになったが、その学校の80%偏差値はずっと取れていたという「玉突き」の合格者は、各校に一定数いることも述べておきます)

夏前の段階から、夏明けに成果が出ないことを想定すべき理由

親御様として、「夏明けにも成績が伴わなかった場合、第一志望校をどうするか?」「2月1日以降の受験プランをどのように組み立てていくか?」ということを、今から想定したほうがいい理由は2つあります。

理由1:受験を想定していなかった学校の見学に行くため

1つ目は、今から想定しておけば、受験を想定していなかった学校の見学にも行くことができるからです。

中学受験でよく聞く話として、「見学にも行ったことがない学校を、試験当日、急遽受験した」というものがあります。集団塾や個別指導塾に勤めていた時代は、自分が指導したご家庭でも、実際にこのようなことはありました。

急に受験することになった学校であれ、結果として、入学後、楽しい学校生活を過ごせたのであれば、それで良いと思います。

ですが、一度も見学したことない学校に入るのは、異性関係でたとえるならば、相手と全く話したことがないまま、交際を開始するようなもの。

たまたま相性が合う場合もあれば、そうではない場合もあり、大きなリスクを伴う行動といえます。

親御様の一時的な感情で、6年間通うことになるかもしれない学校を見学に行かず、「割を食う」のは、他ならぬ子どもです。

どうか親御様には、今から想定すべきことは想定していただきたいと願っております。

理由2:大人が現実を見ないと、子どもの成長が少なくなるため

2つ目の理由は、親御様の想定が甘いと(どこか楽観的だと)、子どもも現実が見られなくなり、受験を通しての成長が少なくなる、ということです。

結局のところ、受験は他者との競争であり、当日の試験において一点でも多く、ライバルと差が付けられるか否かで、合否が決まります。

このブログでは、「今、自分に必要なことをやっていけばいい」というようなことを度々言ってきましたが、自分に必要なことを知るには、必ず、他の受験生や志望校との「距離感」についても知らなければいけません。 

平たくいえば、「メタ認知」が大切だということですね。具体的には、以下のような考え方が挙げられます。

「模試で目標点が取れないということは、他の子と比べて、何が足りていないのだろうか?」

「がんばっているつもりで、実は、楽な勉強しかやってこなかった。特定の科目や、取り組みやすい問題ばかり勉強してきた」

「他の人は、基礎事項を授業内で7割理解して、発展的な問題の演習に時間をかけているようだ。
 一方、自分は家庭学習で、何度も周回して、ようやく基礎を身に着けている状態。差が付くのは当たり前だ」

ものすごく嫌なことにも向き合わなければいけません。中には、努力だけではどうしようもないこともあると思います。

ただ、受験生にそういうことを考えてもらう前に、まずは、日常的に伴走している大人(親御様だけでなく、個別指導塾や家庭教師の先生も含む)が、志望校や他の受験生と、本人との正確な距離感を理解している必要があるのです。

たとえば今(夏休み前)、自分の小6生徒が「今の偏差値より10高い学校に行きたい」と言っていたとします。それならば、私はやるべき課題を明示します。

しかし、あと6ヶ月半で、偏差値を10伸ばすには、その子の「勉強体力」(一定時間、集中できるか否かという勉強習慣)や、「才能」(特に、先天的・環境的なものに起因する「読解力」)を、大幅に超えた内容の課題をやりぬく必要があるので、ほとんどの子はこなしきれないことでしょう。

とはいえ、口だけで「今のままでは受からないよ」とか、「他の受験生はこういう勉強をしているんだよ」とか言ったところで、小学生には伝わらず、なんとなく嫌な思いにだけさせて終わってしまう。それでは不毛に思います。

小学生の場合、実際に「合格したいなら、これだけのことをやりぬく必要があるよ」と課題を提示し、本人にやれるところまでやらせてみることで、初めて、少しだけメタ認知ができるのです。

子どもがきちんと現実と向き合って、それでもなお、「合格判定20%でも受験したい」と「言える」のなら、第一志望校の受験はその子にとって、本当に大きな学びになるでしょう。中学校に入学してからの強力な武器が得られるはずです。

ただし、親御様が、このような形で子どもを導くのは難しいと思います。大抵、子どもと衝突するからです。

ですので、親御様としては、(1) 志望校や他の受験生と、本人との正確な距離感を理解しておく(考えてもよくわからないなら、塾の先生等に教示してもらう)(2) 成績が伸びないことを想定した場合の受験プランを考える、この2点が大切になるでしょう。

まとめ

ここまでの話をまとめましょう。

・  夏前の段階で、第一志望校を変える必要はない。だが、親御様が今後も成績が上がらないことを想定し、受験プランを考えておくことは大事。

・  今から想定しておくことで、「学校見学」にも余裕を持って行くことができる。

・ 「志望校と自分との距離感」を理解することで、受験生は成長できる。そのためには、周囲の大人も、現実を理解している必要がある。

読者様のお子さんの受験勉強が良いものとなるよう、心よりお祈りしております。


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