元塾講師から見た、中学受験リベンジの実態(某有名アスリートのご子息の高校受験を受けて)

中学受験「あるある」な話題について

3年前、某有名アスリートのご子息の中学受験密着企画(テレビ番組)がありました。2校の私立中に合格したものの、高校受験に挑戦したいとのことで、公立中学に進学する結果に。

そして今年、高校受験があったのですが、3/8現在、まだ進学先が決まっていないようです。

彼のような受験パターンは、高校入試では全く一般的ではありません。東京都の私立高校の入試解禁日は2/10で、概ね2/10~13の間に受験が終了します。その後、2/21に都立高校の一斉入試があるという形です。

今の状況は、中学受験でいえば、「2月6日以降まで受験が続いてしまっているのと同じ」と説明するとわかりやすいでしょうか。

さて、なぜ中学受験のブログで、この話題を取り上げたかといいますと、それは、この生徒さんが「中学受験リベンジ組」の一側面を表しているからです。

中学受験リベンジの実態

「中学受験では希望の学校に入れなかったけど、高校受験でリベンジだ」
「中受より高受のほうが簡単らしいし、有利でしょ」

毎年2月の入試が終わると、こういった話をネットで見かけますが、「ちょっと待ってください」と忠告させていただきたいです。

大学受験で浪人したところで、必ずしも成績は上がらない、それどころか、上がる率は非常に少ないともいわれているのはよく知られているところですが、それは高校受験リベンジも同じです。

現在は中学受験の家庭教師を生業にしている私ですが、以前は大手集団塾に勤めていました。その塾には、高校受験部門もあったので、様々な例を見ています。が、中学受験リベンジ組で、早慶付属以上の偏差値の学校に合格する子は、中受では四谷偏差値50台半ば以上あった or そのレベルの学校に受かっていた子でした。(もちろん、私の観測範囲内という条件がつきますが)

仮に中受の最終偏差値が、4科目 30~40台だとして、高受で開成はもちろん早慶附属校に受かるかというと・・・。

率直に言いますね。高校でも超難関校に入るには、中2の開始段階くらいで相当な質と量の勉強が必要なので(中1ではまだゆるくやれるかな。それでもフツーの中1生よりはめちゃくちゃ勉強する必要がありますが)、勉強体力がついていないから、量をやりきれない。あるいは、本人の持つ思考力・読解力次第では、努力を重ねても本質が身についていかず、中3の入試までには間に合わない、という印象です。

当ブログの他記事でも書いていますが、思考力・読解力は鍛えることはできます。「伸びない」と言いたいのではなくて、あくまで「本人なりに伸びたとしても、高校受験というリミットにおいては、超難関校レベルには間に合わないのだ」ということを強調したいです)

この偏差値帯の子は、そもそも、受験勉強を苦行に感じている子が多いです。大人の目から見て、中学受験時の努力が微妙だとしても、本人なりにイヤなことも我慢して頑張ってきたのです。私なんかが見ると、そもそも、週に4日以上も、休まず塾に通い続けるだけでもスゴイと思います。

そうなると、中学に入った段階で既に疲れきってしまっている。気持ちもフレッシュな未受験組たちが頑張る中で、思うように努力できず、相対的な立ち位置が落ちていく子たちも見ています。

ここまで読んでお気づきの方も多いと思いますが、仮に中学受験で高い偏差値を取っていたとしても、勉強があまり好きではないなら、上記と同じスパイラルにはまります。

子どもの意志がそこにあるのか?

私が伝えたいのは、安易に「中学受験リベンジ」を決断するのではなく、お子さん自身を見てほしいし、お子さんが受験結果に対して、「本当はどう感じているのか/考えているのか」、話し合いをしていただきたいということです。

親御様は「中学受験で合格した学校は、偏差値が低いから」という理由で高校受験させているものの、生徒本人として「自分は受かった学校に、進学したかったのに」と話す子は、今まで結構いました。

その場合、子どもは「中受で合格した学校より、上に受からなければいけないんだ」と無言の圧力を感じるので、すごくしんどい気持ちになります。中受では低い偏差値の学校でも、高受になると一気に偏差値が跳ね上がることも多いので余計です。

こうなってしまうと、親御様は子に嫌われかねませんね。それでも、本当に高校受験をする方向でいくのであれば、そのメリット、デメリットを徹底的に調べて(「内申点」をきちんとおさえていくのは、本当に厳しいことでもあります)、どちらが自分のお子さんに向いているのか考えて、親御様の意見をお子様に伝え、話し合うべきだと思います。

ただ、こういったことは、小6の2月に受験結果が出た段階で、悠長にやっていられませんから、もっと早い段階でやっておかなければいけないことといえるでしょう。

(※ 関連記事はこちら→ 『中学受験の家庭教師が考える「高校受験のメリットとデメリット」』

中学受験が終わった段階でできることがある

某有名アスリートのご子息様の話題に戻します。

今さらの話にはなりますが、中受の段階で、関わった家庭教師の方が、ご家庭が納得するような結果が出ないことが見えた時点で(普通は指導開始前のヒアリングでわかるはず)、その理由を丁寧に伝え、「それでも受けますか?」と伺うべきでした。また、「納得がいかない結果だった場合、高校受験しますか?」と話を振り、どのくらいお子さんと先のことを話し合っているか親御様はどのくらい高校受験について知っているのか、を確認した上で、必要なことは説明すべきでした。それが、何より本人やご家庭のためになったと私は思います。

(家庭教師側の伝え方は気を付けるべきですし、じゃあ某港区の私立中学は受からないして、どこなら大丈夫そうなんだ、そこに向けてどのくらい努力すべきなんだ、というのは示してしかるべきですが)

中学受験が終了した後も大事です。絶対に、受験を通して本人なりの成長があったはずです。それを認めて誉めると同時に、大目標を達成するには親御様、本人共に何をすべきだったのかという振り返りも必要でした。

その上で、高校受験する可能性も含めて、この先どうするのかを話し合う。

そこが深められていたら、仮に高校受験していたとしても、親御様や本人がもう少し納得できる結果が出ていたのではないでしょうか。受験の仕方を見ていると、行き当たりばったりになってしまっています。単刀直入に言えば、「考えて」行動しているように見えないのです。本人は、決して素質自体は悪い子ではないようにも見えるので、非常にもったいないな、と感じています。

「終わったことの反省なんていらない」と感じる方もいるかもしれませんが、また新たに大きなこと(高受)に挑もうとするのに、自分たちがやったことから学ぼうとしないの? とは思ってしまいます。手厳しくてすみませんが、苦しむ子どもたちを実際に見てきているので、こういう言い方になってしまうのです。

ただ、本当に難しいところなんですよね。仮に自分みたいな家庭教師が、先に書いたような突っ込んだ関わりをしたところで、パパさんが怒ってしまって一発でクビになるのかもしれません(笑)。


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