「国語の文章は感覚的に読むものでなく、論理的に読むものだ」「成績を上げるには、論理的に読めばいい」という通説があります。では、「論理的に読む」とは、一体どういうことなのでしょうか?
・ 「論理的に読む」とは、法則的な繋がりを理解しながら読むことである。
・ 『ふくしま式』の福島隆史先生は、その法則的な繋がりを、「因果関係」「対比関係」「言い換え」の関係という三つの関係に分類している。
・ 論理的に読めば、「本文のどこに何が書かれていたか」を頭の中に記憶し、問題を効率的に解くことができる。
・ 方法論を知る前の大前提として、語彙や常識を身につけなければいけない。
前回の記事では、上記の内容を書きました。今回は、論理的に読むための方法論(テクニック)について解説します。
「因果関係」「対比関係」「言い換え」を探すための着眼点を知る
論理的に読むための方法論(テクニック)とは何か? といえば、要するに、大学受験の予備校やテキストで学ぶような、現代文の読解方法です。ご自身の受験の際に習った経験がある読者様は、この項目は読み流していただければと思います。
一方で、大学受験のときに、現代文の読み方・解き方を習ったことがない。フィーリングで解くものだと思っていた、という方は、評判の良い大学受験の参考書を1冊解いてみると、読み方・解き方が大体つかめると思います。『田村のやさしく語る現代文』、『出口のシステム現代文 ベーシック編』は、読解のポイントがわかりやすくておすすめです。
親御様が1~2冊解くとなると、相当なご負担になることは承知しております。しかし、現代文を論理的に読み解きするためのポイントは膨大にあるので、ここでは紹介しきれない、という事情をご理解いただけますと幸いです。
また、あれこれ書いてみたところで、田村秀行先生、出口 汪先生といった偉大なる先生方の指導法のキュレーションにしかならず、ともすると、剽窃まがいの記事になってしまうので、詳細な内容につきましては、読者様でご確認の上、知識を身に着けていただければと思います。
概要だけ紹介しましょう。福島隆史先生が言うところの「因果関係」「対比関係」「言い換え」を、長文の中で見つけ出すための着眼点を知り、文章全体の構造を理解しながら読んでいく、というのが田村先生や出口先生が提唱している方法論です。
たとえば、「対比」を探すときには、以下のキーワードに注目します。
・ 接続詞
(例:「しかし」「一方で」)
・ 語彙
(例:「日本←→欧米」「現在←→かつて」)
・ 文法表現
(例:「〇〇ではなく、△△」「私は行く」(←この書き方は、「誰か他に行かない人がいる」という対比を想定した文章となる))
・ 意味段落や文章内容
そして、重要なキーワードが出てきたら、「しるし」や「線」などマーキングしていく。そうすることで、「因果関係「対比」「言い換え」を視覚化し、内容が整理できる & 問題を解きやすくなる、というわけです。
読解テクニックを知れば成績UP! ではない
田村先生や出口先生が提唱した現代文の論理的な読み方が、一般的に広まったのは、2000年代からと聞いたことがあります。(←噂レベルで聞いただけですので、正しい歴史をご存じの方がいたら、ぜひご指摘いただきたいです)
筆者も2000年代に大学受験をしており、予備校の先生からこのような読み方を教わりました。あとは、高校のリーディング(英語)の先生が、論理的に読むためのポイントを教えてくれたのを記憶しています。
一方で、世代的・環境的に、国語の論理的な読み方を教わる機会がなかった親御様の場合、「国語にも、方法論(テクニック)がある」と知ると、非常にカルチャーショックを受けるようです。
すると、中には「わが子は塾で、読解のテクニックを教わっていないのではないか」「だから、方法論を身に着けさえすれば伸びるのだ」と考える方もいらっしゃるのですが、そもそも、お子様は10~12歳のちびっ子である、ということを思い出してください。前回の記事にも書きましたが、語彙や常識を身に着けないことには、せっかくの技術も生かせません。
算数でいえば、計算スピードや正確性が全くないのに、各単元の発展問題に挑んでいるようなものです。サッカーでいえば、3分間走ったら息がゼイゼイ上がるような状態なのに、無回転シュートとかクライフターンの練習をしているようなものです。建築でいえば、基礎工事をしないまま超高層ビルを建てるようなものです。
もちろん、「語彙と常識」と「技術」のセットで論理的な読み方が可能になりますから、技術を学ぶこと自体は大切なのです。ですが、大前提として、語彙や常識がなければどうにもならないということは、念頭においていただくことは大切ですね。(語彙の重要性について、詳しくは、この記事の前編をご覧ください)
そして、30代以下の国語講師であれば、自分が受験生のときに読解の技術を習っているはずですから、それを生徒にも教えていると思います。現に、私が2年前まで勤めていた個別指導塾は、学生や20代の講師が多かったのですが、授業を覗くと、多くの先生が読解テクニックを指導していました。もちろん年配の講師であっても、自己研鑽を怠っていない方であれば、若手と同様の知識はあるはずです。
何が言いたいかというと、「読解の技術を、塾で全く教わっていない」という状況は、あまり考えられないということです。
そもそものところ、教わった・教わっていないは大きな問題ではありません。小学生は、読解テクニックを教わっても定着しづらい、という事実を知っていただくことが最も肝要です。理由として、先に書いた語彙力の問題も挙げられますし、他にも原因があります。
教える側が、「子どもの視点」を身に着ける必要がある
読解テクニックが身につかない理由や、その解決策については、下の記事に詳しく書きました。
・ 小学生の場合、【演繹法】の指導は納得しづらい。【帰納法】で学ばせる必要がある。
(※ 演繹法→「『しかし』にしるしをつけましょう。なぜなら、対比だからです」のような方法論から入る指導。)
・ 理屈っぽい言葉では、頭に入っていかないことも多いため、フィーリング(「〇〇の術!」「ばばーーん!」「わー!」みたいな)も重視する必要がある。
簡単にまとめると、上記の内容となります。
要するに、教える側が「子どもの視点」を身につけないと、読解テクニックは定着させられない、という話です。 そして、集団授業という形態だと「帰納法」で学ばせづらく、どうしても「演繹法」の形を取らざるを得ないので、読解テクニックが子どもになかなか定着しない、という事情があります。自分も集団塾で講師をしていたときはそのことに限界を感じたので、個別指導に指導の場を移しました。
「こうしようね」というやり方や理屈を説くだけでなんとかなるなら、それこそ、小学生にも、田村秀行先生の参考書や、林修先生の映像授業といった一流のコンテンツを与えれば良いだけの話です。でも、それでは上手くいきそうもないのはおわかりいただけると思います。
かの有名な佐藤ママ(佐藤亮子氏)も、実は「子ども視点での指導」が長けていたのではないかな、と推測します。もともと教員をやっていらっしゃったので、様々なタイプの子どもと接してきたはずです。
佐藤ママの本に書いてあるノウハウは表層的な話にすぎず、実際には、何かを教える際の、ちょっとした質問のしかた、声かけのタイミング、言葉の使い方といった点が、お子さんに響いたのでしょう。ただ、佐藤ママ自身が言語化できていなかったり、編集者やライターの方に上記のような視点がないために、引き出せていなかったりして、ご著書には詳しく書かれていないように思います。
大人が思う「こうすればいいんでしょ」という自分のやり方を、ただ子どもに渡せばいいというわけではないのが、小学生を教える際の難しいところではありますね。どの科目もそうなのですが、特に国語にはその難しさがあります。困ったら、ぜひプロに相談してみてください。
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