国語偏差値 30台~40台前半の子の成績を上げるには、親御様の「読み聞かせ」が鍵です。
この偏差値帯の子は、概ね「語彙力がない」という大きな課題点があります。塾の授業を受けることで、多少は語彙力がついてきているはずなのですが、中学受験のテストは、子どもの小さな成長を超えた基準を平然と要求してきます。
しかも、学年が上がるにつれて、どんどん求められる語彙のハードルが高くなる(大人向けの難解な本が、出典として使われるようになる)ので、なかなか成績は伸びないことになるわけです。
日常会話において、発話のスピードが遅い、質問に対しての返答が拙いといった傾向にある子は、言葉の成長があまり進んでいないため、中学受験の国語では苦労していることでしょう。そういった子には、やはり「読み聞かせ」が有効になるように思います。
(※ この記事でいう偏差値とは、四谷大塚での平均値:30台~40台前半を指します。また、読み聞かせは、小5以下の子におすすめします。小6はタイムリミットが近づいてきているので、入試に向けた実践的な学習に時間を割いたほうがいいと考えます)
小学生が語彙力をつける手段は、幼児と同じ
「読み聞かせ」のやり方の話をする前に、「語彙力をつけるにはどうすればいいのか?」という前提から考えてみましょう。
前提をよく理解されないまま、「インターネットに良いと書いてあったから」というだけで読み聞かせを開始しても続かないと思いますので、ここは少しお付き合いください。
まず、「語彙力をつけるにはどうすればいいのか?」を考えるにあたって、「お子様が、幼児期にどうやって言葉を身に着けたか?」を思い出していただきたいです。
幼児は言葉を【1.周囲の大人が話しかけてくれる内容】、【2.絵本の読み聞かせ】のいずれかで学んでいくことが多いのではないでしょうか。
10~12歳はまだ幼児の延長線上にあるので、同じ理屈が考えられます。小学生に対しても、語彙を身につけさせたいのであれば、大人が話しかけたり、本を読み聞かせたりと同じことをすればいいのです。
具体的な方法論を説明しましょう。【1.周囲の大人が話しかける】ことについて。幼児であれば、「大人が一方的に話しかける」ことで言葉を身につけます。
しかし、小学生は自我が大きく育ちつつある時期です。親が一方的に自分の言いたいことばかり言ったり、子どもの気持ちを勝手に代弁し続けたりすると、むしろ、どんどん思考できない・しゃべれない子になってしまうように思います。
ですので、「本人が話し終わるのを最後まで待つ」「本人の発言において、語彙力不足であやふやになっている部分は、親が言い換えてあげる(あるいは、「どういうことか」を聞く)」ことが大切です。詳しくは別記事に書きましたので、興味がある方はご覧ください。
読書習慣をつけるための「読み聞かせ」の極意
家庭内の会話習慣を変えるというのは、色々な意味で難しいとも思います。その場合、今回の記事の本題である【2.読み聞かせ】をおすすめしたいです。
「うちの子は、本を読まなくて・・・」とお悩みの方は、お子さんが既に小4・小5だったとしても、幼児と同様に、どんどん読み聞かせをしてみてください。
読書習慣がない子に、ただ本を渡しても読まないのは当然です。大人だって、いかにも読むのが面倒くさそうな分厚い本を、他人から「面白いよ! 読んでみてよ!」とただ渡されただけでは、まず読まないと思います。
ですが、本を渡してきた人が内容を紹介してくれれば、「ああ、読むの大変そうだけど、意外と理解できる内容なんだ」「面白そう」と感じて、場合によっては「自分でも読んでみようかな」と思うかもしれません。子どもへの読み聞かせもそれと同様です。
もし、「面白い」「面白そう」と思ってもらえないなら、子どもが気に入るまで、別の本を探して、何度でも何度でも渡せばいいだけだと思います。
また、読書が好きな子と、好きではない子を比べたとき、決定的な違いがあります。それは、読書が好きな子は、自分にとって身近でない世界にも自然に興味を持つが、読書が好きではない子は、興味が薄い、という点です。後者を本の世界に引っ張り込むには、大人が条件を整える必要があります。
読書しない子でも、たいてい、YouTubeやゲームは好きでしょう。それらが好まれる理由は、活字の本よりも、取っつきやすいメディアだからというのもありますが、他の要因として「そこで見た内容について、友達と一緒に語り合えるから」ということも挙げられると思います。
つまり、他者と会話することで、身近ではない世界のことを、自分の世界にまで落とし込み、没入できるようになるわけです。
だから、活字の本でも、『銭天堂』、『逃走中』なんかは、子どもたちに大人気。これらが流行することで、「銭天堂のあれってさー・・・」というように子どもの間で話題が挙がる。
それによって、本来は身近ではない世界が、自分たちのものになっている、ということですね。(文章がめちゃくちゃ易しいので手に取りやすい、という理由も大きいですが)
すなわち、親から子へと読み聞かせをすることで、お互いにその本について会話をすることにつながり、世界観の共有ができるのが非常に良い点だと思います。
実際に、私が小5のとき、小学校の担任の先生が、たくさん本の読み聞かせをしてくれたのですが、特に岡田淳さんの『二分間の冒険』は、先の展開の予想や、自分なら竜をどうやって倒すか? といった話題で、普段本を読まない子たちとも、盛り上がった記憶があります。
同様に、親から子へと読み聞かせをすることで、「あの小説の〇〇がね・・・」といった会話が弾むようになり、物語を自分事にしづらい子にとっては、本に興味を持つきっかけができるのではないでしょうか。
読み聞かせで、「コスパ主義」は上手くいかない
「今まで、読み聞かせはしてきたけれど、子どもは本を読むようにはならなかった」という方もいらっしゃると思います。
読み聞かせで何よりも重要なのは、先にも書いた通り、「子どもの琴線に引っかかるまで、何度でも何度でも与えなければならない」と覚悟の気持ちを持っていただくことです。親御様がどことなく「コスパ主義」になると、上手くいきづらいと思います。
この仕事をしていると、色々なお宅に行きますから、各家庭の書棚の様子を見ていますが、読書習慣がある子の家には、床が抜けそうになるくらいのすさまじい量の本があります。たいてい書斎に収まらず、リビングルームにまではみ出してきています。
そして、それらの本を子どもが全部読んでいるかというと、そうではなくて、【親が大量に本を与える → たくさんの本の中から、子どもは興味を持てるものを選ぶ。一方で、全く読んでいない本もいっぱいある】という状態になっています。
要するに、ここまで与えて初めて、子どもの琴線に触れるものが、ちらほら出てくるということです。(ちなみに、自分が子どもの頃は、親が買ってきた本は全て読んでいましたが、それは娯楽が少ない時代の話ですから、今の子と一緒にしてはいけないと思っています)
あとは、読み聞かせや読書を、親御様自身が楽しむことも大切です。そもそも、親御様が楽しくなければ、取り組み自体が長続きしません。
また、親が「面白さが全然わからないけれど、国語力をつけないといけないから・・・」という義務感のみで読み聞かせをしていれば、その気持ちが伝搬して、子どももつまらなく感じてしまいます。逆に、親御様が楽しく読んでいれば、子どもも楽しくなるでしょう。
なかなか実行は厳しいのかもしれませんが、現在小5以下で、国語偏差値30台~40台前半から大きく成績を伸ばしたいのであれば、「読み聞かせ」が最も有効で、確実な策だと思います。
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