このブログでは繰り返し述べていることなのですが、小学生は言葉の発達が途上にある段階です。そのため、その子の語彙力、感受性、思考力など、諸々を見極めた上で、国語指導に当たる必要があります。
大学受験の現代文は、18歳という成熟した大人が取り組むものです。言葉の力も大きく発達している。だから、「このテキストで、これらのワザを身に着けておけば大丈夫!」みたいな、多くの受験生にとっての鉄板が存在し得るのです。しかし、中学受験の国語は、「一人として同じ道はない」と考えています。
・・・といいつつ、実は一つだけ、私が偏差値問わず、また小4以降であれば年齢問わず、徹底させる考え方があります。それがタイトルの「設問の答えを、超簡単に一言で言わせる」ことです。
四谷大塚 5月組分けテスト(小6)の大問4「随筆文」(出典:森田真生『僕たちの「センスオブワンダー」』)を例に挙げて、解説します。
2023年 5月 組分けテスト(小6) 大問4「随筆文」
大問4-問3
四谷大塚 5月組分けテスト(小6)
傍線部「とん」とは何ですか。文章中の言葉を使って、十四字で書きなさい。
【「とん」までの文章の流れ】
森田真生『僕たちの「センスオブワンダー」』 筑摩書房
ドングリの話題
↓
未来をめがけて台地にふりまかれる生命の贈り物。落ち葉の上に、コケの上に、石の上に落ちる「かさ、とん、こつん」という音は、人類が生まれるずっと前から、この地球のあちこちで響き続けてきたのである。
「そっか、『生命の贈り物』ってドングリのことなんだ」
「音から考えると、『かさ』は落ち葉の上、『とん』はコケの上、『こつん』は石の上に落ちてるんだ!」
と気づいて、うれしくなって、勢いで「ドングリがコケの上に落ちた。」と書いた子もそれなりにいると思うのですが、大変残念ながら、×になります。
この記述答案の解きなおし、みなさんならどのようにさせますか?
自分であれば、「結局、『とん』って何なの? 超簡単に一言で言ってみて」と問いかけます。
すると、子どもは「音」と答えるはずなので、「何の音?」と聞きます。
次に子どもは、「ドングリがコケの上に落ちる音」と答えることでしょう。そこで、「わかってるじゃん! でも、答えの幹になる『音』が書けていないから、この記述は×になってしまったんだね~。じゃあ、書きなおそう」と言って、解きなおしをすすめます。そして書き終わったら、「設問は、まずは超簡単に一言で考えることが大事だよ」と改めてポイントを伝えます。
おそらくですが、読者様の中には「解きなおさせる際、『この記述の文末は、[音]にしなきゃいけないでしょ』という声かけをする」と考えた方もいるのではないかと思います。でも、「そもそも、どうすれば文末が[音]になるとわかるの?」という話ですね。
学習の本質を考えると、国語に限らず、全てのテストは「設問に対して答える」ことができれば正解なわけですから、まずは短くシンプルに答えを考える思考習慣をつけることが大事なのです。選択肢問題や書き抜き問題でも使える考え方なので、ぜひ実践してみてくださいね。
※ ちなみに、この問題の模範解答は、「ドングリがコケの上に落ちる音」です。
ここからは個人的な感想になりますが、記述問題なのに「14文字ぴったり」という制限を設ける意図(=この問題を通して、どんな力をはかりたいか?)が全くわからないんですよね・・・。しかも、14文字に満たなくても、内容さえ合っていれば部分点はもらえるようです。今後このような問題が出たとして、文字数ぴったりで文が書けない場合も、答えは書くようにしましょう。
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