『中学受験から撤退しました!』記事から、塾講師の説明責任を考える

中学受験「あるある」な話題について
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『中学受験から撤退しました!』

中学受験から撤退しました! | ママライフを、たのしく、かしこく。- mamaco with こんにちは、ツインズママです。以前このブログで中学受験の話も書きましたが、実は昨年秋で双子が中学受験から撤退しました。 www.tokyu-dept.co.jp

東急百貨店が運営する、ワーキングマザー向けWebメディア『mamaco with』で上記の記事を読みました。中学受験 家庭教師の立場から感想を書いてみます。

小6の秋口に「退塾勧告」を出された

筆者「ツインズママ」さんのお子様は双子。個人の先生が運営する塾に通っていたものの、文脈から判断するに、小6の秋口に中学受験を撤退したそうで、その経緯が書かれています。記事を要約すると、以下のような内容になります。

・ 初めに退塾したのは双子のお兄さん。小テストに向けた勉強が思うようにいかず、塾長から叱責されることを恐れ、塾に行くべき時間帯に公園に逃げた。塾長から電話で「今から来ないと退塾させるよ!」と伝えられ、子ども本人が「じゃあ辞める!」と言って退塾した。

・ 双子の妹さんは塾に通い続けていたが、お母様のフォローが不足しがちになると、塾長から「兄と一緒に新しい塾に行けば」といったことを言われ、妹も辞めることに。

・筆者が新しい塾を探してきたが、双子共に行かず、そのまま中学受験撤退。

・ 筆者としては、もともと中学受験では無理させず、実力相応の私立へ行かせるつもりだった。「とにかく頑張る!」という塾長の方針とは合わなかった。

授業から逃走した子に、塾長が本気の「退塾勧告」を出す。大手塾だったら、考えられない対応ですね。

私は大手四大塾のうち二つに、講師/事務職として在籍した経験があります。どちらの塾においても、子どもが授業に来ない事件が起こりましたが、その際は手が空いている講師が街を探し回りました。で、その後は「どうしたの?」「がんばろうよ」と面談。優しいですよね。ただ裏を返せば、大手集団塾の運営上の最大の目的は営業利益にあり、生徒を退塾させないことが第一ですから、それほどに温かいわけです。

一方、この記事に登場する塾の方針は、『とにかく頑張る!←非常にあやふやな言葉ですが、「目標に向けて、着実に努力を重ねる」という意味で捉えておきます)です。その理念のもと、みんなは必死に努力している。そんな中、一人がんばらない子がいたとして、先生がその子に「しょうがないね。勉強つらいよね」と甘い態度を見せれば、クラス全体の士気が下がるかもしれません。ですから、塾長の厳しい対応について、個人的には理解できなくもないです。

塾は説明責任を果たしていたか / 親は塾を理解できていたのか

ただ、気になるのは、塾長→親への自塾についての説明が足りていたのか? という点です。

具体的にいえば、入塾の際に塾長から、「うちの塾は『頑張る塾』です」「『無理せず、入れる学校に入ればいいや』という塾ではありません」「小テストにおいては、事前に必ず〇〇と△△をしてきてもらいます」「親御様は、****という形でフォローをお願いします」「あまりにも学習態度が塾の方針にふさわしくないと考えた場合、面談します」「それでも改善しない場合、退塾していただくこともあります」といった詳細な説明はあったのかな、と。

・ 塾長は、アカウンタビリティ(説明責任)を果たすために最善を尽くした。しかし、ツインズママさんが塾の方針を理解できなかった。あるいは、頭では理解していても、子ども共々目標に向けた行動ができなかった。

・ 塾長の説明が足りなかった。だから、塾が目標とする受験生像と、それに向けて具体的にやるべきことに対して、塾長とツインズママさんのご家庭とで齟齬が生まれてしまった。

・ どちらが悪いというわけではなく、塾長・ツインズママさんの両者ともにコミュニケーション不足だった。

上記のいずれかだったのだと思います。いずれにせよ、ツインズママさんが「塾長の方針とは根本的に合わなかった」と退塾してから述べているところを見ると、通塾中には、塾が子どもにフィットした場所なのかどうかの判断はついていなかったということは、はっきりとわかります。ただ、ツインズママさんが悪いと言いたいわけではありません。先述したように、塾の説明が欠けている可能性もありますので。

この記事からは、中学受験をする際には、1.中学受験を通して、子どもにどんな学習をしてほしいかを明確にしておく2. 塾とコミュニケーションを取り、先生の考え方を理解する(理解するために、保護者の側から積極的に働きかける)、この2つが大切だとわかります。特に子どもを大手塾ではなく、個人塾に通わせる場合、これらを「なんとなく」で済ませてしまうと、手痛いことにつながりがちです。

中学受験を撤退する時期について

ちなみに、もし私が家庭教師として、ツインズママさんのお子さんを教えている最中、授業から逃走されてしまったとします。その際、どのような態度を取るか? といえば、まずは本人の話を聞くでしょう。記事に書かれている発言や行動を見る限りでは、お子さんの勉強への拒否感は強くなりすぎているようです。話を聞いた上で、もうきついんだな、と判断すれば、「無理しなくていいし、受験のタイミングは他にもあるよ」と話します。本来、中学受験はやらなくても立派に生きていけるものですしね(かくいう、私もしてません)。

ただ一方で、お子さんが「受験をやめる」と真剣に言い出したのは、小6の10月(入試本番まであと3~4ヶ月)。本人なりに何年間も色々なものを犠牲にしてきたことを考えると、そのタイミングで「高校受験でがんばろう」は、むしろ酷だなぁとも思うのです。小中通算で6年間の受験勉強となってしまうからです。もっと早い撤退であれば、問題は少ないのですが。

勉強が好きではない元中受生が公立中に入り、中2あたりから、完全に息切れしてしまう例を多々見ています(中1は中受のおつりがあるので、まだ上手くいきやすい)。そういう現実を知っているので、「何とかあと3ヶ月、中学受験の勉強やってみない?」というのが、個人的なホンネではありますね。もちろん、最後は子どもとご家庭の判断に任せます。ツインズママさんのお子さんたち、今も前向きにがんばっていてほしいです。


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