中学受験 合不合判定テストが解ききれない。「国語のテストで時間が足りない」悩みの解決策とは?(2)

「国語」の指導・学習法

以前書いた『令和の中学受験国語は激ムズ。「テストで時間が足りない」悩みの解決策とは?』という記事へのアクセス数が増えています。

おそらく、4月7日の第1回 合不合判定テストの結果を受けて、お子様が「問題を全て解き切れなかった」ことにお悩みの方が多いのかもしれません。

そこで、上記の記事に書ききれなかったことを、補足記事として書きたいと思います。

前回の記事を簡単におさらい

以下が、前回の記事の概要です。

・ そもそも、昨今の中学受験の国語の文章は長すぎる。問題数も多い。(大人でもキツイことは実際に解いてみるとよくわかる)

・ 解決策としては、「音読」「文章の書き写し」「問題を早く解くために、解き方を確立させる」「いつかはスピードが上がるものとして待つ」「入試過去問演習でペース配分を掴む」が挙げられる。

・ 読書習慣をつけることが、処理スピードを上げるためには確実。

『令和の中学受験国語は激ムズ。「テストで時間が足りない」悩みの解決策とは?』より

新たに考えられる原因と対策

前回の記事には書いていない、テストで時間が足りない原因と対策を挙げていきます。

原因1:テスト中、時計を見ていない

「えっ? 何それ」と思われる方もいるかもしれませんが、テスト中に時計を見る」という発想がない小学生は結構います。偏差値が高いとか低いとかは関係なく、見ていない子は見ていないものです。

だから、制限時間 50分間のテストで、大問1の物語文に40分もかけて、大問2の論説文では残り10分しか使えなくなる。論説文は流し読みして、選択肢問題もロクに考えずに適当に埋めておしまい、ということになってしまうわけです。時間意識や戦略は、受験において最重要ともいえるファクターなので、そこを無視して点数が取れるはずもありません。

テスト後、お子さんに「大問2に入った段階で、残り何分だった?」というように、質問してみましょう。「わからない」とか「時計見てない」とか言い出した場合は、まず時計を見る習慣をつけさせる必要があります。

ただし、親御様が問い詰めるような聞き方をしてしまうと、本当は時計を見ていないのに、子どもが「残り20分だった」などと嘘をついて、原因特定ができなくなってしまうので、なるべく優しくお願いします。(笑)

時計を見ていない場合の対策については、以下の通りです。

1.テストの時間配分を子どもに考えさせる

まずは、「大問1 物語文は約23分」「大問2 論説文は約22分」「大問3~4 漢字と言語知識は約5分」というように、大まかな時間配分を考えさせましょう。

できれば、長文を読む時間も決めさせると良いです。「物語文の長文は、大体7分間で読む」「論説文は5分間で読む」等。しかし、長文を読む時間を決めるのは、子どもに精読力がついている場合のみです。精読力が弱い子に短い時間で長文を読ませようとすると、ただ文字を目で追うだけになってしまい、本末転倒ですので、ご注意ください。

2.テスト中に時計を見るように伝える

「大問を解き終わる度に時計を見る」「記述問題を書いたときに見る」「なんか、この問題解くのに時間かかってるなー・・・と思ったときに見る(←ただし、これは難易度高いです)」等と、大きなタイミングごとに時計を見るように決めごとを作ると良いでしょう。

また、模試に腕時計は必ず持っていくようにしてみてください。入試本番の予行演習にもなります。

実際にあった例をお話します。模試ではなく、入試当日に起きた事例です。ある生徒が長机(大学によくある数人で使うタイプの机)で試験を受けたのですが、隣の子が激しく机を揺らしながら消しゴムをかけるため、そのたびに机に置いていた腕時計が横に倒れてしまう。そのため腕につけたのですが、今度はセーターが袖口まで落ちてくるため、時計を見る度にセーターをまくり上げる動作をしなければなければならなくなってしまいました。

普段の模試から腕時計を持っていくようにすることで、「忘れ物しないように、前日に時計をカバンに入れる」という習慣がつきますし(←実際、入試当日に時計を忘れちゃった子もいました・・・)、実は「文字盤が見づらい」「机が揺れると倒れる」など、今、持っている時計の良くない点も見つかるかもしれません。

腕時計のおすすめは、下記リンク先の「チープカシオ」です。超有名なので、ご存じの方も多いと思います。文字盤が視認しやすく、机にバンドをペタンと広げて置くことできる(倒れない)ので使い勝手は良いです。

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原因2:テスト中、一つの問題で止まってしまっている

これは、「大問1の問5」とかでずーっと止まってしまって、全体的な時間が足りなくなるパターンです。

このパターンはさらに二つに分けられて、1.無意識に止まっている場合と、2.「書き抜き問題」に苦戦して、止まってしまっている場合(特に、四谷大塚系テスト)があります。

1.無意識に一つの問題で止まっている場合

完全に無意識にどこかの問題で止まっている子もいて(ある種の集中力切れ)、テスト結果が返却された後に、「時間足りた?」等と聞いてみても、明確な答えは返ってきません。

そういう場合、実際に新しく問題を解かせて、その様子を横で観察してみるすると、途中までは小問をどんどん解いていっているのに、ある小問で唐突にボーっとして7分くらい経過してしまう(※「考えている」わけではない)といったことがわかります。

この課題点の解決策ですが、大人の目の前で、たびたびリアルタイムに問題を解かせて、ボーっとしているタイミングで、「おいっ」「問5に7分もかけてたよー」などと教えて、意識が飛んでいるのに気づかせることです。そうすると、本人は「あ、何かボーっとしそう」「今、ボーっとしてるかも」と自覚できるようになって、徐々にセルフコントロールができるようになっていきます。

ただし、どちらかといえば特殊な事例かもしれません。発達に凹凸がある子が、このパターンに当てはまることが多いように思います。

2.「書き抜き問題」に苦戦して、止まってしまっている場合

特に、四谷大塚系のテストは、書き抜き問題の数が多いです。(今回の合不合判定テストでは、合計9問)ドツボにはまって時間が足りなくなる子は、かなりいることでしょう。

仮に、その問題が記述問題ならさっさと答えが書けるのに、書き抜きであるがゆえに、字数ピッタリのところが探せず、どんどん時間を食われてしまうこともあります。詳しくは以下の記事に書きました。

【※ 関連記事:『書き抜き問題は難しい? 四谷大塚テスト 国語の傾向と特徴を解説』

四谷大塚のテストほど、書き抜き問題が大量に出題する私立中学校は、実際にはほとんどありません。(一応、受験予定の学校の過去問はご確認くださいね)だから、大量にこなせるようにならなくても良いのです。書き抜き問題に取り組んで、「時間かかりそうだなー」と感じたら、スルーして、他の問題に時間をかけて確実に取ったほうがいいと考えます。

とはいえ、時間がかかっているのが、書き抜き問題ではない場合もあると思います。その場合は、先の事例と同じように、まずは大人の目の前で、テストを最初から最後まで通しで解かせてみて、その様子を確認し、どういった問題で止まっているのかをチェックすることですね。

ただし、多くの場合、次項で説明する事柄に繋がるのかもしれません。

原因3:テストの求める処理スピードに追い付いていない

ここまで色々書いてきましたが、時間が足りない原因は、テストが要求する処理スピードと、本人が持っている情報処理能力が合っていないために起こることが、圧倒的に多いように思います。

たとえば、テストの過去問を、「制限時間+10分で解かせてみたら、いつもより高得点が出ました」という場合、処理スピードが追い付いていない、ということです。

処理スピードを上げるためには、小5以下であれば、読書を含め、多読するのが最善の道です。様々な生徒を見てきますが、本を読んでいる子とそうでない子の文章の処理能力は、残酷なほどの違いがあります。

本当に読書好きな子は、小6になっても、必ず時間を見つけて本を読みます。(それこそトイレの中でもw)しかしながら、これまでに読書習慣がついていない子は、少ない余暇の時間において、つまらなくて面倒な読書をするよりも、他のことで息抜きしたいと思うので、小6から読書量を増やすことは現実的ではないでしょう。

とはいえ、文章を読むスピード・情報処理能力を急激に上げる方法はないので、あとの選択肢は2つです。1.文章を読みながら、問題を解いていく」「2.処理能力が必要なさそうな学校(入試問題)を選択する

1.文章を読みながら、問題を解いていく

「最後まで文章を読んで、一から問題を解く」のではなく、「2ページ目まで読んだら、そこまでで解ける問題を解く」というように、文章を読みながら問題を解くと、得点率はいくらか良くなります。

ただし、特に物語文においては、文章全体を理解していないと、歯が立たない問題ばかり出題されることもあり、その場合、この手段は使えません。(先月実施された、サピの小6の復習テストがまさにそれだった)

また、実際の入試問題でも、学校によってはこの方法が使えない場合があります。ですので、過去問を確認してみてください。

少なくとも、模試においてこの手段を取るのであれば、「物語文は全部読んでから、問題を解く。説明文は文章を読みながら、問題を解く」というのが無難です。

2.処理能力が必要なさそうな学校(入試問題)を選択する

そもそも合不合判定テストの国語は、四谷偏差値55以下の学校の入試問題より難しいと思います。問題数が多いですし、先にも挙げた書き抜き問題で、ペースが崩れやすいです。

偏差値55以下の学校を目指すのであれば、「合不合では国語の偏差値が不安定だったが、傾向の違う過去問では点数が取れる」が、十分起こりうるので諦めてはいけません。夏以降は、模試の結果より、過去問演習の結果を注視するほうが大切です。

なお、偏差値60以上でも、実は問題数が多い学校と少ない学校に別れます。

たとえば、2023年の入試問題でいうと、吉祥女子(偏差値63)は、小問が計23問出ています。一方、鷗友学園中(偏差値62)は、計6問しかありません。

ただし、鷗友学園は全て記述問題であるという特徴があります。書くことは得意だが、スピード感はない、というタイプの子であれば、勝機はあるかもしれません。(他科目の相性も大事ですが、国語だけ見ればとりあえず・・・)

男子校でいうならば、毎年、本郷中(偏差値60)は小問が計15問程度芝中(偏差値60)は、計8問程度です。芝中は鷗友同様に、全て記述問題という形になります。

また模試においては、物語文と論説文の二つが出るので、二個目の文章を新規に理解しなおさなければならない、というところで時間を食っている子もいるはず。その場合、長文を一題しか出題しない学校を選ぶという選択肢もあります。

たとえば、青山学院(男子58、女子64)は、4つの長文(「詩」を含む)が出題されますが、明大明治(男子60、女子63)は1つの長文しか出ません。

声の教育社の過去問本や、『四谷大塚過去問データベース』を利用していただいて、お子さんに合いそうな入試問題を探す手ことも一つの方法となるでしょう。

まとめ:小6なら「割り切る」ことも大事

まずは、合不合判定テストやサピックスオープンといった、小6の模試は「そもそも時間的にかなりキツいテストだ」と思ってください。大人でも点数が取れない人は多々いると思います。これは最初から最後まで通しで解いてみれば、一発でわかります。

そのうえで、「なぜ、わが子は時間が足りなくなったのか?」を見極めることが大切です。原因がわかれば、あとは淡々と対策していきましょう。

お子様が現在小6で、スピードの遅い原因が「処理能力」であれば、強引には成長させられないということをご認識いただくことも大切ですね。処理スピードを伸ばしたいという願いは、「来年の2月1日までに、身長をあと10cm伸ばしたい」と言っているのと同じですので。

前回記事や、この記事で書いた対策を取っていただきつつ、「時間が足りないのは、仕方がない」と割り切っていただく感覚も必要だと思います。他科目の勉強に力を入れて、国語の不安定さをカバーするのも手です。がんばってください。


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