こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山です。
小学校高学年になるにつれて、国語の文章はぐっと難しくなります。
特に説明文や論説文は、文章内容や、使われている語彙が抽象的です。
低学年の頃はスラスラ読めていたのに、今は「話の内容が入ってこない」「何が言いたいのかわからない」と悩む場面が増えてきた・・・というご家庭も多いのではないでしょうか。
実はその背景には、「常識力」や「言葉の意味を、具体的にイメージする力」の不足があります。
今回の記事では、「抽象的な文章を読み解く力」をどう育てていくか、実例を交えてお伝えしていきます。
「前提知識をもとに、具体例を思い浮かべる力」とは?
抽象的な文章を読めるようにするには、「常識力」をもとに、自ら「文章を具体的にイメージする」ことが大切です。
以下の例文を通して、解説しましょう。
日本語には言葉が多い。それは、同じ物事を言うのに、いくつも言い方があるからだ。(中略)
地位や職業による話し方の違いや、方言による話し方の違いもあり、日本語には言葉の数が多いということになる。
出典:『国語〈1〉日本語の探検にでかけよう』 桐山久吉 汐文社
理論をわかりやすくするために、あえて簡単めな文章を選定したことをご理解ください。
さて、この文章は大人なら理解するのは容易いですが、小4くらいの子どもだと腹落ちしないことが多々あります。
なぜなら、以下のように「具体例」を頭に思い浮かべながら、読む必要があるからです。
【方言の話し方の違い】
標準語 だめ / 関西弁 あかん
標準語 いい / 関西弁 ええ
【地位や職業による話し方の違い】(※ 仮に「敬語」で考えてみる)
する → いたす、なさる、される、します
こういったことを、自分でさっと思い浮かべて「ああ、確かに言葉が多いじゃん」と納得する必要がある。
そうしないと、先の「日本語には言葉が多い。それは、同じ物事を言うのに、いくつも言い方があるからだ」という文の意味が理解できなくなってしまいます。
ここからわかるのは、国語の文章を理解するには、ある程度の「常識」を知っておいた上で、必要に応じて、頭の中で思い浮かべる作業が必要になるということです。
先述の「話し方の違い」の例は平易ではありますが、中学受験においては、自然科学、哲学、比較文化といった、普通に小学生として生きていたら知ることはないであろう難解なテーマが登場します。
これに対応するには、読解問題を演習する際に、「文章内に普遍的なテーマが含まれているのであれば、それを常識として理解する」という学習を挟む必要があります。
詳しくは、以下の【関連記事】に書きました。
家庭学習の際に気を付けるべきこと
ただし、ご家庭で「読解問題を通して、テーマを教える」のは難しいと思います。
なぜなら、読解問題を一瞥して、「この文章は、入試によく出るテーマだ。だから、ありがちな文章展開のパターンや、頻出の言葉の意味を教えておこう」とピンとこないと、教えられないからです。
つまり、様々な入試問題に精通していない限り、そんなことには気づかないので、ご家庭だけで指導するのは現実的ではないのです。
親御様が扱いやすい「テーマ別」教材
家庭で教えるのであれば、『小6のサピックス Aテキスト』が、一番扱いやすいように思います。
毎週、テーマ別に分類されており、読解問題だけではなく、ありがちな文章展開や、頻出語彙の知識を学ぶこともできます。
小5下巻 以降の『予習シリーズ』もテーマ別になってはいますが、率直に言えば、親御様が扱うには、子どもに伝えるべきポイントが掴みづらい印象です。
理社学習の重要性
また、国語で必要な常識は、理科と社会の学習を前提としていることもあります。
たとえば以前、小4の子の国語を指導していたとき、読解の文章で「湿度」の話題が出てきました。
しかし、その子は理社を全く学習していなかったので、そもそも湿度という概念を知らず、ちんぷんかんぷんでした。
諸事情で、入試科目を国算2科目に絞る場合でも、何かしらの理社の学習は続けることが必要です。
【理社学習の例】
『小学校の教科書』、『小学生新聞』、『時事問題集(大手塾が出版している市販のもので可)』
そして、ただ知識をつけてもらうだけではなく、文章題の解説の際には、適宜、具体例を思い起こさせるような問いかけをすることが最重要です。
先の話し方の文章の例でいうと、「方言ってどんなものがあるっけ?」、「地位による話し方の違いってなんだろうね」といった問いかけをして、子どもの頭の動かし方を変えていきます。
「『具体例』を読み飛ばせ」のウソ
よく、「具体例は大事ではないので読み流そう」という読解の方法論を耳にします。
言いたいことの意味は理解できるのですが、具体例を読み流してしまうと、文章に書かれていることがわからなくなりがちなので注意したいです。
そもそも具体例とは、抽象例(筆者の言いたいこと)を、わかりやすく説明するために書くものです。
だから、抽象例を読んで意味不明に感じるのであれば、理解の拠り所を具体例に求めるべきです。
(人生において、)選ぶというと、前に進むイメージばかりがクローズアップされがちですが、実はこれにともなう大切な力があります。それは、引き返す力です。【抽象例】
たとえば、何かを選んだ後にいろいろなことがわかってきて、間違った、と思うことがあるでしょう。そのときは、すぐに引き返すことです。そうすれば、後悔は半分で済みます。【具体例】
出典:『10代から考える生き方選び』竹信三恵子 岩波書店
抽象例と具体例を比べたとき、【具体例】の方が理解しやすくはないでしょうか?
ですので、子どもの状況によっては、「筆者の言いたいことの意味がわからなかったら、具体例を読んでみよう」と声をかけた方が良いです。
小学生はスポンジのように何でも吸収し、言われたことを前のめりに実行し続ける傾向にあります。
その子の状況を見極めず、不用意に「具体例は読み流そう」と声かけしてしまったとします。
すると子どもは、具体例を全て読み流すようになってしまい、文章の主旨が一切つかめなくなってしまう、という結果につながりかねません。
このブログで一貫して言い続けていることではありますが、生徒の個性や状況にあった指導をすべきだ、ということを改めて主張したいです。
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