こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山です。
小学生の国語においては、「正しい読み方を知ること」と「その読み方を実践すること」の間に、大きな隔たりがあります。
つまり、「読解の方法論を教えられた = 自力ですぐに使えるようになる」わけではないのです。
そのギャップの原因はどこにあるのか? そして、それをどう乗り越えていけばいいのか?
今回はそういった話を、「小学生の脳の特性」と「中学受験という特殊な環境」という二つの観点から掘り下げていきます。
読解テクニックが身につかないのは能力が低いから? → 違います
まず、「正しい文章の読み方」って何? という話ですが、要するに、サピックスAテキストの解法メソッド、予習シリーズの各回冒頭のコーナー、市販の読解ノウハウ本に書かれているようなHow toのことです。
たとえば、以下のような内容が挙げられます。
◆ 論説文では、「私は~と思う」「~が大切だ」「~すべきだ」といった強く主張している部分を意識しましょう。
◆ 物語文の心情には直接描写と間接描写があり、間接描写から気持ちの背景を考え、心情を正しく読み取りましょう。
・・・で、これらの読み方を何度も教えているのに、子どもは文章を読む中で、一向に使いこなす気配がない。
このことは、ご家庭で熱心に子どもに国語を指導されている保護者様であれば、必ず直面する問題だと思います。
また、集団塾の先生から同種の指摘をされた、という読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
正しいことを教えている(先生に指導されている)のにできない、という事実に対して、ご不安になるお気持ちもあるでしょう。
しかし、安心してください。ごく一部の子を除いて、小学生は多かれ少なかれ、皆そんなものなのです。
では、なぜ、一般的な小学生は「読解テクニック」が使いこなせないのでしょうか?
未成熟な小学生に、大人の方法論で教えるのは無茶
まず、「正しい方法論を教えれば、正しく読めるようになるはずだ」という意見は、あくまで大人のモノの見方です。
もっというと、大学受験の成功体験に起因している感覚であることが多いように思います。
大学受験生(高校生)であれば、予備校やら参考書やらで読み方のノウハウを学んだ後、それをすぐに使いこなせるようになる。
なぜなら、それまで生きてきた中での言語体験が豊富で、方法論を知った際の納得感が大きいからです。
12歳の小学生と比較したとき、18年間の人生における言語体験は、明らかに内容が高度であり、豊富な語彙が使われているはずです。
※ 「言語体験」・・・読書、授業を通して読んだ文章、周囲の人との会話など。
その積み重ねがあるので、大学受験生は、次のように考えられるわけです。
「《だから》は、前が理由で、後ろが結果か。確かにそうだな。あ、これをおさえて論説文を読んでいけば、設問で理由が聞かれたときに解きやすいかも? ⇒ 使ってみよう」
また、人間は成長し大人に近づくにつれて、抽象思考が得意になっていく、という事実も理由としてあげられます。
抽象的な事柄(=読解の方法論)だけを見て、それに対応する具体的なもの(=実際の文章の中で使われている形)に気づく能力が発達していくのです。
余談ですが、小学校から中学校に進学すると、「算数」が「数学」と名を変え、文字式や方程式などを習い始めるのも、子どもの成長段階を踏まえたカリキュラムであると考えられます。
このように、脳の発達具合を考えれば、ある意味で無茶をやらせているのが、中学受験国語です。
お子様が非常に難しいことに挑んでいる、ということをまずは認めてあげてください。
小学生に合った読解テクニックの使い方とは?
では、言語体験経験が少なく、抽象思考が乏しい子どもに、読解の方法論をどのように身につけさせていけばいいのでしょうか?
その解決策はお子さんの個性によって、多岐にわたるのですが、主に考えられることは3つあります。
1.いきなり方法論の指導から入る(演繹法)のではなく、具体的な事実の積み重ねの中で、徐々に方法論を納得させる「帰納法」的な形をとる。
2. 言葉や理屈に頼りすぎず、フィーリング的なものを重視した指導をする。
3.言語体験を積ませ、根本的な土台の改善を図る。(「語彙力」「常識力」をつける)
これらの詳細は、後編の記事に書きます。↓
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