【読書】中学受験生におすすめの本(7)『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』篠谷 巧

小学生におすすめの本(読書について)

こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。

中学受験生やその親御様に向けて、読書におすすめの本を紹介する企画。

第7弾は、『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』篠谷 巧(著) です。

『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』概要

どんな小学生におすすめか?
・ 少年少女の「冒険物」が好きな子
・ ミステリーが好きな子
・ アニメや漫画といったサブカルチャーが好きな子

本文の難しさ
小学館 ガガガ文庫:307ページ
いわゆる「ライトノベル」。中学受験のテキストで読まされる小説のような固さはない。ふりがなも多めにふられており、逐一、登場人物が状況を整理してくれるので、スムーズに読み進めやすい。

小5~小6には最適。ただし、文庫本で文字も小さいので、今まで、全く読書してこなかった子には向かないと思います。

本の概要(あらすじ)
高3の夏休み。主人公の理久は、受験勉強が本格化する前の「思い出づくり」として、友人の宗太、紗季と共に、旧校舎へ忍び込んだ。

彼らは、五年前・中1のときに、旧校舎の物置に「呪いのお札」をしかけていた。軽い気持ちで「お札」を確認しに行くと、そこにはなんと、見覚えのない「宇宙服を着た白骨死体」が鎮座していたのだった・・・。

理久、宗太、紗季と、彼らのかつての仲間である華乃子は、白骨死体の謎を解くために調査に繰り出す。

少年少女のゆれ動く心情と、ひと夏の冒険を描いたジュブナイル小説。

『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』感想

この本は、「ライト文芸」といった体で、とにかく読みやすいです。小学生でも、それなりに読書経験がある子であればスムーズに読み進められるでしょう。

また、「ミステリー要素」「高校生のお兄さん・お姉さんが主人公」「アニメっぽいセリフ回し」など、小学生が好む要素が多く含まれています。

子どもたちだけで白骨死体を調査することで、次々に判明する新事実。謎が謎を呼ぶ展開。読者を飽きさせない工夫が詰まっています。

実は、主人公たちグループは、旧校舎に忍び込むまでは「ある事件」をきっかけに疎遠だったのですが、そういった登場人物の心情の機微も、物語に味わいを加えてくれます。

親御様世代に、この本の内容をわかりやすく説明するならば、『ぼくらシリーズ(ぼくらの七日間戦争 等)を、「現代っぽく」して、さらに「アニメっぽくした」感じです。

正直なところ、私から見て作品としての含蓄に富んでいるのは、圧倒的に『ぼくらシリーズ』です。

しかし、『ぼくらシリーズ』は端々に昭和の匂いがするため、今の小学生の中には受け入れがたい子もいると思います。

特に、読書慣れしていない子は、自分にとって「身近ではない」舞台設定には入り込めない傾向にあるので。

そういう意味で、『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』はおすすめです。

舞台は、コロナ禍明けの2023年夏。イラストも今風ですし、文体も洗練されています。

ラノベといえば、「萌えキャラ」が登場するイメージがありますが、この本はごく普通のキャラしか出てきません。変な引っかかりもなく、楽しく読めるはずです。

・・・と、ここまでは、小学生に向けた紹介文になりますが、以降は「私の率直な感想」を書きます。

結末部分のネタバレもありますので、ご注意ください。

【ネタバレ】話の展開はあまいが、小学生が読むにはほどよい

この小説は「小学生」にはおすすめできるのですが、大人の私の率直な感想を述べるなら、イマイチでした・・・。

個人的には、「少年少女」「夏」「白骨死体の謎」「気持ちのすれ違い」という設定は好きです。

しかし、ストーリーの展開が甘い。

「白骨死体の謎」については、主人公たちが調査した細かい要素が有機的につながり、真相が解明する・・・のではありません。

終盤にポッと出のキャラ「接知彩花」が登場して、謎の真相を一方的に解説してしまいます。

ラストのシーンは「山場」として作られたのだとは思うのですが、トラウマ持ちのポッと出キャラ「伊藤隼人」(彩花含め、ポッと出キャラが2人も出てくる)を、なぜか、主人公たちが救う展開になり、気持ちが全く入り込めず、盛り上がれませんでした。

主人公たちの「気持ちのすれ違い」も深堀りがなく、物足りなかったです。「それで終わりかい!」というくらい非常にあっさりしている。

けれども、こういってはなんですが、中学受験生は授業やテストで、「大人向けの文章」を読まされ続けているので、趣味で読むには、このくらい「ライト」でもいいように思います。

ここ数年でタブレットが一気に普及して、塾のテキスト以外では、漫画すら読まない子、日常で活字に一切触れない子も出てきてしまいました。

幼いときに自ら本を手に取り、楽しむ経験がないまま、やたらと小難しい文章を、「点数を取るために」「強制的に読まされる」ことをくりかえす。

学力向上を目指すのとは裏腹に、活字に対する抵抗感が刷り込まれてしまい、「知」が育たず、どこかで伸び悩むのではないかと不安になります。

だから、私も少し前までは、小学生の読書に理想を持っていた(「骨太な作品を読んでほしい」等)のですが、今は、楽しんで活字に触れてくれれば、それだけでいいと思っています。

『大人から見て良い本』を無理にすすめなくても、この本を楽しく読んだことをきっかけに、「元ネタのSF小説、『星を継ぐもの』も読んでみようかな」と考える子もいるかもしれません。

私自身、今まで「ライトノベル」は、ほとんど読んでこなかったのですが、最近の小学生が読むには、好ましい本なのではないかと気づきました。

また良さそうなラノベを見つけたら、このブログで紹介します。

他にも、小学生におすすめの本や、読書に関する話を、このページ下部の【関連記事】で展開しています。ぜひ、ご覧ください。


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