当ブログの新企画として、中学受験生やその親御様に向けて、読書におすすめの本を紹介する記事を書いていきたいと思います。
第一弾は、『東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない』ときど (著)です。
『東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない』概要
どんな小学生におすすめか?
・ ゲームが好きな子
・ さまざまな職業に興味がある子
・ 個性的な生き方に興味がある子
・ いつも物語ばかり読んでいるが、たまには別ジャンルも読みたい子
(この本は、エッセイ(随筆文)にあたります)
・ 麻布中学、東京大学にあこがれのある子
本文の難しさ
PHP新書。179ページ。
小5 四谷偏差値 55以上の子なら、難なく読める。学年・成績的にそこに届かなくても、内容に強い興味があれば読みすすめられるはず。作者自身も、子どもや色々な層が読むことを想定して書いているようで、本文中に難解な言葉は使われていない。
本の概要(あらすじ)
今でこそ、メジャーな職業となったプロゲーマー。その先駆者のひとりが「ときど(本名:谷口 一)」である。彼は、麻布学園から東大、東大大学院へと進学し、研究者としての道を歩み始めていたにも関わらず、2010年、当時は社会的に認知されていなかったプロゲーマーの道を選んだ。
ときどが、プロゲーマーという生き方を選択したのには背景がある。ゲームセンターでの仲間との出会い、海外のゲーム大会での経験、受験勉強、東大大学院で出会った恩師と、プロゲーマーの先輩・ウメハラの言葉・・・、子どもの頃~現在に至るまで、彼が人生から見出してきたロジック、そして、論理をも超える情熱とは?
『東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない』感想
とにかく、ときど氏のエピソードが面白い! ゲームセンターに通っているときには怖い先輩の優しさに触れて、上下関係の大切さを学んだり、ゲーム大会では、「強くて上手い自分」を誇示するために、他のプレイヤーの気持ちを踏みにじってしまって、最終的に痛い目にあったり。ゲームを通して、人として大切なことを学んだ経験が書かれています。
高校生のときには、海外の大きなゲーム大会に出場して大活躍。結局、勉強量が足りなくなってしまい、浪人もしています。そして、浪人したらしたで、予備校帰りに長時間ゲームセンターに入り浸るという、とんでもない生活。
しかし、親御さんや、麻布学園の先生・友人は、ときど氏がゲームにのめりこみまくっていることに対して何も言わなかったようです。(まあ、それでも東大に合格してしまう、ときど氏のバイタリティがあまりにも高すぎますし、だから、周囲が「あいつなら大丈夫かー」と達観していたんだとも思いますが)
単にエピソードが面白いだけではなく、ときど氏は体験から得た「学び」を言語化する力や、自己分析力が優れているため、非常に読みごたえがありますね。
そして、13年前という、プロゲーマーに対する社会的認知度が皆無の時代に、東大大学院での研究という道を捨ててまで、ゲームの道を選んだ人の覚悟と信念と情熱は、半端ではないことが伝わってきます。
フルタイム勤務の会社員のように、1日 8時間のゲーム練習をしていますし、eスポーツ界を盛り上げなければいけないので、ただ、ゲーム大会で勝ち進むことだけではなく、「魅せるプレイ」を日々研究しているそうです。
実は、ときど氏がプロゲーマーになったきっかけは「挫折」。大学院試験に失敗し、自分がそれまで所属してきた研究室から外され、別の分野の研究をせざるを得なくなってしまったのです。
挫折を機に、ときど氏はこれまでの人生を振り返り、「今までは自分の頭でしっかり物事を考えてこなかった」、「『考えないため』『悩まないため』の行動をしてきた」ことを反省します。
そして、日本初のプロゲーマーであるウメハラ氏(梅原大吾)に今後のことを相談しに行くのですが、その場面がすごく良かったので紹介しましょう。
新宿南口のスタバに腰を落ち着けると、ウメハラさんがこういった。
「俺が東大を出ていたら、こんな(プロゲーマーみたいな)生き方はしないよ」
「東大卒で就職して、そこでまたモチベーションの湧く仕事が見つかるかもしれない。それはやってみないとわからないから、『東大』を捨てる手はないと思うよ」格ゲー(格闘ゲーム)界の生きる伝説らしからぬ、まっとうな、大人の解答だった。
僕は正直、がっかりした。心のなかで思う。
「The Beast(野獣)」と呼ばれるウメハラさんでさえ、そう考えるのか。麻布や東大の同級生と同じじゃないか。わざわざ会ってもらう必要も、なかったかもしれない……。そして沈黙。だったら話は終わりだな。もう帰ろう。
「ありがとうございました」
といって立ち上がろうとした僕に、
「でもね」
とウメハラさんが続けた。一語一句は覚えていない。でも、メッセージは明確だった。「本当に好きなことなら、チャレンジしてみるのも悪くないと思うよ。1回しかない人生なんだから」
『東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない』ときど (PHP新書)
最後に:受験とゲームには共通点がある?
内容も面白いですし、麻布学園という、著名な私立中高一貫校の出身者が作者ということもあり、中学受験生にとっては、親近感を抱きながら読める良い本だと思います。
ちなみに、この本には、「受験とゲームの共通点」、「ゲームも真剣にやると力になる」という章があります。視点としては非常に面白いのですが、中学受験生の子どもをお持ちの親御様としては、「あまり見せたくない」と思うかもしれませんねw
一般的に、「ゲームは受験生にとって悪」と言われていますが、ときど氏の個人的な体験としてはまた違うようです。この点については、この記事の続編において、ゲーマーでもあり、中学受験講師でもある自分が考察してみたいと思います。
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