以前、『二月の勝者』は保護者の苦労や努力が描けていない。現実の中学受験では、もっと「親の力」が必要とされるよね、という記事を書きました。
「塾には『全てお任せください』『親は何もしなくていい』と言われたんだけど・・・」
読んでいて、そんなクエスチョンが浮かんだ方もいるのではないでしょうか。
(※ 関連記事:『『二月の勝者』に欠けているリアリティ。中学受験で必要な「親の力」』)
中学受験は、「塾に全ておまかせ」ではダメ?
お通いの塾が「全てお任せください」「何もしなくていい」と言っている = 親が子どもの家庭学習を手伝う必要はないんじゃないか? とお考えになる方はいるでしょう。
しかし、その言葉は営業トークであると、実際に大手集団塾/個別指導塾に勤めていた経験から言えます。(発言した講師に営業している自覚は無くても、社内の決まりや不文律として「そう言わなければならない」ということになっている)
「こちらにお任せを」と言っておけば多くの保護者様はとりあえずは安心しますし、集団塾なら特別講座やら講習会やらを取ってもらうことにつながり、個別指導塾であれば授業のコマ数を増やすことにつながるのです。
さらに、絶対王者サピックスが、「家庭に何もかも丸投げ。成績上げるのは自己責任ですよ」という塾である以上、他塾としては別の方針を打ち出すしかなく、「全部お任せください!」と言わざるを得ない事情もあります。
仮に私が顧客なら、「全ておまかせを」と言われたところで、「全てって物理的に無理じゃない? そもそも、全てって具体的に何をしてくれるの?」と感じてしまうでしょう。
たとえば、自分が集団塾にいたときには、以下のようなケースがありました。
・ 「家庭学習が回らない」と親から相談があった。 → 講師が、その子の一週間の学習スケジュールを組んであげた。
・ 「成績が上がらない」と連絡が来た。 → 無償で補習をした。
これらはサピックスでは見られないような「手厚いフォロー」といえます。
一見、良い対応には見えますが・・・、学習スケジュールというのは、実際にスケジュールどおり取り組んでみたうえで、上手くいった部分と、いっていない部分を確認し、修正していくことが大事です。また、子どもが体調を崩したり、学校行事といったイレギュラーなことがあったりすれば、スケジュールは簡単に崩れます。
そういった、「上手くいったかどうか」のすり合わせや、イレギュラーがあった場合について、講師が対応できるのでしょうか。いつまでそういった微調整をやり続けるのでしょうか。
補習についても同様です。ピンポイントで苦手単元があって、それを補習で潰すのであれば効果てきめんだとも思います。
しかし、その子の語彙力がなさすぎるとか、思考手順をすっ飛ばして、適当に答えを出そうとする癖があるとか、そういった改善に時間がかかるようなことが成績低迷の原因であれば、30分や1時間、補習しても何も変わりません。こちらも「いつまでやり続けるのか問題」が発生します。
・・・って、これら全て、集団塾時代の自分がやっていたことですけどねw
好意的に捉えれば、責任感が強く、生徒の問題を全て自分で何とかしようとしていたのですが、短い時間では何ともしがたい、すなわち、ご家庭主体あるいは、個別指導のプロ主体でなければ、本質的には改善できない事柄を請け負ってしまっていたのです。
今の受験生がみんな、がむしゃらに量をこなすような、おおざっぱな勉強の仕方をしてくれていればいいのですが、実際には、親御様やら家庭教師やらの手を借りて、緻密な学習を重ねている層が厚いという現実があります。
成績は相対評価ですから、そういった層が増えている以上、「塾に全てお任せ」では如何ともしがたい部分があるのは、おわかりいただけるのではないでしょうか。
親が学習に関わる範囲を、明確にすることが大事
話をまとめましょう。数年前まではここまで「親の力」は必要なかったように思います。ましてや、20年前なんて塾に預けっぱなしでよかったはずです。
中学受験の問題が非常に難化し、また受験生全体のレベルも上がっているため、マンツーマンで大人に頼らなくてはならない時間が増えてしまいました。個人的な感覚だけで言えば、歪だなと思います。しかし、それを言ったところでこの状況は変えられませんし、中学受験に挑むこと、私立中学校に通うこと自体には大きなメリットがあるのも事実です。
中学受験をこれから始める/今後も続ける保護者様は、「中学受験が難化している」「家庭で手厚く学習フォローしている層がいる」という現状を踏まえたうえで、ご自身がどこまでお子さんの学習に関わるのかを明確にされることをおすすめします。
「塾に全てお任せ」は不可能ですが、塾は上手に使うことで、保護者様の大きな味方になってくれます。そういった具体的な「塾の使い方」も今後は書いていきたいです。
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