【中学受験】小4までは順調だったのに。小5で国語の成績が下がる理由

「国語」の指導・学習法

こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。

「あれ、国語が急に下がってる・・・?」

小4では問題なかったのに、小5になってから急に読解ができなくなった。そんな変化に、心当たりはありませんか?

実はそれは、「よくあること」なのです。しかし、原因を知らずに放っておくと、取り返すのが難しくなってしまうこともあります。

そこで、今回の記事では、小4→小5で国語の成績が落ちやすい理由を解説していきます。

(1) 語彙と常識が足りない

まず、小5から成績が下がる原因に、「語彙」「常識」の不足が挙げられます。

語彙について

論説文を例にあげると、塾では、小4~小5前半までは、論説文は「自然環境」「言語」といった具体的なテーマが出題されます。

しかし、小5後半からは、「哲学」といった抽象的な内容が出されるようになるのです。

「自然環境」の文章で使われる語彙が、「二酸化炭素」「地球温暖化」「環境破壊」「都市開発」だとすれば、「哲学」の語彙は、「存在価値」「本質」「相対」「自分探し」といったものになります。

後者の語彙のほうが、抽象的で理解しづらいのは、おわかりいただけるのではないでしょうか。

語彙を身につけるための具体的な対策は、以下の記事に書いたので、参考になさってください。

常識について

小5後半からは、「前提知識(常識)」が不足していると、読めない文章も増えていきます。

たとえば、「お葬式の参列者は、黒い服(喪服)を着る」とか、「亡くなった人は棺に入る」といった日常的な知識を知らない子もいます。

この場合、「お葬式」を題材とした「物語文」は、まともに読み取れなくなってしまいます。

「論説文」の場合、「キリスト教的な価値観を持つ『西洋人』」と「アニミズム的な価値観を持つ『日本人』」とで、自然の捉え方が違うといった知識が「常識」です。

これらを知ることで、「自然科学」に関する文章を理解することができます。

さて、前者の常識(お葬式について)と、後者の常識(宗教や文化について)、どちらが身につきづらいと思いますか?

意外に思われるかもしれませんが、答えは「前者」です。

後者の「ハイレベルな常識」は、難しく見えますが、市販の参考書など、所詮は机上で学べばいいだけのものです。(塾で教えてくれる場合もあります)

比べて、前者の「日常的な常識」は、家庭での会話、読書、実体験といった生活の中で知るものです。親御様が、意識的に伝えないと身につかない場合もある、ということは知っておいていただいたほうがいいでしょう。

塾テストの「無茶ぶり」に注意

塾のテストでは、「無茶ぶり」としか言えないテーマを出題する場合があり、そういった実情をご理解いただくのも大事です。

「無茶ぶり」とは、具体的にいえば、「大人の常識・感覚」の理解が求められる文章です。

たとえば、「離婚をして、子どもに会えなくなった父親の心情」などは、人生経験が浅い小学生には実感しづらいものです。

仮に、こうした心情を理解できなかったからといって、「学力」が足りていないかというと、全くもってそうではありません。

大切なのは、模試の偏差値だけ見るのではなく、親御様も文章内容を確認することです。

そのうえで、「果たして、わが子の精神年齢で、この文章は理解できるのか?」を、素直に考えてみることが大切です。

くわえて、塾のテストだけではなく、「受験予定校の過去問」の内容も確認していただきたいです。

塾のテストと同レベルの「大人の常識・感覚」が、実際の志望校で求められているかというと、そうではないことがほとんどのはずです。

すなわち、塾テストは平気で「無茶ぶり」してきます。覚えておきましょう。

(2) 「要旨」を読み取る意識がない(考えながら読んでいない)

二つ目の原因には、「読みながら、思考していない」ことが考えられます。

読解問題を正確に解くには、まずは、文章全体の要旨を頭に入れなければいけません。

それには、「筆者は、つまり、何が言いたいんだろう?」「なぜ、こんなことを言うのだろう?」と考えながら読まなければいけないのですが、その姿勢が甘い場合があるのです。

小4~小5前半までは、そこまで考えながら読まなくても、文章内容はなんとなく頭に入ります。

しかし、先述したように、小5後半からは、「哲学」のように、誰かが頭の中だけで考えた、抽象的なテーマが出題されるようになります。

そうなったとき、「つまり、何が言いたいのか?」を考えながら読まないと、文章の主旨は掴めなくなってしまいます。

小学生は、文章を読むときに、さらーーっと字面だけを追っていることが本当に多いです。

成績的には、国語が「得意寄り」な子でも、この「考えながら読む」という所作が甘い場合がある、というのを覚えておいてください。

また、小5前半までで出題される素材文は、構成がきっちりしている。(例:筆者の主張パートと具体例パートがくっきり分かれている / 筆者の言いたいことが繰り返される / 接続詞が多用される 等)

一方、小5後半くらいからは、文章の「構成がラフ」になります。

「構成がラフ」の例として、たとえば、純粋な「論説文」ではなくて、「説明的随筆文」が出題されるようになることが挙げられます。

代表的な随筆文である『徒然草』の冒頭の文章を思い出してみてほしいのですが、エッセイ(随筆)とは、誰かが「つれづれ」と書いているものです。

そのため、必ずしも明確な論理構造になっていない場合もあります。

筆者の主張と事実が分けられずに、一つの段落や、一つの文の中に、ごちゃごちゃに存在していて、注意深く追って行かないと、結局、筆者の主張がなんだったのか、よくわからなくなってしまいます。

繰り返しになりますが、読解で大切なのは、論説文であれば、「筆者は、つまり、何が言いたいんだろう?」「なぜ、こんなことを言うのだろう?」と考えながら読むこと。

物語文であれば、「登場人物は、どんな気持ちなんだろう?」「なぜ、そんな気持ちになったのだろう?」と考えながら読むことです。

家庭学習においては、読解問題の復習の際、親御様が子どもに上記を問いかけてあげることが大事です。

地道な思考こそが、読解力をつける王道となります。

(3) 「設問文」が読み取れていない

本文ではなく、「設問文(問題文)」が読み取れていない場合も、成績下降の原因になります。

小4までの読解問題は簡単なので、「設問文」を1回読むだけで問題は解けます。

しかし、小5以降は、「設問文」を2~3回は読む必要があるのですが、子どもはそれをしないので、設問内容を理解できず、誤答してしまいます。

どういうことか、もっと詳しく説明しましょう。

小5以降になると、国語の「設問(問題)」が難しくなります。

たとえば、選択肢問題。小4までは「正答の選択肢以外は、『明らかに違う』」つくりだったのに、小5以降は、「2択に絞ったが、その2択で非常に迷う」という紛らわしいつくりになります。

問題が難しくなると、あれこれ思考や作業を挟むうちに、「設問文が、聞いていることはなんだったか?」という記憶がぼんやりしてしまうのです。

そして、ぼんやりしたまま、選択肢を選んでしまい、誤答してしまうわけですね。

ですので、小5以降は、設問文を何度も読みなおし、「問題を正しく捉えられているかな? ズレていないかな?」と振り返る作業が必須になります

ただし、それには、次に書く「処理スピード」が必要になります。

(4) 処理スピードが足りていない

小5以降のテストは、「文章が長くなる」という特徴があります。(一部の塾では、小4段階で既に長い場合も)

中学受験生においては、「制限時間内に文章が読み切れない(あるいは、全ての問題に手がつけられない)」悩みを、ほとんどの子が抱えています。

実際に国語のテストや入試問題を解いてみると、すぐにわかりますが、大人でも制限時間に間に合わせるのに苦労するはずです。それほど、現代の読解問題は長文化しています。

簡単な文章なら素早く読めたとしても、難しい文章ですと、意味を咀嚼しながら読むことになります。

中学受験の国語の問題は、基本的には「大人が読む本」が出典になるため、その難しさゆえに、大きく時間が取られてしまうのが実情です。

また、小5からは、選択肢問題の文章が長くなる(1行しかなかったのが、2~3行にわたるようになる)ので、そこでも苦しむ子は多いです。

スピードアップのための具体的なヒントは、以下の記事に書きました。

ただし、基本的に、処理スピードを上げるには、「活字に触れる量を増やす」しかありません。

大人が素早く文章を読めるのは、何かコツを知っているからではなく、長年生きてきて、活字に触れた経験が豊富だからです。(だから、「読書」が大事!)

すなわち、12歳の子どもなのに、成人と同じ能力を求められているのが、現代の中学受験なわけです。

親御様世代の中学受験・高校受験は、そこまでの力は求められていませんでした。もっと子どもらしい努力の範囲でなんとかなるものだったはずです。

ご自分の世代とのレベル差を、ご理解いただくことも重要です。

日々、子どもががんばっているということを、親御様として、ぜひ讃えてあげていただきたいですね。


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