中学受験生やその親御様に向けて、読書におすすめの本を紹介する企画、第6弾は、『きまぐれロボット』星 新一です。
『きまぐれロボット』概要
どんな小学生におすすめか?
・ 小学校低学年~中学年の子
・ 小学校高学年でも、読書経験が少ない子
・ 文章を読んでいて、集中力が続きづらい子
・ あっと驚くようなストーリーが好きな子
本文の難しさ
角川文庫:224ページ、角川つばさ文庫:168ページ
「角川つばさ文庫(子ども向け版)」については、全ての漢字にルビがふられている。短編集であり、それぞれの話が4ページほどで終わる。筆者であれば、1編あたりで1分もかからずに読めた。このレベルであれば、本が苦手な子も、苦痛なく読み進めることができるのではないだろうか。
本の概要(あらすじ)
なんでもできる優秀なロボットを、博士から購入したエヌ氏。ところがこのロボット、よく暴走する。クレームをつけたところ、博士の口から衝撃の事実が告げられるのだった。(『きまぐれロボット』)
エム博士のもとに、強盗が押し入る。犯人たちの狙いは、新しい発明品であった。軟禁され、発明品のありかを言わされそうになるが、博士は間一髪の危機を免れる。その理由とは・・・?(『試作品』)
九官鳥に、ダイヤモンドを強奪させる計画を立てて、見事に成功させた男。これでぜいたくな生活ができる、と喜んでいたのだが・・・。(『九官鳥作戦』)
生涯1000編を超える物語を執筆し、「ショートショートの神様」と呼ばれた星新一がおくる、全36編の短編集。
『きまぐれロボット』感想
私の星新一作品との出会いは、確か小3のとき。『おーい でてこーい』という作品を読んで、本当に衝撃を受けました。
(以下、ネタバレご注意ください)
『おーい でてこーい』のストーリーは次の通りです。
ある村に、謎の穴があるのが発見される。
村民が、「おーい、でてこーい」と呼びかけてみても、返事はない。小石を投げ入れてみても、底に落ちた音がしない。そこで、専門家に調査を依頼したが、穴がどこにつながっているのかは全くわからなかった。
その穴に、産廃業者が目をつけて買い取ることとなった。
何しろ、底なしの穴である。ゴミやら放射性廃棄物やら遺体やら、本来であれば廃棄するのが大変な物であっても、未処理で、際限なく捨てることができた。当然、産廃業者は巨額の富を得ることになったのだった。
時が経ち、建設現場の作業員が外で休憩している。
すると、空から、「おーい、でてこーい」という声が聞こえてきた。
作業員は「あれ、人の声? 気のせいかな?」とつぶやいた。そしてその後、小石が一つ落ちてきたのだが、それには気づかず、立ち去ったのだった・・・。
私が面白いと感じる文章の条件の一つに、「意外性」があります。
『おーい でてこーい』のオチは、意外性のかたまりなので、そりゃ面白いです。ただ、面白いだけではなくて、読んだ当時は、怖くて震え上がった記憶もありますが・・・w
筆者の一番好きな作品が、『おーい でてこーい』なので、熱く語りましたが、今回紹介する本(『きまぐれロボット』)には掲載されていません。(※『おーい でてこーい』は、『ボッコちゃん』に掲載)
では、なぜ『きまぐれロボット』を選んだかといえば、小さい子や読書経験がない子にも、楽しめそうな本を紹介したかったからです。
『おーい でてこーい』は、結構怖い話ですが、『きまぐれロボット』には重たい話や、難しい感じの話は載っておらず、もっとライトに、星新一の「意外性」を楽しむことができると思います。
たとえば、「役に立たないロボットが、実は、めちゃくちゃ役に立っていた(※)」という、当初のお話の流れとは正反対のオチが待ち受けています。
(※ ロボットになんでもやらせてしまうと、人間が運動不足になったり、ぼけたりするので、たまに、わざと暴走するように、博士がプログラミングしていた)
親が子どもに読み聞かせして、「この後のお話、どうなると思う?」なんてクイズを出すと、きっと盛り上がることでしょう。
あまり勉強じみたことを言うのもあれなのですが、想像力や論理的思考力を鍛えるための頭のトレーニングにもなります。よくわからん問題集をやるくらいなら、ショートショートを読んだほうがいいのでは? とは思っています(笑)。
また、この本に載っている話は、話の展開がある程度パターン化されています。中には例外もありますが、次のようなパターンが多いです。
「素晴らしい物品がある」→「『譲ってくれ』『いいですよ』(強奪する場合もある)」→「その物品に関する意外な事実が発覚!」→おしまい
子どもは同じことの繰り返しが好きですし、複雑な展開を整理しながら読めない子、読書慣れしていない子にとっては、かえって、読みやすくていいと思います。
ただし、高学年で、それなりに本を読んでいる子にとっては、物足りないかもしれません。その場合、星新一の別タイトル、たとえば、『ボッコちゃん』、『ご依頼の件』などがおすすめです。
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