こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
以前、教え子がドルトン東京学園の「思考表現型入試」で合格をしました。
俗に言う「総合型選抜」、一昔前の言い方をすると、「AO入試」「一芸入試」です。
指導当時は、ネット上にほとんど情報はなく、手探りの指導となりました。少しでも、同試験を目指すご家庭のお役に立てればと考え、当時を振り返ってみます。
「『総合型選抜』ってなじみがないけれど、どんなものなんだろう?」とお思いの方にも、興味を持ってご覧いただける記事だと思います。
ちなみに、いつもこのブログでは、私の持つ経験やメソッドを惜しみなく書いているのですが、今回は、生徒のプライバシー保護の観点から、要所をぼかして書くことをご容赦ください。
入試に関する情報と分析
私が指導した生徒(小6)は、ある分野でのプロを目指しており、小学校の授業終了後(たまに小学校も休んで)、週6で活動をしていました。
地元の公立中学に進むと、高校受験をすることになります。そうなると、今までのように積極的な活動ができなくなってしまう。そのため、思考表現型入試を使って、ドルトン東京学園の合格を目指すことになりました。
私が家庭教師指導を始める際、一番初めにやるのは「志望校の問題」を理解することです。
私が指導した年度は、ドルトンの思考表現型入試は、「作文と面接試験」で合否が決まるシステムになっていました。
「作文」の過去問は、学校説明会資料に一年分だけ載っていたのですが、面接試験で何を質問されるか、全くわからなかったので、親御様に「学校説明会で、生徒さんに聞いてきてくださいませんか?」とお願いしました。
すると当日、親切な在校生に出会えたようで、「面接」に関して詳しい情報を得ることができました。
その生徒さんは、ついでに「作文」で何を書いたかも教えてくれたので、実質的に、作文のテーマ(過去問)は、二年分が手に入った形になりました。
それらの情報と、学校のパンフレット、「アドミッションポリシー」などを鑑みて、ドルトン東京学園が入試を通して、どういう力を試したいのか? を考えました。
以下にその分析内容を書きますが、あくまで、「個人的な見解」ですので、正解とは限らないことにご注意ください。
1. 物事を考える習慣があるか? 何においても、「理由」が説明できるか?
(たとえば、熱中している習い事があったとして、それを続ける理由を「みんなやってるから」などと答えるのではなく、自分軸で述べられるか?)
2.自らの身の回りのことだけでなく、現代社会の諸問題にも興味・関心があるか?
3.上記二つに関して、他人に伝わるように、自分の言葉(「書く」「話す」)で、考えや視点を説明できるか?
指導内での対策と、親御様の役割
「総合型選抜」は「ゆるい」という印象がある方も多いかもしれませんが、ドルトンの思考表現型入試の場合、倍率が高く、全く油断はできませんでした。
そのため、先の3つの力をつけるために、さまざまな対策をしています。
その子の成績は、小学校のカラーテストで、「100点を取ることのほうが少ない」くらいでしたが、親御様以外の様々な大人と会話をしてきたので、受け答えがしっかりしており、自分の考えを口頭で言語化するのは得意でした。
つまり、作文を書くための「土台」の力は充実していたのですが、文章は書き慣れておらず、また、社会科の知識やニュースへの興味もほとんどありませんでした。
そのため、特に、作文力と社会科の力を伸ばすことに注力しました。
もちろん、自分も家庭教師として尽力しましたが、合格につながった大きな要因は、以下の3つだと感じます。
1.生徒の「素直さ」と、習い事で培った要点把握力
2.ご家庭による情報収集と、棚卸しや語彙のサポート
3.親子の日常的な対話の習慣
受験の合否によって、「今、やっている習い事を続けられるか否か?」が決まるので、本気で合格したかったんだと思います。だから、指導者(私)の話を真剣に聞いて、アドバイスを受け入れる。
くわえて、これまでの習い事の経験もあって、話の要点を掴む力も非常に高く、こちらが教えたことをどんどん吸収してくれました。
親御様には入試情報を集めていただくだけでなく、本人がこれまでにやってきたことの棚卸しや、語彙を増やすための取り組みなどもお手伝いいただきました。
本来は、私立中の学力試験に挑む場合も同様だと思うのですが、特に総合型選抜の場合、親御様のフォローとして、「子どもとの対話」が重要になります。
本人を置き去りにして、大人が一方的に情報を与えるのではなく、お互いにとって意味のあるキャッチボールをする。
そうすれば、子どもは作文試験や面接試験につながる「頭の使い方」を身に着けることができます。
このご家庭の場合、今までの生活の中で、良質な対話が行われていたので、安心してお任せすることができました。
総合型選抜は、「何を考えて生きているか?」が問われる入試です。
そして、小学生の場合、親御様のものの考え方が、本人の思考に非常に大きく影響します。
総合型選抜を目指すご家庭は、その点を覚えておいていただけると良いと思います。
総合型選抜は、「邪道」なのか?
さて、親御様世代は、総合型選抜に、「邪道」的なイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
特に、大学受験においては、「学力的な基礎を身につけず、最高学府に入るのはどうなんだ?」という文脈で、総合型選抜は、推薦入試と共に批判されがちです。
感情的なものは置いておいて、現実の流れとしては、大学入試において、総合型選抜や推薦入試の割合が増えてきています。
たとえば早稲田大学は、既に2024年段階で、入学者の約3割が、総合型選抜・学校推薦型選抜者で占められています。さらに、その割合を「2026年までには、『6割』にしたい」と公式発表しました。
中学受験には学力で挑む子どもも、大学受験では総合型選抜にチャレンジしている可能性もあるでしょう。どのご家庭にとっても、「総合型選抜」は他人事ではない話だといえます。
ちなみに、「総合型選抜は、就職の際の企業ウケが良くない」という噂もありますが、これは「各企業や、仕事内容によりけり」だと思います。
筆者は以前ライターをしていて、メーカー、インフラ、マスコミといった企業(ベンチャーから大手まで)の人事部や、新卒採用コンサルの会社社長などに取材をしていたことがありました。
そのときに聞いた話をまとめると、学力と仕事内容が直結するような仕事は、総合型選抜の印象は△。
逆に、主体的に新しいことをやっていくのが推進される企業・業種の場合は、むしろ総合型選抜は好印象に働くようです。
ただし最初から、総合型選抜出身者を積極的に採用しているわけではなく、「採用してみたら、有能な人が、総合型選抜出身だった」という結果論の意見がよく聞かれました。
まとめ
ドルトン東京学園は、入学した後の学び方が、かなり特殊であるため(いわゆる「探求学習」)、学力試験の子も、総合型選抜の子も一緒に混ざって授業を受けることが可能になるという特徴があります。
普通の学校のような、「知識の積み上げ型(詰め込み型)」の授業だと、総合型選抜で入試を突破した基礎学力がない子は、授業についていけなくなってしまうリスクがあるのです。
私立中高一貫校の入試で、総合型選抜が流行らないのは、上記の理由からでしょう。
合格した自分の教え子も、「小学校の勉強は、標準レベル(科目や単元によっては、標準よりやや下)」でした。思考表現型入試という手段があって良かったです。
私から見て、「頭はいいけれど、何らかの事情で受験にハマらない」子は一定数いる。そうした子どもをすくい上げられる仕組みが、今後の教育には求められていると思います。
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