わが子のテストが返却されるたびに、ため息をついてしまう、という読者様もいるでしょう。今回の記事では、悪いテストの受け止め方について書きます。
テストは、「課題を見つけるもの」として受け止める
まず、かなり基本的なことからお話をしますと、塾のテストは、現状の課題を見つけ、「次のテストに向けて、どんな勉強をしていくか?」を考えるためにある、と考えます。
かつて、私が個別指導塾に勤めていたとき、ある生徒が、四谷大塚のテストを受験しました。成績表や採点済の答案用紙は、塾ではなく、ご家庭に送られる仕組みだったのですが、親御様が「結果が悪かったから、お見せしたくない」と言って、持ってきてくださらないことがありました。
しかし、それはあまりにももったいなさすぎます。みなさん、受験に合格するという最終目標のために勉強をしているはず。すなわち、塾のテストというのはあくまで、志望校合格のための「手段」であり、それ自体は「目的」ではありません。ですので、どんな結果であろうと講師に見せて、分析してもらって、次のテストに向けて、どんな勉強をしていくか? を考えてもらうべきです。
個別指導塾や家庭教師の指導を受けていない場合は、本人自身、あるいは、ご家庭で、「次に向けて、何をがんばるか?」を考える必要があるでしょう。そのため、悪いテスト結果を子どもに見せていない、という方もたまにいらっしゃるのですが、必ず共有したほうがいいと考えます。
(そもそも、本人なりにがんばって取り組んだ結果を、「悪かったから」と親から言われて隠されれば、子どもは傷つきます・・・)
テスト結果が返ってきたら、「今回のテストで、自分で『よくできた(がんばった)』と思うところと、『次はここをがんばりたい』と思うところを教えて」と、聞いてあげるといいでしょう。ちなみに、親御様が答案分析して、既に課題点が判明している場合も、この質問はしたほうがいいと思います。「本人に考えさせる」ということが重要だからです。
ただし、国語の場合は、毎回新しい問題が出るがゆえに、テスト結果を見たところで、次に向けて何をがんばらせればいいかよくわからない、という方もいるかもしれません。その場合は、塾の先生に相談してみてください。
結果ではなく、過程をほめる・叱る
かの海軍大将・山本五十六も「ほめてやらねば、人は動かじ」と言っていましたが、中学受験においても「ほめることで、子どもは前向きになって、色々なことができるようになる」という言説はよく聞かれます。
私も同感である一方、ひとつ気を付けなければいけないと思うのは、「結果だけ」ほめるべきではないという点です。
子どもをほめる際は、結果だけではなく、「過程」に注目されると良いでしょう。たとえば、「今回は漢字練習をがんばったから、漢字の問題で点数が取れたね」というように、過程と、それに紐づいた結果をほめる。そうすると、子どもとしては、また次も「漢字練習がんばろう!」という気持ちになります。
一方、結果だけほめてしまうと、どうなるのか? まず、「漢字練習がんばろう!」といった行動意欲が促せなくなります。さらに言えば、受験までずっと良い偏差値・点数をキープできる子はいるはずはなく、皆どこかしら、何かでつまずきます。そうなったときに、結果ばかりほめられていた子は、挫折感が非常に強くなってしまうのです。
親御様が結果ばかりに注目していると、子どもが親に隠れて問題の答えを写すようになることもあります。なんなら、テストでもカンニングし始めます。そうなると、良い方向に修正するのはかなり難しいです。
逆に言えば、結果を誉める・叱るのは無しとして、「過程を叱る」のはアリだと思います。具体的な事例として、ある教え子が算数専門塾のテストで最下位の成績を取ってしまったとき、お父様が結果を見て、「今回は、かなりサボってたもんな」とだけ指摘しました。それに対して、本人も「確かに・・・」と思ったそうです。その後、その子は、算数塾でもトップレベルの成績を取れるまで実力をつけて、関西の最難関中に合格しました。
親御様の指摘が的確でなければいけませんし、本人にクリーンヒットするような言い方をする必要があるので、難しいとは思いますが、読者様の参考になるかもしれないと考えて、エピソードを紹介してみました。
あと、補足しておきますが、子ども本人が、自発的に(友人同士の競争などで)偏差値やら点数やらにこだわっていて、その上で、良い点数が取れたのなら、「おー、すごいじゃん! よくやったね!」と結果をほめるのは、全然アリだと思います。
感情の赴くままに、一喜一憂しない
「子どもの成績に、一喜一憂してはいけない」という一般論があります。個人的には、これは半分その通りで、半分は間違っていると考えています。
先ほどの項目にも書いた通り、「ずっと取りたかった点数がとれたんだね! やった!(^ω^)」と喜びを分かちあったり、逆に「算数サボってたもんなぁ・・・(๑′-﹏-๑)」と悲し気な顔をしたり・・・、そういう意味での一喜一憂はアリです。
要するに、ご自分の言葉が子どもに与える影響を考えたうえで、喜んだり・悲しんだりするのは問題ないと思います。けれども、ただ感情の赴くままに、一喜一憂されるのは、できる限り、避けたほうがよろしいでしょう。もちろん、それが難しいのはわかってはおりますが・・・。
そもそも、なぜ親が感情的になってはいけないかというと、子どもの自発的な感情を奪って、受験がどんどん「他人事」になっていってしまうからです。
親御様が、子どもという受験の主役より先んじて、「点数取りたい!」「クラス落ちしたくない!」と躍起になってしまうと、本人としては、「自分は親に言われたことは、しっかりとやっているのだ。点数が下がっても、親がその原因を探してくれる」と思考停止するようになります。
あるいは、右往左往している親の横で、子どもが感情を押し殺しているケースも見られます。(あるいは、子どもも悲しんでいるようには見えるが、親が成績を見て落ち込んでいるから、それが悲しいだけ。至らない自分自身に対する悔しさなどはない)
私は今年からは、ほぼこのブログ経由、あるいは、知人のご紹介で指導をしております。そのため、どのご家庭も意識が高く、上記のようなケースは一切見られません。が、以前に家庭教師センターを通して、たくさん案件を受けていたときは、実に「あるある」でした。
その一方で、非常に「わかっている」ご家庭にも出会ってきました。たとえば、生徒のテスト結果が出たときに、「私も何も言わないから、本人から話をし始めるまで、先生からも、テスト結果については何も言わないでほしい。自分で考えず、大人の顔色を見て発言するようになっては意味がないから」と親御様から言われて、良い意味でハッとしたことがあります。
ここまで徹底できればすごいですが、それまでの親子の関係性によってなせる業であり、他の方が安易に真似できないことだとは思います。(たとえば、ずーっとテスト結果に対して感情的だった親が、いきなり黙ってしまったら、子どもとしては「見捨てられたのかな」などと邪推し、不安になって逆効果)
がんばっている子どもに敬意を払う
最後に、テストが返却された際、がんばった子どもへの敬意は大事にしていただいたほうがいいということを、お伝えさせていただきます。
塾講師のキャリア一年目から、「偏差値〇〇(50とか60とか)は、取ってほしい」という言葉を、保護者様からよく聞いてきました。純粋なお気持ちから出た科白だとは重々承知ですが、あえて言わせていただくならば、私はこういった言葉に肯定的ではありません。少なくとも、お子様の前では口になさらないほうがいいと思っております。
なぜなら、親から子への「偏差値〇〇は、取ってほしい」という言葉は、言い換えれば、子が親に対して、「パパ(ママ)には、会社では、せめて『部長』くらいにはなってほしいな」と願望を漏らしているようなものだからです。
部長になれないのには、如何ともし難い事情・理由があるわけですし、こんな言い方をされて、気分が悪くならない人はおらず、モチベーションなど上がるはずもないと思います。だから、同様のことはお子様の目の前で言わないほうが良い、というのが私の考えです。
加えて、「自分が小学生のとき、この難しい問題を解いて、果たして理想とする偏差値が取れそうなのか?」とお考えいただき、お子様に対する思いやりのお気持ちを持っていただくことも大切になるでしょう。
また、別視点から考えると、そもそも、親御様が考える理想の偏差値よりも、子どもが伸びる可能性もあるわけです。しかし、本人の目の前で「偏差値〇〇はほしい」と言ってしまえば、親御様の言葉が「言霊」になってしまい、それ以上、伸びなくなってしまいます。たとえば、「親が『偏差値50はほしい(=50が目標)』と常々言っているということは、自分の実力はそれ以下に過ぎないのだ」と、子どもが思いこんでしまうということです。
もちろん、受験においては現実的な判断も必要ですから、模試の結果等をもとに、「このくらいの偏差値の学校が、志望校としては妥当だろう」など、客観的に見る分には全く構いません。
ですが、子どもへの伝え方には気を付けていただかないと、本人が傷ついてしまいます。小さい頃に親から言われたことは、大人になっても尾を引くことがあるので、注意されたほうがいいです。
厳しいことも書きましたが、読者様のお子様の受験勉強がより良いものになってほしいという思いで、この記事を記しました。これからもテストは続きますが、ぜひ、その経験を成長の糧としてください。
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