中学受験生で、「漢字が苦手」という子は年々増えているように感じます。
親御様世代の場合、漢字=反復学習で何とかなる、というご認識の方も多いことでしょう。もちろん、練習量を多くこなす中で、漢字を覚えるコツを自分で習得できる子もいますが、苦手な子はそうもいきません。
親御様からすれば、「そんなことから、教えなきゃいけないの!?(驚)」ということに立ち戻って、子どもに漢字練習のアドバイスをしなければいけない場合もある、ということを、まずはご認識いただくといいと思います。
この記事では、漢字を苦手としている子が、実はどういうことに困っているか? また、それをどう解消してあげればいいか? という話題について語ります。
1.漢字の形そのものが覚えられない
漢字が苦手な子は、絵を描くときと、同じ発想で覚えようとしている
まず、漢字の形そのものが覚えられない子(すぐ忘れる子)について。こういった子は、「漢字をパーツごとに見る」という意識が身についていないことが多いです。
たとえば、「候」という漢字の形を新しく覚えるとしましょう。その際、漢字を覚えるのが得意な子は、以下のように考えています。
「『イ(にんべん)』に『棒が一本』、かたかなの『ユ』に、漢字の『矢』だ」
「『イーユ矢』で覚えよう!」
この考え方を、図解すると以下のようになります。
では逆に、漢字を覚えるのが苦手な子が「候」という漢字をどう捉えているかというと、「イーユ矢」のように、パーツごとに見るのではなく、全体的な印象をなんとなく見て、何度も形を真似して練習しています。要するに、絵を描くときと同じ発想になってしまっている。
そのため、小テスト等で、いざアウトプットしたときに、「部首が違う」「棒が一本足りない」といった、細部が微妙におかしい漢字を書いてしまうのです。
もう少し掘り下げて説明しましょう。読者のみなさんの中で、ポケモンの「ピカチュウ」の見た目を知らない方はいらっしゃらないはず。しかし、(お手本など何も見ずに)実際にピカチュウのイラストを描いてみると、どことなく変な絵ができあがると思います。
なんとなくピカチュウっぽくはあるものの、「ほっぺの赤丸が無い」「しっぽがギザギザじゃない」「耳の先の茶色い模様が無い」「目に光が無い」「なんか太ってる or 痩せてる」といった異形wが完成するのではないでしょうか。
これは、ピカチュウの全体像は、アニメやおもちゃ等で見てはいるが、パーツごとには着目していないがゆえ起こる現象であり、漢字が苦手な子は、これと全く同じ状態に陥っています。
漢字を「パーツ」で見る意識をつけさせると◎
漢字の形を覚えるのが苦手な子に対しては、新しい字を練習する際、親御様がパーツを一つ一つ指さして、「『イ』『ー』『ユ』『矢』だね」と、目線の動かし方の意識をつけてあげることが大事です。
また、漢字テストの直しの際も、単純に何度も書きなおすのではなく、パーツごとに着目させるようにしましょう。
たとえば、「操縦」と書くべきところを、「操従」としてしまったのであれば、「『ジュウ』に『糸へん』が必要だったね」と伝えてあげるのです。
余裕があれば、「なぜ、『従』ではなく、『縦』と書くべきなのか?」まで説明してあげるとベストだと思います。すぐに説明が思い浮かばないものについては、ぜひスマホを活用してみてください。
また、間違えた漢字を直す際は、自分が間違えてしまった部分(注視すべき部分)だけ、以下のように色分けさせるのも良いでしょう。
2.同訓異字語、同訓異字が苦手
同音異義語・同訓異字が苦手になる2つの理由
実際の入試における漢字問題では、「同音異義語」「同訓異字」が頻出です。漢字を形としてただ丸暗記しているのではなく、意味を理解し、きちんと言葉として扱えている子に来てほしい、という私立中学校の意識の表れだと考えます。
しかし、この同音異義語・同訓異字も苦手な子は多いですね。
「『オサめる』だから、『納める』だ!」と、ただ知っている漢字を、反射で答えてしまっているのです。大人からすれば、「おいおい、『治める』も『収める』も『修める』もあるんだから、例文読んで、いったん意味を考えなさいよ」と思ってはしまいますが・・・。
子どもが漢字問題を解く際に、文章を読まないのには理由があるのです。まず、日々の勉強の中で、【漢字=暗記物である】という意識が強くなりすぎた子どもは、「漢字であっても、問題文(例文)を読む」という発想を失ってしまいます。
これに関しては、小テストの範囲を、ひたすら反復して点数を取る(形の丸暗記になっていて、意味を理解していないため、漢字が「言葉としては」身についてはいない)という学習を続けていると、上記のようになりがちです。
また、塾の小テストの制限時間が短すぎて、文章を流ちょうに読んでいる時間が無いから、どんどん答えていかないと間に合わない。これを繰り返してきた場合も、同パターンに陥ります。
まずは、上記のような事情があるため、同音異義語・同訓異字を苦手とする子が多い、ということをお知りおきいただきたいです。
(ただし、問題を繰り返す学習を、全て否定しているわけではありません。タイミングによっては反復学習も非常に重要であるとは、私も認識しております)
同音異義語・同訓異字を得意にする対策
同訓異字・同音異義語の対策ですが、まずは「漢字テストといえど、きちんと例文を読む」ことを子どもに徹底させましょう。上位生であっても、この意識が無い(薄い)子は多いです。
塾の小テストの制限時間があまりにも短すぎる、という場合は、「仕方ないね」と本人に伝えて、割り切って、せめて家での学習は、例文をじっくり読むように声かけしていきましょう。例文を読むことを徹底させるだけで、自然に同音異義語・同訓異字ができるようになる子もいるはずです。
しかし、もし、例文を読ませるだけでは解決しない場合は、インプットの工夫をする必要があります。
(1) 同音異義語・同訓異字の例文を複数パターン読ませる。 → (2) 子どもに言葉の使い方の違いを考えさせて、説明させる学習を続けましょう。
【「オサめる」シリーズ】
・学業を修める。/ドイツ語を修める。
・税金を納める。/注文された品物を修める。
・国を治める。/紛争を治める。
・衣類をクローゼットに収める。/本棚に収める。
具体的には、上記のような例文を読ませた後、「『修める』はどういうときに使う言葉なんだろう?」、「『修める』の二つの例文の共通点は何?」などと質問し、子どもに説明させてください。
注意していただきたいのは、親御様が「『修める』は、学問を身に着けること。『納める』は……」などと、全て解説しないことです。なぜなら、一方的な解説だと子どもの頭が動かないため、数日たったら忘れている、ということになりがちだからです。
他にも、テキスト以外の例題を考えたうえで、子どもに質問して答えさせるのも良いでしょう。
例:「『医学をオサめる』は、どの『オサめる』を使うでしょうか?」
まとめ
漢字については、ご自分が特に苦労せず覚えられた親御様ほど、子どもの困っていることが何なのかわからず、「反復で解決しようとする→上手くいかない」というパターンに陥ってしまうことが多いように思います。
自分の指導経験上、結局のところ、漢字が定着するか否かは、学習量がものを言うのは確かです。
しかし、反復の学習をする前に、「ワンクッションの導入」(数問でいいので、親子で漢字をパーツごとに見ていく /同訓異字の例文の意味の違いを考えさせる)をすると、子どもがスムーズに学習に取り掛かれるようになります。また、定着するまでの周回回数も減り、忘れづらくなると思いますので、ぜひお試しください。
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