こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
「抜き出し問題(書き抜き問題)って、探せばいいだけだからカンタンでしょ?」
そう思っている方も多いかもしれません。しかし、実際に子どもがやってみると、意外と正解できないのがこの問題です。
筆者としては、選択肢問題、記述問題、抜き出し問題の3つの中で、抜き出し問題が最も厄介だと考えます。
なぜなら、抜き出し問題が正答できるか否かは、「読解力とは関係ない(本文や設問が理解できていたとしても、正答できない)」場合が多々あるからです。
この記事においては、「書き抜き問題の考え方」を解説する中で、「書き抜き問題の『罠』」についても詳しく説明します。
抜き出し問題の考え方
【問題】傍線部5「言葉によるコミュニケーションは完全なものではない」とありますが、なぜ、完全なものではないといえるのですか。
その理由を表す、「から」に続く10文字以上15文字以内の言葉を文章中から抜き出しなさい。
上記の設問文をもとに、抜き出し問題の「考え方」を説明します。
(1) 「問題が何を聞いているか」を読み取る。
→ 「なぜ、『言葉によるコミュニケーションは完全なものではない』といえるのか?」
(2) 記述問題のように、(1)の答えを考える。
→ 「言葉には、解釈の余地があるから」
(3) 捜索範囲を決める。(2)で考えた「答え」があった場所を思い出し、自分の考えに似たフレーズを指定字数で探す。
→ 「14行目~20行目の『筆者の意見パート』にあったなぁ。探そう」
(4) (3)の捜索範囲に答えが無ければ、他にありそうな場所を見る。
→ 「本文の最後あたりでも、同じ話をしていた気がする。探そう」
小4くらいまでなら、とりあえず傍線部の近くから、しらみつぶしに答えを探していくという方法もありますが、学年が進むと、それが通用しなくなります。
そのため、上記の考え方が大切です。
もし、(2)で「考える」、(3)で「思い出す」ことができない場合、そもそも、本文の趣旨の読み取りが甘いといえます。
その場合は、以下の【関連記事】を参考にしてください。
「抜き出し運」を引き寄せるコツ
さて、上記の流れを見るに、問題の答えが正確にわかっていたとしても、制限時間内に、指定字数で探し出せなければ、正答することができないことがおわかりいただけると思います。
そのため、冒頭で「抜き出し問題が解けるかは、読解力とは関係ない」と書きました。
テキパキと作業をする処理能力が必要な上、答えが傍線部より大分離れている箇所にあると、非常に見つけづらい。
運も絡んできてしまうので、『ウォーリーを探せ』みたいな問題だと思っています。
ただし、「抜き出し運」をいくらか引き寄せるコツはあります。
本文を読む段階で、「抜き出し問題の答えになりそうなフレーズ」に、予めしるしをつけておくのです。
具体的に言うならば、「妙にカッコいい言葉」や「比喩表現」は、抜き出しの答えになりやすいので、チェックしておくといいでしょう。
(※「妙にカッコいい言葉」・・・筆者の「ドヤ! いいこと言ってるやろ!」的な、自己主張の感情がにじみ出ているような言葉。要するに、「筆者の意見」であるため、問題で問われやすい)
「字数の数え間違い」を防ぐコツ
書き抜き問題でよくあるミスが、「字数の数え間違い」です。
特に、字数の多い抜き出し(40字以上など)でよく起こります。
「字数の数え間違い」を防ぐポイントは以下です。
1.「お尻(末尾)」を決める。
2.「お尻(末尾)」から、鉛筆で文字数を数えていき、10文字ごとに印をつける。
【問題】傍線部3とありますが、なぜそう言えるのですか。文章中から55文字で抜き出しなさい。
【本文】・・・この理論は未就学児には当てはまらず、小学校に上がった子どもには当てはまる。7歳以上の子どもは、心身の発達と共に、場の状況や文脈を理解して、総合的な判断のもとに、相手の言いたいことを理解できるようになるためである。
たとえば、上記のような問題があって、赤いマーカー部分が答えだとします。
問題では、「傍線部3の理由」が問われているので、
1.答えの「お尻(末尾)」は、「ため」と決める。
2.「ため」部分から前へと、55文字数えていく。(10文字ごとに印をつける)
このように、考えていきます。
「お尻(末尾)」を決めず、「7歳以上の子どもは・・・」から抜き出そうと数えはじめる。あるいは、印をつけずに目視だけで数えると、数え間違いが発生してしまうので注意しましょう。
上記の手順であれば、余計な時間を取られず、正しく書き抜けるはずです。
実際の「入試」では、抜き出し問題は減少傾向
さて、実際の中学入試の問題においては、抜き出し問題は減少傾向であることも知っておいてください。
大学入試センター試験が「共通テスト」に変わり、論述が重視されるようになったのを契機として、中学受験でも書き抜きの割合が減ったようです。
一番わかりやすいところでいうと、昔の早実(早稲田実業)は、鬼のように抜き出し問題だらけだったのですが、最近は選択肢や記述問題が中心になり、問題傾向が大きく変わりました。
このように、「入試というゴール」においては、減ってきているのですが、未だに四谷大塚のテストは抜き出し問題が多く、配点も高めです。
日能研も、テストの回によっては抜き出し問題が多い場合があります。
入試と塾テストの問題内容が乖離している理由は、おそらくですが、記述問題と比較した際、書き抜き問題は「〇×」だけつければいいので、採点にリソースを割かなくて済むからだと考えられます。
塾のテストの点数が低いと、親御様として焦ることと思います。
しかし、抜き出し問題が起因となっての失点であれば、全くもって、悲観する必要はないと考えます。
ここまで書いた通り、入試においては、「抜き出し問題を大量に解かされることは、まず無い」からです。
抜き出し問題は、時間との戦いになりやすいです。
テストにおいても、取り組んでみて、すぐに答えが出せなさそうであれば、選択肢問題や記述問題に時間かけたほうが得点率は上がるでしょう。
さて、「抜き出し問題くらいは取ってほしいのに・・・」と感じていた親御様も、ここまで読んで、「見えない難しさ」があることはおわかりいただけたと思います。
同様に「選択肢問題」「記述問題」も、得意になるためには、まず、「子どもが、何につまずいているか?」を理解することが大切です。
このページ下部の【関連記事】では、他の問題形式に関しても、「つまずき」と「考え方のコツ」を解説しています。ぜひ、ご覧ください。
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