中学受験から高校受験へ切り替えるべき?(2)意外と知らない高校受験のデメリット

中学受験 → 高校受験への切り替え

こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。

読者様の中には、「がんばってきたけど、子どもが苦しそう。中学受験から、高校受験に変更したほうがいいのだろうか?」とお悩みの方もいらっしゃることでしょう。

中学受験と高校受験。どちらにも良さがあり、正解は一つではありません。

ただし、「高校受験のほうが簡単そうだ」そういった印象だけで判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。

本記事では、中学受験・高校受験の両方を指導してきた立場から、「高校受験のデメリット」を、3つの視点でお伝えします。

後悔のない選択のために、ぜひご一読ください。

※ 【本記事の前編】 『中学受験から高校受験へ切り替えるべき?(1)高校受験のメリットを徹底解説』

高校受験のデメリット

私の指導経験をもとに、高校受験のデメリットをあげていきます。

実技4科目が不得意な子には不利

高校受験のデメリットとして、よく挙げられるのが内申点制度」です。

まず初めにお伝えしておくと、主要5科目(国語、数学、英語、理科、社会)に関しては、私は7年間の指導を通して、巷で言われているような「学校の先生に、不当に低い内申点をつけられた」という事例を見たことはありません。

内申点の付け方の基準は、学校の先生に聞けば教えてくれます。

そもそも、定期テストの点数が評定の基準に達していないのに、「『5』をくれないのはおかしい。厳しすぎる」などと生徒が騒いでいることが多い。

あとは、提出物を先生の指示通りに出していないパターンですね。

しかし、その話は別としても、内申点システムは良いものではない、と思っています。

東京都立入試の場合、[当日の試験の点数+内申点]の兼ね合いで合否が出るのですが、実技4科目(美術、音楽、体育、技術家庭)の成績を「2倍」するというルールがあるので、実技が不得意な子はかなり不利です。

どれだけペーパーテストの点数が良くても、「絵が下手」「球技が下手」「歌が下手」などであれば、良い評価がつかないこともあります。

実技が明らかに下手くそなのに、「5」をあげるのはおかしいので、個人的には、成績の付け方としては理不尽だとは思いません。

ですが、純粋な学力とは関係ない要素が、入試に持ち込まれることは、生徒によっては(※)、大きなデメリットになると考えます。

(※ 内申点、実技2倍、提出物を成績に加点するといった高校受験特有の制度は、下位層が進学するにあたっては、むしろメリットになります。中学受験と違って、高校受験は色々な家庭環境や学力の子が受験しますから、そういう意味で、このシステムは「悪」ではない、ということも述べておきます)

内申を使わずに高校受験することは可能。実例を紹介

ただし、内申を一切使わずに、受験する手段もあります。以下の2つです。

(1) 模試の「併願優遇」で抑え校を作り、私立中学のみ受ける。

(2) 「併願優遇」すら使わず、完全一発勝負で私立中学のみ受験する

「併願優遇」制度とは、学校の内申点、あるいは、模試の成績が一定以上であれば、合格を「ほぼ確約」してくれるというシステム。

一応、入試を受けに行く必要はありますが、過去問対策なんてしてなくて大丈夫ですし、落ちた子は見たことがありません。「0点」を取らない限りは受かります。

ちなみに、自分の教え子(合計100名くらい?)の中では、内申を使わずに、模試で併願優遇を作った子は、20名弱いました。

また、併願優遇を一切使わなかった(私立完全一発勝負)は、4名のみです。

不登校により、内申がオール1になってしまったので、やむを得ず、私立一発勝負した子が1名。

併願優遇が使える学校の中に「行きたい学校が無い」と判断し、一発勝負を選んだ子が3名。

ちなみに、後者は全員、早慶付属高校に合格しました。そのくらいの志と学力があるからこそ、取れた選択といえます。

内申制度があると、学習が本質からずれやすい

内申点によって、「生徒の勉強の質が悪くなる傾向がある」と感じることはありました。

一発勝負の入試では、合格点にたった1点でも届かなければ落ちます。

しかし、高校受験で内申利用する場合、そういうシビアな認識はつきづらく、生徒の甘えも見られました。

たとえば、「内申『5』をくれないのはおかしい」という、先の発言もその一例なのです。

「5」がもらえる基準が平均90点だとして、中間テストで82点、期末テストで90点取ったとしたら、平均は86点。

4点足りないので、「5」がつかないのは当然です。

82点を取るべきではなかったし、取ってしまった段階で、期末では満点を目指さなければいけなかった。

多くの中学校の定期テストは、パターン認識的な問題しか出ないので、そのくらいやろーよという感じです。

事実を見つめず、「先生の贔屓で内申がつかない」とか、そういった話にすり替えてしまう子もいました。

親御様の間でも「内申点の付け方って理不尽だよね」というなんとなくの雰囲気が漂っている。

そのため、生徒が内申を言い訳にして、本質的なことから目を背けてしまうのです。

一方の中学受験では、内申を言い訳にできない分、どんな結果が出ても自己責任となるわけで、本当に過酷です。

しかし、そういったシビアな試験を通して大きく成長を遂げる子もいます。

また、前回の記事では、高校受験のメリットとして、「併願優遇制度」をあげましたが、逆に、合格校の確約がある分、いまいち勉強をやり抜けない生徒も多いと思います。

(※ 本記事の前編:『中学受験から高校受験へ切り替えるべき?(1)高校受験のメリットを徹底解説』

都立入試の場合も、内申点が出た段階で、ある程度は当日の合格が見えてくるため、中学受験のような緊張感のある一発勝負に比べれば、どこか「ぬるい」入試になりがちです。

学習量はこなしていても、思考や戦略といったあと一歩が足りないように感じていました。

自校作成校(トップ校)でもない限りは、そんな要素がなくても受かってしまうので・・・。

上位生にとっては、受験校(進学校)の選択肢が少ない

中学受験と比較した際、上位生にとっては、高校受験は受験校の選択肢が少なくなります。

以前は海城、本郷、豊島岡なども高校募集をしていたのですが、いずれも停止してしまいました。

高校受験で受けられる学校の一覧は、『【SAPIX 中学部】東京都 2024年度 高校偏差値一覧 国立・私立校(リセマム)』を見てみてください。

早慶付属校を狙うなら選択肢は結構あるのですが(しかも、中学受験で超上位層が抜けている分、合格しやすい)、進学校の選択肢は多くはありません。

「東大合格者数ランキング」上位の進学校となると、非常に数が限られますし、特に女子が受けられる学校は少ない。

なお、国立と都立は、それぞれ1校ずつしか受けられないことも、ご留意いただく必要があります。

中学受験のような「同偏差値帯の進学校 A校とB校とC校、校風が好きなのを選ぼう(ワクワク♪)」という選択の余地はなく、高校受験では、「私立 or 国立 or 都立」「偏差値」「自宅からの距離」で、受験校はほぼ絞られます。

まとめ

中学受験、高校受験、どちらにもメリットとデメリットがあります。

大切なのは、私がここまでに書いたことや、その他ネットの情報、書籍等も参考にしていただいた上で、「わが子が、より良い勉強ができそうなのはどちらかか?」を、様々な観点からお考えいただくことだと思います。

また、現在すでに中学受験の学習を開始していて、それをやめて、高校受験にシフトするというのはある種のリスクを伴いますので、ご注意ください。

上記の記事にも書いたのですが、中学受験撤退のタイミングが遅い場合は、「小中通算で約5~6年間の受験勉強」となってしまうため、勉強が好きではない生徒にとっては、本当に倦み疲れてしまいます。

集団塾では、そういう子を何人も見てきました。

本人のモチベーションが低いのであれば、「本記事の前編」で書いたような高校受験のメリットも関係なくなってしまいます。

その点については、ご考慮いただければと思います。

また、以下の記事には、実際に生徒として、公立中学と、私立中高一貫校の両方に通ったことのある私の考える「中学受験の本当の価値と、高校受験との違い」を書いております。

ぜひ、参考になさってください。


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【本記事の前編】