中学受験 失敗につながる親の特徴。読む過程・ 思考過程を追えているか?

「国語」の指導・学習法

最近、インターネット上の中学受験生の親御様の発言を見ていて、「親御様が熱心に勉強を教えているつもりで、逆に、子どもをスポイルしてしまっているな」と感じることがあります。

その親御様のもとにいる子どものことを考えると、見ていられないなと思うことも多く・・・、注意喚起の意味で、筆を執りました。今回はかなりキツイ文章になりますので、ご容赦ください。

「問題・単元」でなく、「子ども自身」に焦点をあてるべき

私が親御様たちに「まずさ」を感じる場面とは、「親御様が子どもの文章を読んでいる過程を追おうとしていない」「思考過程を追おうとしていない」=子どもそのものを見つめることができていないシーンです。

多くの親御様は、「今、できていないことを、できるようにすることが成績を上げる近道」だと考えていらっしゃると思います。確かに、私もそれはその通りだと考えますし、異論はありません。

ただ、私としては「なぜ、その問題を間違えたのか?」「本文や設問文のどこをどう読んだのか?」「何を考えながら答えを出したのか?」という、子ども自身の文章を読む過程や、思考過程に注目することが大事だと考えます。

一方、親御様の中には、「正答率60%の問題を間違えた」とか、「明治時代の流れがわかっていない」とか、結果として、テスト内で誤答した問題・単元ばかり、意識をフォーカスしている方もいます。

そのご認識ですと、「問題を間違えた → 対策しよう!→ その問題の解き方を説明する → 類似問題を演習する」となるのではないでしょうか。

本来は、子どもがその問題をどう考えたかを理解した後で、初めて有効な対策が考えられるはずなのですが、上記はその過程がスルーされており、私はそこに問題を感じています。

医師の診察と同じで、子どもの学習においても、まずは起きている現象について、何が原因でそうなっているのかを考えなければいけません。「腹痛」という現象だけ見て、場当たり的に「正露丸」を与えてどうするの? ということです。腹痛の原因が過敏性腸症候群なら、正露丸は効きづらいですし、あるいは、大手術が必要な腫瘍を抱えている可能性もあるわけです。

算理社であれば、「問題を間違えた → 解説と類似問題の演習」でも、一定ラインまでの成績は取れると思うのですが(ただし、一定ライン超えは不可能)、国語は、二度と同じ文章・問題は出ません。他科目でいう「思考系問題」を、毎回解かされているようなものです。だから、テストの復習をする際に、「本文の24行目に、問3の根拠が書いてあるでしょ」などと解説して、わざわざ、それをノートにまとめさせることは、何の意味をなしません。

真に「子どもは、一体何がわかっていないのか」を考えずに、場当たり的な対策ばかり繰り返し、しかもそこに親御様の強制力が働くと、ロボットのように子どもの思考力がにぶっていき、勉強が形式的なものになっていきます。

本当は意味がないと気づいていながらも、他にどうすればいいかわからなくて、表面的な学習をさせてしまっているのなら、救いはあります。ですが、本気でそれが有効打だと思っているのなら、ちょっと厳しいです。ここは、大人が自分の頭を使って思考しなければダメなところです。

親御様の教え方がまずくても、ダメ出ししてくれる人はいない

「なぜ、その問題を間違えたのか?」「本文や設問文のどこをどう読んだのか?」「何を考えながら答えを出したのか?」という過程に注目するのは、実はとても難しいことです。

特に、言葉が紡げないタイプの生徒(「どう考えたか」を、自分の言葉で上手く説明できない生徒)だと、私も見誤ったり、本人に対する解像度が低くなったりすることはあります。オンライン授業も、生徒の目線が紙の上のどこを動いているか、といった情報が少なくなるため、非常に難易度が高いです。そのため、私は原則として、オンライン授業は承っておりません

言い訳をするわけではありませんが、生徒と自分は違う人間である以上、「この子、何考えてるんだ・・・」と、たまにわからなくなってしまうこともあるのは、致し方がないと思っています。特に相手は小学生ですから、「なんとなく、国語の長文読むのが面倒だから、ちゃんと読まなかった」みたいな、気分的なもので点数がグンと下がることもありますし(苦笑)。しかしそれでも、つぶさに観察し、会話し、子どもの「わからない」「できなかった」の根本を追究し続けることは大事だと考えます。

ちなみに、読む過程や思考過程に着目できるか否かというのは、教える側自身のこれまでの勉強の仕方にも、大きく影響されるようです。「Aと来たら、A´と返す」「Bと来たら、B´と返す」というパターン暗記で乗り切ってきた方は、子どもにも、正答から逆算した解説をしている傾向があります。

仮に塾講師であれば、上司や先輩からダメ出しをされ、生徒から授業評価アンケートで酷評されれば、自分の指導について反省せざるを得ないでしょう。ですが、家庭というクローズドな空間においては、どれだけ親御様の教え方がまずくても、ダメ出ししてくれる人はいないので、いつまでも改善できない。そんなこともあるわけです。

「個別指導塾、家庭教師に全部任せる」という発想のこわさ

「じゃあ、親はできなくても仕方ないから、個別指導塾や家庭教師に全部任せましょ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「全部任せる」は非常に怖い発想である、ということを覚えておいてください。

言葉を扱えるようになること・文章を理解すること・思考すること、これらを子どもができるようになるには、いつも接している親御様の影響が非常に大きいのです。週に1回、せいぜい1時間半や2時間の関わりしかない講師に全てを任せてしまって、本当にいいのですか? 本当にそれで伸びると思いますか? 

科目指導のリードは講師に任せるにしても、家庭でフォローしなければならないことは何なのか? という役割分担を考えた方がいいです。同時に、なぜお子さまが伸びないのか? という分析も、講師任せにせず、ご自分で考えてみたほうがいいです。

ただし繰り返しますように、考える際の主軸に置くべきは、子どもの「文章を読む過程」「思考過程」です。「SNSにあった『偏差値60にするための勉強法』をやってみよう」とか「評判の良いあの塾に行ってみるべきだ」とかそういうことではありません。それだと、病の根本原因もわからないまま、闇雲に正露丸を与えるような事態になります。

考える順序は、「子どもの様子(原因)」→「子どもにあった解決方法」です。「子ども(原因)」への理解が非常に浅いまま、なんとなく取り組みやすそうな方法論に飛びつく方が多いように見えます。

考えたけれど、わからないという部分については、担当の先生に相談して、お互いの意見をすり合わせてみてください。

子どもが受けているテストを「制限時間の8割」で解いてみる

では、「『読む過程』や『思考の過程』を理解するにはどうすればいいの?」という話ですが、まずは、教える側=親御様が「子どもの視点」を獲得することです。実際に子どもが受けているテストや、入試の過去問を、制限時間の8割の時間で、全問解いて、採点までしてみてください。

「ぜんぜん時間が足りない」「選択肢問題が紛らわしすぎる」「記述問題は、わが子のこの書き方でも、もっと点数をくれても良いのではないか?」などなど、子どもがテスト問題に対してどう感じているかが見えてくると思います。

お子さまに対して、「問題を読んでいない!」と怒る親御様は多いですよね。ですが、時間制限なしで、落ち着いた状態で読めば解ける問題でも、時間に追われながら解けば、設問文を読み落とすなんてことはザラにあります。特に、昨今の中学受験の問題は、長文化傾向が激しいです。普段からテストを解いて、子どもの思いを理解している人なら、「問題を読んでいない!」という怒りはわきません。自分だって、余裕で間違えることがあるからです(笑)。

ゲーム用語でいう「エアプ(やってもいないことを、やったように言う)」は、地道に問題を解いている人間からすると丸わかりですし、子どもから最も反感を食らいやすいところですので、ご注意ください。問題を解く時間などないという方は、せめてお子さまに対して、「がんばって、難しいことをやっているんだな」という、思いやりの心は持っていただきたいと願っております。

「わからない」が言えるような雰囲気づくり

テスト問題をいくつか解いて、子どもの視点がわかってきたならば、あとは、子どもが何を理解できていないのかを、対話を通してつぶさに聞き取っていくことです。ただし、ここで「尋問」になってしまうと、論外なのでお気を付けください。

また、そこまで恐ろしい雰囲気ではなくても、普段から、気軽に「わからない」が言えるような親子関係ではない場合、子どもが親に正直な感想を伝えない場合もあります。

親が一生懸命に問題を解説した後、「わかった?」と聞いてきて、「わからん」と素直に答えれば、「何でわからないの!?」と責められてしまう。だから、「わかった」とさえ言っておけば、親が「そうか。理解できたんだな」と、勝手に思い込んでくれるから「ラク」という発想で、子どもが思考停止しているパターンもあるでしょう。また、「わからない」という言葉は、ある意味では「あなたの教え方下手ですね」と婉曲的に伝えているようなものなので、優しい子であれば、親に気を使って言い出せない場合もあるはずです。

「わからない」が言えるような雰囲気の作り方については、『SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』という本に書いてありましたので、気になる方は読んでみてください。

【※ 関連記事:本の感想『SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』

そして、何よりも大切なのは、「思い込みを排して、子ども自身を見つめる」というマインドセットです。お子様に「こうあってほしい」という理想を持つのは、親御様として至極当然のことです。しかし、その理想像に子どもの現在の状態を強引にはめこんで、「こうに違いない」と思い込むのではなく、ありのままを見てあげてください。

それには、「他人は自分の思い通りに動かせない。たとえ、それがわが子であっても」という真実を、ご理解いただく必要もあると思っています。


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