中学受験 国語 読解テクニックが身につかない理由 (2)-解決策編

「国語」の指導・学習法

こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。

前回の記事では、「読解の方法論を教えているのに、なぜか子どもが使いこなせない」という問題について、その背景にある「言語体験の不足」や「小学生特有の思考特性」を分析しました。

今回は、その前提を踏まえたうえで、実際に私が指導内で行っている、読解テクニックを定着させるための工夫を、3つの観点から具体的にご紹介します。

(※ 前回記事:『中学受験 国語 読解テクニックが身につかない理由 (1)-原因分析編)

(1) 読解テクニックは、「問いかけ」の中で、帰納法的に教え込む

 いきなり方法論の指導から入る「演繹法」的なやり方は、言語体験に乏しく、抽象思考が苦手な小学生には通用しません。

ですので、国語力に不安を抱えている小学生に対して、以下のような、方法論を羅列する指導(大学受験的な指導)は避けるべきです。

「この問題は、〇〇の理由を聞いている。 23行目に『理由は二つある』って書かれているよ。『一つ〜、二つ〜』は読み落とさないようにしよう」

「今回の文章では出てこなかったけど、『なぜなら』『順接(だから/そのため/すると)』『~だからだ』の後には、理由が書いてある。次に出てきたら、意識してね」

では、どうするか? 私の場合、「問いかけ」を通して伝えていくことが多いです。

私「本文に書かれていたことの確認をするね。『森が荒れて竹林が拡大している』と書いてあるけど、その理由はなんて書いてあったの? 」

生徒「人が森に手を入れなくなったこと」

私「その通り。でも、本当に理由はその一個だけだった?」

生徒「・・・」

私「ここに『二つの原因がある』って書いてあるよね。じゃあ、理由は二つあるはずだよ。探してみよう」

生徒「30行目に、『二つ目は~』って書いてある」

私「そうだね。『二つの原因がある』って書かれていたら、『一つ目』と『二つ目』を探すことが大事だね。こういうのは『ナンバリング』って言って、論説文ではよく出てくるよ」

要は、演繹法にならないように、問いかけを繰り返し、会話形式にすることで、文章の中で読解のポイントに気づかせることがポイントです。

子どもとしては、具体例の中でポイントに気づくことで、ある程度「納得」の感情が生まれます

感情が動いたときに、教わったことは忘れづらくなるので、それも狙いです。

また、指導の際には、その子の文章の読み方や思考のクセを知り、問いかけの内容や、挟み込むタイミングを考える必要があります。

状況によりけりなのですが、すでに生徒が文章を読んだ後に解説するのではなく、読んでいる最中に、問いかけ指導を挟むこともあります。

何も考えず、ざーっと文章を読む習慣が根深くついてしまった子に、「正しい頭の動かし方」を学んでもらうには有効だからです。

適切な問いかけ指導を、繰り返し繰り返し続けると、無意識のうちに方法論が使えるようになっていきます。

自転車の乗り方を理屈で考えている人はおらず、練習していたら、何となく乗れるようになりますが、あの感じです。

(2) 言葉や理屈に頼りすぎず、感覚を通して指導する

言葉や理屈に頼りすぎず、フィーリングを重視して指導する。これも大事です。

たとえば、「筆者の意見」を掴ませたいときには、「俺、良いこと言ってるだろ?(ドヤァ」と、いかにも筆者のドヤ顔が浮かぶような部分をチェックしよう、と指導しています。

また、「心情の変化」を掴ませたいときは、大体はマイナス→プラスになるので、まずはマイナス部分に気づかせるために、「登場人物が、モヤモヤぶつぶつ言ってるところはどこ?」と聞くこともありますね。

「書き抜き問題」で答えになるのは、大抵カッコイイ言葉なので、文章を読んでるときにカッコイイ言葉に印をつけておけ! という指導もします。この言い方も男の子にはピンときやすいですね。

これらとは反対に、たとえば、「筆者の意見を掴ませる」方法を、言葉と理屈で指導すると以下のようになります。↓

「筆者の意見を掴むには、『私は~と考える』『~が大切だ』『~すべきだ』といった言葉をチェックすることが大事だよ」

こういった方法論を羅列する説明は、大人なら確かにそうだよねと思えても、小学生だと腑に落ちないことも多いです。

(3) 国語力のベースになる、語彙力や感性を鍛える

ただし、言語体験に乏しいタイプの子どもは、先述した、1や2のような指導をしても入っていきません。

そもそも語彙力がない、日本語の表現を知らない、一般常識的な知識を知らない、という生徒の場合、英単語の意味を知らずに、英語の長文を読んでいるのと同じ状態になってしまいます。

その状態で、仮に【『問いかけ』の中で帰納法的に落とし込む】指導をしたところで、方法論なんか生かしようがないわけです。

また、【感覚を通して指導する】といっても、「いかにも良いこと言ってやったぞ」とか「モヤモヤぶつぶつ言っている」とかに、ピンと来ない子もいます。

その場合、子どもの感性が乏しい、あるいは、 文章を読んだとき、人の表情といった、イメージを思い浮かべる力がないという原因が考えられます。

ですので、この場合、国語の読解問題に取り組む以前の、感性や、日本語の力(語彙力や常識力)を鍛える必要があります。

トレーニングのポイントは「読書」「家庭での対話」です。

長くなるので、詳細は別の記事として書きましたが、お子さんの状況によっては絶対に必要なことです。

【※ 関連記事:プロ家庭教師から見た 国語の成績が伸びづらいタイプとは?(また、その解決策)

一方で、
「読書しても国語の成績は上がらない」
「家庭での対話なんて国語力には関係ない。そこを変えたところで、難しい問題なんて解けるわけない」

とおっしゃる受験生の保護者様、塾の先生もいますが、その心理を考えてみると、以下が推測されます。

おそらく・・・

・ 読書や対話だけで、成績が上がるわけではないので、単にそのことを指摘している。

・ ご自身の指導してきた子どもが、元より言語能力や感性に長けていた。

(たとえば、祖父母と同居している子、あるいは、将来的にプロになることを目指して、習い事で多くの大人と接してきた子は、それだけで国語力に優れていることがあります。結局、それは良質な会話をしてきているからなのですが)

・ あまり考えず、なんとなくモノを言っている。なんなら、自分の大学受験のときの視点で、中学受験国語を語っている。

・ 講師としては、営業目的で「私の授業を受けてさえいれば、全て上手く行きますよ!」と言いたい。

・ それに対して、先が見えづらい家庭での取り組みを避けたい顧客が、同調している。

最後の3つは、超毒舌でしたねw

特に、受験終了組の親御様がネット上で指導論を語っているのを見かけた際に、未受験組の親御様は捉え方に気をつけていただきたいな、と感じることが多いです。

実際にお子様が素晴らしい超難関校に合格されている方の発言には、いかにもな説得力があるように思えます。

しかし、その方の教え子(お子様)のサンプルの数は、1人から、多くても3人程度でしかありません。 

つまり、先輩ママが、「国語の成績を上げるのに、読書はいらなかった」と言っていたとしても、たった1人の教え子が「元より日本語の力に長けていた」パターンもあるわけです。

読者様のお子様には当てはまるかはわからないので、どうかご注意ください。

まとめ:子どもの個性に合わせた国語指導が大事

どんな科目でもそうですが、子どもに身に着けてほしいことを、指導者が繰り返し言い続ける必要があるのは間違いありません。

しかし、子どもに合ったアプローチの仕方を考えず、ただ「〇〇に気を付けなさい」「△△の手順で考えなさい」と言い続けるだけだと、一方的な指示・命令になってしまいます。

子どもは「言われたって、上手くできないんだよ」と自分自身に対して惨めな気持ちになるし、場合によっては、「できない」という状況を理解してくれない親御様に負の感情を抱きます。

こうなると、正しいことを教えていても、結果として、成績は上がりません。

子どもの個性に合わせて、方法論を指導することが最も大事です。

特に国語という科目は、それが極めて細かいレベルで必要であると考えます。ご家庭での学習が難しければ、プロに相談してみてください。


家庭教師の生徒さんを募集しております。(指導科目は国語・社会)
詳しくは以下の「筆者プロフィール」のページをご覧くださいませ。

https://kaitai.blog/2023/04/26/profile_2023426/

筆者メールアドレス
oosugi.genpaku@gmail.com


【※ この記事の前編は以下です】