【読書】中学受験生におすすめの本(4)『バッタを倒しにアフリカへ』前野 ウルド 浩太郎

小学生におすすめの本(読書について)

中学受験生やその親御様に向けて、読書におすすめの本を紹介する企画、第4弾は、『バッタを倒しにアフリカへ』前野 ウルド 浩太郎 (著)です。

『バッタを倒しにアフリカへ』概要

どんな小学生におすすめか?
・ 昆虫が好きな子
・ 将来、研究者になりたい子
・ 個性的な生き方に興味がある子
・ 面白い話、ギャグが好きな子
・ いつも物語ばかり読んでいるが、たまには別ジャンルも読みたい子
(この本は、エッセイ(随筆文)にあたります)

本文の難しさ
光文社新書。384ページ。
内容としては、堅苦しくなく、一人の人間が自分のやりたいことをやり抜こうとする際の楽しさと苦難が、ギャグも交えながら描かれている。ただ、ページ数は結構あるので、本を読み慣れていない場合、読み進めるのをキツく感じる子もいるかも。

もし、新書版を読むのが難しく感じる場合は、同じ本の児童書版がおすすめ。単行本サイズで、小学3年生以上で習う漢字には全てルビがふってあり、難しい言葉には解説もついている。

本の概要(あらすじ)
蝗害(こうがい)、それは最大一億匹ものバッタが群生し、数百キロ以上の距離を飛翔して、木々や稲、畑の作物を根こそぎ食べてしまう災害だ。特にアフリカでは、食料不足の問題にまで発展しており、深刻視されている。

アフリカの北西、モーリタニア。国土のほとんどがサハラ砂漠であるこの国に、一人の日本人青年、前野 ウルド 浩太郎が降り立った。彼は、この地で蝗害を起こしている「サバクトビバッタ」の研究にやってきたのだ。サバクトビバッタの生態の詳細が解明されれば、蝗害問題が解決に向けて大きく進展する。元来のバッタ好きでもある前野は大志を抱いて、研究に挑まんとする。しかし、そこには大きな苦難が待ち受けていた・・・。

『バッタを倒しにアフリカへ』感想

私立中学の入試問題の出典にもなっている本です。私が知る限りで、芝中と品川女子学院で使われていました。他にも使っている学校をご存じの方は、ぜひ教えてください。

この本は、高学年の男子に紹介すると、やたらウケが良く、みんな面白がって読んでくれます。そのため、読者様にも紹介したくなり、自分で決めたルール(※)を早くも破ることになりました。(※ 前々回の記事で、「なるべく入試で使われていない本を紹介したい」とえらそーに書いたw)

前野氏は、ニコニコ超会議(ニコニコ動画が開催しているリアルでのイベント)にも登壇した経験があり、「バッタ問題」という、自分の取り組んでいる研究を面白おかしく見せる術に非常に長けている方です。

子どもの頃から大の昆虫好きで、「バッタに食べられたい」という謎の夢まで持っている前野氏。ポスドクである彼は、蝗害の解決につながる研究をし、正規のポストにつく、という大志を抱いて、モーリタニアにやってきます。

しかし、「バッタがあらわれた」という噂を聞きつけて、砂漠を延々と車で走り、現地に到着するとガセネタだったり、やっとバッタの群れに遭遇できたと思ったら、地雷の埋まっている方向に飛んでいってしまい、追うこともできず立ち尽くすままだったり。しかも、途中でポスドクとしての任期が切れて、無収入に陥るという大ピンチも訪れます。

話の大筋としては、「勇者が巨悪に立ち向かう」かのようなドラマ性があるのですが、ゲームやアニメと違って、ラスボス(バッタの大群)に出会えない・逃げられる・敵を追うための資金がなくなるという・・・。現実は厳しいものです。

ですが、大ピンチの中でも、「自分自身が有名になって、広報活動をして、『バッタ博士を必要とする空気』を日本で生み出せばいいのではないか」と次の手を打つ前野氏。この発想力と行動力には驚かされます。そして、本の終盤で、ついにラスボスのバッタの群れと正面から遭遇! 「がんばれ!!」とワクワク感が高まります。

また、優れた物語には良きキャラクターがつきものですが、この本にも個性的なキャラが登場します。

特に、筆者のドライバー兼通訳である、ティジャニは良い味を出しています。最初は、ティジャニのお金へのがめつさに、読み手としては面食らいました。ですが、だんだん前野氏とツーカーの仲になっていき、地雷があることを大声で知らせてくれたり、ラストのバッタの群れとの遭遇でも前野氏の考えていることを速攻で察して車を走らせてくれたりと、「頼れる相棒」になっていく様子が面白い。

前野氏がドクターになったとき、ティジャニは心から喜んでくれます。一方の前野氏もティジャニが結婚した際(第二夫人と別れてから、3日後に新しい相手を見つけて結婚したw)、式の費用になるようにお給料をまとめて支払うなど、お互いの強い絆が見られました。

モーリタニア文化の紹介、ハリネズミといった野生生物との邂逅、砂漠での冒険譚など、起伏にとんだエピソードも魅力的ですね。

「蝗害」「研究者として生きることの難しさ」という堅苦しい感じのテーマでも、ユーモアあふれる巧みな筆致によって、ひとつのエンターテインメントに仕上がっているのが、この本が小学生に支持される理由だと思います。

ただし、この本にはバッタのドアップや、虫の大群の写真が度々登場しますので、虫がどうしても苦手という子はご注意あれ。


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