以前、以下の記事で、「国語の文章を読むには、『常識的知識(別の言い方をすると「スキーマ」、背景知識、教養)』が必要。大人と違って、人生経験・読書経験が少ない子どもは、それらがないがゆえに、読解が困難になっている場合も多い」と書きました。
常識的知識を身に着ける方法には、「読書」や「家庭での会話(世の中の色々なことについて、親御さんが面白く語ってあげる)」があります。それ以外にも、子どもがスキーマ不足で読解ができなかった場合、その文章を読むのに必要な背景知識を解説し、本人に覚えるようにしてもらうことも大切です。
そこで、小学生がつまづきやすい、且つ、テストや入試で頻出のテーマについて紹介しましょう。今回の記事では、特に男子が理解しづらい「女子の友情」について書いていきます。
男子にはわからない「女子の友情」とは?
男子が「さっぱりわからん・・・」と感じやすい、女子特有の友だちに対する心理、友だちづきあいの仕方、読解問題で頻出の内容は以下の通りです。
【女子同士の友情をテーマとした文章】
・ 特定の友人と仲良くなりたいがあまり、執着する。
・憧れの友人が他の子と仲良くしていると、嫉妬する
・ 内心、見下している子とも、表面上の友人関係を保ち、一緒に行動したり、遊んだりしている。
お母様であれば、自分の子ども時代を振り返った際に、多かれ少なかれ、上記を経験したことがある一方、お父様は「そういう女性心理はあるらしいが、自分は経験していないし、共感もできない」と感じられると思います。
そして、男子小学生は人生経験がない分、父親のように「そういう心理もあるらしい」という背景知識が身についていません。そのため、文章を読んだ際、「何なの? この発言と行動・・・。意味がわからん」となってしまうのです。
物語文の女子あるある1:友人と仲良くなりたいために、ウソをついてまで合わせる
実際の読解問題で出てきた文章例を挙げます。
まず、小6のサピックス 2024年度 3月復習テストの物語文 『クレイジー・フォー・ラビット(奥田亜希子)』です。
主人公の愛衣は、同じ学校の珠紀と「仲良くなりたい」と強く感じている。
『クレイジー・フォー・ラビット』奥田亜希子/朝日新聞出版
二人でショッピングセンターに遊びに行った際、珠紀から貸してもらったマンガの感想についての話題があがった。愛衣は、本当はそのマンガを読んでいなかったにも関わらず、珠紀の感想に合わせて相槌を打った。
後日、愛衣は「これからも一緒に遊びたいな」と珠紀に伝える。しかし、珠紀から「嘘を吐く子って、嫌いなんだ」と告げられてしまう。実は、珠紀は愛衣がマンガを読んでいないのではないかと疑っており、わざと存在しない漫画のシーンを作り上げ、嘘の感想を述べていたのだ。
珠紀は「大島さん(愛衣)は、私に合わせてばっかりだよね。別々の人間なのに、そんなの変だよ」と言うなり、愛衣をその場に残して立ち去ってしまった。
この物語文を読んだ男子としては、「本を借りたり、ショッピングセンターに一緒に遊びに行ったりしているのに、『仲良くなりたい』ってどういうこと?」、「なぜ、『この漫画、面白く感じられなくて読まなかったんだ』と正直に言わずに、相槌を打ってしまったの?」という疑問が浮かぶことでしょう。
女子の心理として、「特定の同性の友人に対して、仲良くなりたいと強く願う」、「ウソをついてまで、必死に合わせようとする」ことがある、という内容を、スキーマとして覚えておく必要がありますね。
当然ながら、登場人物の心理に共感する必要などは無く、「女子は、そう感じることも多いのだな」と客観的な知識として、理解できていればいいのです。自分の教え子のサピ生男子・若干名も、復習テストの登場人物に対して、ブーブー文句を言っていましたw が、問題は解けていました。
ちなみに、この物語文の問題に関する話もしておきます。(サピックス小6生じゃない読者様は、置いてきぼりですみません)今回の設問は、「本文全体」を読んだ上で、メインキャラクター(愛衣と珠紀)の人物像を整理しないと解けない仕組みでした。二人が真逆の考え方をしていることに気づいた上で、対比関係を捉える意識が大切になります。
「傍線部まできたら、問題を解く」という、場当たり的な読解方法を取っていた子は、点数がふるわなかったはずです。サピの国語テストは、本当に時間がキツキツなので、「対症療法」として、割り切って、その手段を取っているのなら、それで良いとも思います。
ですが、実際の入試問題では、本文全体を読まないと歯が立たない場合もあることを、改めてご注意ください。どのような問題が出ているか、志望校の過去問内容は早めにご確認いただいたほうが良いでしょう。
「登場人物同士の共通点・違いに着目して、本文全体を大きく捉える」ことの重要性については、以下の記事に書きました。
物語文の女子あるある2:友人が他の子と仲良くしていると、嫉妬 / 内心は見下している子とも一緒に遊ぶ
サピックスで、小5 秋口に学習するAテキストの読解演習 「親友になりたい」・『Two Trains~とぅーとれいんず~』(魚住直子)でも、女子特有の心情が登場しています。
主人公の夏美は、自分を含め、綾、かな子、梨沙子という四人組で行動を共にしている。
「親友になりたい」・『Two Trains~とぅーとれいんず~』魚住直子/学習研究社
夏美は、大人っぽくてかっこいい梨沙子に対して、「こんなにすてきだと思う友達は、初めてだ」「二人だけで仲良くなりたい」と感じていた。
一方で、見た目や行動が幼いかな子に対しては、「二人で遊ぶのはえんりょしたい」と思っている。
ある日、四人は山へピクニックに出かけた。「夏美と一緒のクラスになれてすごく良かったよ」と梨沙子から言われて、夏美は有頂天になるが、その後、梨沙子は綾と二人で、貸し借りした本の話をし始めたため、腹が立ってたまらなくなる。
夏美は怒りが収まらず、話しかけてきたかな子にすげない態度をとり、早足で追い越し、頂上まで歩いて行った。しかしその後、かな子はいつまで経っても、頂上まで上がってこなかった。公園事務所の人にも相談したが、大人たちが探し回ってもどこにもいない。
夏美は激しい自責の念にさいなまれるが、結局、かな子は見つかった。道に迷ってしまった、とのことだった。帰りのバスの中で、かな子は、今までに触れてきた夏美の優しさについて話す。それを聞いて、夏美ははずかしく思い、またうれしくて目が熱くなるのだった。
「特定の同性の友人と仲良くなりたいと強く願う」気持ちは、先ほどの復習テストの文章でも見受けられました。
同時に、今回の文章における「友人が他の子と仲良くしていると、嫉妬する」、「少しトロい・ダサい友人を見下している(だが、行動を共にしてはいる)」というスキーマも、物語文の女子キャラあるあるとして知っておくと良いでしょう。すっごくイヤーな感じですが・・・w
ちなみに、希学園の小5生が、この春休みに学習した『ベーシック』No.6の物語文、『となりのこども(岩瀬成子)』も、ここまでで紹介した話題がてんこ盛りの話でした。
女の子5人組がゲームをしている。主人公の由希は、グループ内の久美ちゃんが一歳年下であることを理由に、他の女子たちからフォローされ、ゲームのルールを無視してまで、優遇されていることが気に入らない様子である。
由希が「年下というだけで、久美ちゃんがルールを無視できるのはおかしい」と意見をぶつけたところ、グループ内の弥生が「ヘンよ、そんなの。由希ちゃんはヘン。だいたいさあ、そのメガネだってなんとなくおかしいよ」「スカートのボタンだってヘン」などと言ってきた。由希は(弥生ちゃんなんかに、バカにされたくなかった)と心中で思う。
物語の終盤、過去の話にさかのぼる。以前、由希と久美ちゃんは毎日一緒に遊んでいた。由希の「わたしとだけ仲良くするのよ」という発言に対して、久美は「わかったよ」と言った。しかし、久美はその後引っ越しをし、由希ではなく、美樹と一番仲良くなってしまった。実は、由希はそのことに対して嫉妬心を抱いていたのだった。
『となりのこども』岩瀬成子/理論社
まとめ
親御様においては、まずは子どもが読解問題ができていない場合、その文章を読むのに必要な「常識的知識(「スキーマ」、背景知識、教養)」が身についていない可能性がある、ということを念頭に置いていただくと良いでしょう。
また、実際に知識不足で読みこめていないな、と判断された場合は、そのテストやテキストを取っておいて、子どもが忘れた頃に「読み物」として、改めて読み返してみると、内容が身に付きやすくておすすめです。
このブログにおいては、今後、小学生が身についていないことが多い、他のスキーマについても記事として書きますので、ぜひ参考になさってください。
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