国語 サピックス偏差値55を目指す子が身につけたい「文章全体を大きく掴む力」

「国語」の指導・学習法

サピックス偏差値55以上の私立中学校を目指している子に身に着けてほしい力として、「文章全体を大きく掴む力」があります。

「文章全体を大きく掴む力」とは何か? また、その力の身につけ方を、『第3回 合格力判定サピックスオープン(2023年11月)』の物語文(はらだみずき『太陽と月 ジュニアユース編』)を元に解説していきます。

(※ テストの文章を全く読んでいない方にも、理解していただけるような記事にするために、あえて、登場人物の心情の機微や、記述で必要な要素において、簡略化した表現を取っている部分があります。ご了承ください)

物語文を大きく掴むための2つの軸とは?

まず、物語文を大きく掴む軸は、以下の2つがあります。

メインの登場人物同士の、【共通点・違い】

本文全体を通した、主人公の【心情の変化】 

※ 心情の変化は、<マイナスの気持ち→ 心情が変化するきっかけ → プラスの気持ち>となるパターンがテストや入試では頻出。

なぜ、上記のような捉え方が大事か? についてですが、理由は2点あります。

1.文章の構造を把握することができるので、「何がどこに書いてあったか」が頭に残りやすくなる。そのため、問題をスムーズに解くことができる。

2.【共通点・違い】【心情の変化】の読み取りが、そのまま問題として問われることがある。

1は、サピックスのテストに限らず、どんな入試問題でも生かすことができる考え方です。

2については、要するに、【共通点=言い換え】【変化・違い=対比】であるため、作問者がテストを通して、受験者の「論理的思考力」を計りたいという場合には、これらをそのまま設問として聞いてきます。(例:「〇〇と、△△の違いを答えなさい」)

しかし、実際の入試という観点で考えた際には、各学校によって、物語文の読解で測ろうとする力に違いがあるため、問題としては、直接問われないこともあります。

「論理的思考力」は、論説文の読解や、算数の問題でも測ることができるのです。学校によっては、物語文の問題を「子どもにとって、身近ではない立場の人物の心情を慮れるか?」といった意図から作問する場合もあり、その場合は、2が直接問われることはありません。

「共通点・違い」「心情の変化」を読み取る 

第3回 SOの物語文を使って、【共通点・違い】【心情の変化】を考えながら、文章全体を大きく掴んでいきましょう。

まず、「主人公」と、「月人」の【共通点】を考えてみます。

・ 「主人公」はサッカーチームにおいて、フォワードから、ミッドフィルダーにコンバートされた。

・ 「月人」も同様に、フォワードから、センターバック(ディフェンダー)にコンバートされた。

次に、二人の【違い】を考えてみます。

・  「主人公」は、コンバートに「不満」である。

・  「月人」は、コンバートされても「前向き」にプレーしている。

また、本文全体を通した主人公の【心情の変化】を掴みます。ド定番の<マイナスの気持ち→ 心情が変化するきっかけ → プラスの気持ち>という型に当てはめて考えてみましょう。

【最初の気持ち(マイナス)】 
主人公はコンバートに「不満」であり、チーム自体をやめようとしていた。
          ↓
【きっかけ】
自分と同じ境遇にある月人のプレーを見る。
          ↓
【最後の気持ち(プラス)】
これからは、「前向き」にサッカーに取り組むことを決意している。

ちなみに中学受験の物語文は、おおむね<マイナス→ プラス>のパターンに当てはまります。

ですが、文章によっては、<プラス→マイナス>になったり、<プラス→プラス(例:期待感→安心感)><マイナス→マイナス(例:わだかまり→不安感)>というように、同じカテゴリ内での心情変化が起こる場合もあるので注意です。

ここまでの考え方で、以下のような文章の大枠を掴むことができました。実際に、問題用紙の余白に簡単な図を描いてみると、頭の中が整理できますし、問題を解く際に役立つと思います。

問題を解くときの考え方 SOを例に実践

では、実際にこの読み取りを、問題にどう生かすか? について書きます。

問7:土のグラウンドでサッカーの試合をしている月人の姿を見ているうちに、「おれ」は自分自身のサッカーへの取り組み方について反省します。どのように取り組んでいることを反省したのですか。(書き抜き問題)

第3回 合格力判定サピックスオープン(2023年11月)

書き抜き問題を解く際、最初にしなければいけないのは、「本文のあの辺りに、設問で問われている内容が書いてあったな~」と思い出し、答えを探す範囲を絞ることです。そのためには、だいたい本文のどこに何が書いてあったかが、頭の中に記憶できていなければなりません。そうしないと、答えが無い場所や、文章全体を闇雲に探し回る羽目になります。

今回の場合、問7で聞いている「自分のサッカーについて反省している場面」を探す際には、全体を通しての【心情の変化】が掴めていれば、前半や中盤ではなく、後半部の心情変化が起こったシーンに答えがあるのではないか、と探す範囲を絞ることができます。

問9:『よっしゃ!』と思わずおれが叫ぶ」とありますが、「おれ」が叫んだのは、月人のどんな姿を見たからでしょうか。試合中の月人の様子も踏まえて説明しなさい。(記述問題)

第3回 合格力判定サピックスオープン(2023年11月)

この問題を解く際には、いったん「問題が聞いていることは何か?」を考えて、解釈することが必要です。「『よっしゃ!』とおれが叫んだ」のは、「うれしい」ということですよね。そのため、この問題は、「月人のどんな姿を見て、『おれ』はうれしくなったか?」が聞きたいのだ、とわかります。

そうすると、先の【共通点・違い】で読み取ったように、「自分のように、ポジションをコンバートされても、精一杯がんばっている月人」が「ゴールを決めた」ことが、うれしいということがわかります。

あとは、適切な表現を考えて、文章全体を組み立てていきましょう。

家庭学習における取り組み方

実際のテストでも、読書のようにただ漠然と読むのではなくて、【共通点・違い】【心情の変化】を考えながら読んでいくことが大事です。そして、問題用紙の余白に簡単な図を描く習慣をつけると、頭の中が整理できますし、問題を解く際にも役立つと思います。

サピの国語の授業が終わった後に、親御様が「この文章の登場人物の【共通点・違い】は何?」「全体を通した主人公の【心情の変化】を教えて」と聞いてあげることも、よい復習になります。

【心情の変化】を説明する際に、子どもが適切な「心情語」で言い表せないのであれば、4年生のBテキストに掲載されている『心情語一覧』を見せて、そこから選ばせるなど、工夫してみてください。


家庭教師の生徒さんを募集しております。(指導科目は国語・社会)
詳しくは以下の「筆者プロフィール」のページをご覧くださいませ。

https://kaitai.blog/2023/04/26/profile_2023426/

筆者メールアドレス
oosugi.genpaku@gmail.com


【関連記事】

コメント

タイトルとURLをコピーしました