こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
8月28日~29日に、EXPO 2025 大阪・関西万博に行ってきました。
これから万博に行く予定の、中学受験生をお持ちのご家庭に参考にしていただけるような取材記事を書きたいと思います。
万博に行く予定がない方も、「万博って、こういうものなんだ」と思いながら、読んでいただければ幸いです。
今回は、中国の圧巻の演出、中東の異文化、フランスの芸術的展示など、「体感的な」パビリオンの数々を中心にご紹介します。
前回記事の簡単なおさらい
前回記事の概要を、簡単にまとめると以下のとおりです。
・ 首都圏の中学受験生をお持ちのご家庭であれば、社会(世界地理・世界史など)or 理科(科学)に、強い興味があるなら、万博に行ってみることをおすすめ。
・ 9月現在、各パビリオンの予約は取りづらく、待ち時間も長くなっているため、興味・関心が追い付いていないと、「待ち時間と体験の満足度が比例しない」結果になる場合もある。
・ 筆者が訪問して気づいたのは、「万博は、世界各国のセルフブランディングの場」であるということ。
・ 展示物の「見せ方」や「洗練度」は、各国によって大きなばらつきがある。
主に、中国・中東・ヨーロッパ系の国々をまわった2日目
では、写真をまじえて体験や感想を語っていきます。2日間行ったうち、2日目(8/29)の私の動きは以下のとおりです。
【9:30に入場】 中国館(待ち時間なし) → カタール館(10分待ち) → UAE館(10分待ち) → バーレーン館(30分待ち) → コモンズD(待ち時間なし) → サウジアラビア館(30分待ち) → スペイン館(20分待ち) → コモンズA・イエメンのみ(待ち時間なし) → フランス館(40分待ち)
中国館
万博に来た目的の一つに「旅行に行きづらい国のパビリオンが見たい」という思いがありました。
そのため、2日目は入場してすぐに、クウェート館に向かいましたが、規制をしており、並ぶことさえ許されず・・・。
すぐ隣に中国館があり、並ばずに入れる様子。
中国(北京)は旅行経験があったので、当初は興味なかったのですが、建物外観のデザインの良さと、スケールの大きさに圧倒され、入ろうと決めました。



そして、中身もめちゃくちゃ良かったです。自分の中ではダントツの一位です。
中国3000年の歴史と、近年の目覚ましい発展を、センス良く・テンポよく、これでもかといった感じで見せつけてくるすさまじい展示です。
まず、「春夏秋冬」「二十四節気」をモチーフとした美しい映像でお出迎え。




紀元前の文化財の展示は、『マイノリティ・リポート』という近未来映画のようなギミックつき!
何が言いたいか全くわからないと思うのでw、以下の動画の「3分30秒~」をぜひご覧ください。
(※ 動画出典:『大阪サンスポちゃんねる』)
希少な動植物、美しい農村、スマートシティの構想、日本と中国との関わりの歴史、宇宙開発(「月面表土のサンプル」も展示)、深海探索などが、「映像」「文化財の実物・レプリカ」「最新型タッチパネル」「ゲーム」といった、ありとあらゆるしかけで展開されます。



ここまで大がかりだと、他パビリオンでは早歩きのお客さん(※ 前回記事でも書いた通り、万博では展示物をじっくり見る人は少ない)も、みんな足を止めていました。
「中国の普通の国民は、どんな生活をしているの?」という一見つまらなそう(失礼)な映像ですら、すごく見入ってしまう内容でした。
成長している国の熱気が感じられました。液晶や音響が素晴らしく、演出にもぬかりがない。
ちなみに、私が中国に旅行したのは、北京オリンピックの直前(2008年春)だったのですが、日本人観光客とばれると、店員がぼったくろうとしてきて、イメージはよくありませんでした。
でも、万博のお土産屋さんは良心的な値段。
たとえば、以下の[パンダの金属製しおりは600円]。日本のミュージアムショップと同じくらいの価格でした。
比較対象として、他の海外パビリオンの例をあげると、[鉛筆1本:600円]、[ポストカード1枚:1,000円]、[ピンバッジ1個:2,500円]など。

(※ 「春・夏・秋・冬」をイメージした繊細でかわいらしいデザイン。筆者は冬をチョイス)
万博は、「セルフブランディング」の場所です。
お土産のお手頃価格を見て、中国は「そういう風に見られたい」のか・・・とつくづく感じました。(ちなみに、リアルな赤ちゃんパンダのぬいぐるみだけは、なぜか異様に高額で60,000円近かったですw)
カタール館、UAE館、バーレーン館
今回の目的である中東系パビリオンの紹介です。
カタール館のお土産屋さんにあった色鉛筆は、黒色・茶色・緑色系が多いのが、日本と違って面白い。

アラブ首長国連邦(UAE)館。ナツメヤシの柱の合間に展示が点在している、まったりした雰囲気の空間。
「女性が活躍してます!」という展示が多いのは、やはり「そういう風に見られたい」んでしょう。


バーレーン館。ここに入ったときは、結構バテてました。日影がないところで30分並んだ上(万博に来てから、私として、ここまで長い待ち時間は初めて)、中に入ってからも、空調が効いていなかったからです。

くわえて、そもそも隣のトルクメニスタン館に入りたかったのに、休館しており、代わりにバーレーンに並んだという経緯もありまして・・・。
決して悪い展示ではなかったのですが、「散々待って、これか・・・」と少しだけ思ってしまったのは事実。これが閉幕間近、真夏の万博のつらいところですね。
まあ、そうは言っても、展示を見て感じたこと・考えたことはあります。
カタールもそうなんですが、元々、バーレーンは真珠漁で栄えていた国。
真珠漁は、非常に危険を伴うものだったらしい。そんな中、石油を中心とした各種資源が発掘されて潤った、という経緯をたどっています。


「資源国はうらやましいぜ」というシンプルきわまりない感想を抱きましたね。石油という最強のカードがあれば、追従的な外交をしなくても済むわけですし。
バーレーン館は、ザクロジュースがおいしかったです。昔、トルコ旅行に行ったときにも飲んだ懐かしい味でした。
サウジアラビア館
SNSなどでも評価の高い、サウジアラビア館に行きました。
伝統的な「泥レンガ建築」をイメージした建物と中庭が続きます。これだけで圧巻。「サウジアラビアって、こんな感じなんだ」と一瞬でわからせてくれる。


ディシュダーシャ(中東男性が着る白いつなぎ)の現地人スタッフもうろついていますが、中には、関西弁を話す方もいて面白いw

サウジアラビアは思いのほか、絵画やクラブミュージックといった「アート」「サブカルチャー」がよかったです。
サウジ画家たちの絵。すごく印象的で気に入りました。掛け軸風の絵画は、日本画に影響されているらしい。



途中にDJスペースもあったのですが、音響がとにかくめちゃくちゃいい。
若い頃は音楽が大好きで、よくクラブ通いしていたのですが、こんなに良い音響は知らないです。さすがのオイルマネー。
実際にDJが来て、プレイするとのことでしたが、イベント開始時刻は「『サウジアラビア時間』で、30分後くらい」w すなわち、定刻どおりにやるとは限らないとのこと。
イスも何もない空間で、ずっと待つのは辛かったので退散。でも、体力や時間に余裕があれば、ぜひ参加したかったですね。
サウジアラビアは、前日のチュニジアと同じく、「プチ異国」を感じさせるしかけが多くて楽しかったです。
自分は入りませんでしたが、カフェとレストランがそれぞれ1つずつあって、特に予約が必要なレストランはなかなかの異国情緒でした。


ショップで、『沙竜の子 ダーリ』という少年漫画の単行本を買いました。
こちらは『マンガアラビア・キッズ』という、サウジアラビア&アラブ界初の漫画雑誌で連載している作品。
『ダーリ』を買ったら、『マンガアラビア』もおまけとしてもらえました。

『ダーリ』は、日本の漫画の影響を強く受けつつ、サウジアラビアの生活も伺える、面白い作品でした。レビューは、別記事にて行いたいと思います。(※ 現在、執筆中)
サントメ・プリンシペ(コモンズD)、スペイン館
実は、筆者はオランダにゴッホの絵を見に行くくらいには、アートが好き。サウジアラビアの絵も素晴らしかったですが、他にも、万博で気に入ったアートをあげていきます。
サントメ・プリンシペ民主共和国(コモンズD)。中央アフリカの2つの島からなる国です。
手付かずの自然が多く、国民の多くは農業に従事しているらしい。人々の生活をあらわした絵は、アフリカらしい色使いが印象的。




スペイン館。オレンジ色の部屋に、スペインを表す絵葉書や映像が展示されているだけなんですが、この空間にいると、陽光あふれてにぎやかな「スペインらしさ」を感じました。
サウジアラビアみたいな直接的な表現ではないけれど、「ああ、こういう国なんだ」と伝わってくる。




スペイン館は、「オレンジ部屋」と、「海洋国家としての史実に関する展示」という2つの空間で成り立っているのですが、正直、海のほうもアートに全振りで良かったように思います。
どっちつかずな物足りなさがあって、そこがちょっと惜しかったです。
フランス館
フランス館。列が長くて並ぶのを少し躊躇しましたが、「日も落ちたことだし、せっかくだから」と待ってみたら、これが大正解でした。

ルイ・ヴィトンや、クリスチャン・ディオールといったハイブランドにはあまり興味なかったのですが、思わず見入ってしまうすごみがある。
レンブラント・ファン・レインの絵画のように、光と影のコントラストを生かし、真っ白な石膏の上に「新たな何か」を生み出していました。


(※ 左:『左手と右手のアッサンブラージュ』、右:『恋人たちの手』/いずれもロダンの作品)
筆舌に尽くしがたいものがありました。特にディオールの展示が良くて、涙が出そうでした。





私は、彫刻の森美術館(箱根)が好きです。理由は、屋外型であるため「見る方向によって展示物の印象が180度変わるから」。
フランス館の展示は、一部を除いて、彫刻の森のようにオープンエアーではないですが、「見る方向によって、印象が大きく変わる」点は似ており、面白かったです。
「静」と「動」の緩急のつけかたも計算されている。
ド迫力のヴィトンの室内展示を見た後に、急に神秘的な中庭に放りだされて、視覚だけでなく、肌で感じる気温も変わるから、とても不思議な気分になる。


最後の日本とフランスをつなぐ展示も、言葉で語らずにメッセージを伝える。やっぱりフランスって、とんでもないアートの国なんだとわかりました。



その他、万博の良かった点・悪かった点
その他、良かった点や悪かった点をあげます。
【良かった点】大屋根リング
「大屋根リング」、写真で見ているときは「ふーん」という感じでしたが、会場に行ってみると、見た目にインパクトがあるだけでなく、非常に実用的な建築物だとわかります。
下にいると風が通って涼しく、貫接合(「清水寺」などでも使われている建築技術)の味わいが楽しめます。そして、上に上がれば、壮大な景色を見わたしながらの素晴らしい散歩道。
機能面とランドマーク的なデザイン性を見事に両立していました。



【良かった点】自販機、フード、トイレ、イスには困らない
あれだけ混んでいても、自販機、フード、トイレ、ちょっとした休憩をするイスには困らなかった(ほぼ並ぶことはなかった)のが救いでした。
ただし、これは8/28~29(平日)の話ですので、今後、閉幕に向かってどうなるのかはわかりません。
【悪かった点】各パビリオンの予約システム
予約システムについて。「3日前予約」は、先着順ではなく抽選にするとか、初回来訪者は当選しやすくするとか、配慮があると本当は良かったですね。
いや言葉を選びましたが、もっと率直に言います。
「先着順とかありえん。夏休み中で仕事早いのに、日付が変わる時間帯に、1~2時間もネットにはりつけるわけないだろ(涙)」
やっぱり、芸術好きとしてはイタリアが見たかった。7日前抽選は、すべてイタリアに注ぎ込みましたが、全ハズレでした・・・。
万博に行く前に:「浅く広く」に待ち時間をかけられるかを考えて
関西・大阪万博は、社会科好き・アート好きの私としては、結構楽しめました。
しかし混雑が激しく、予約もしづらくなっているため、「本人に強い興味がない限りは、小さいお子さんを連れて行くのはおすすめはしない」とは、お伝えしておきます。
万博のいいところは「浅く広く、色々なものを一挙に見られる」点だと思います。
当然ながら、「深さ」でいえば、実際の海外旅行や、一つのテーマを持った博物館・美術館には全くかないません。(例外的に、中国・フランスパビリオンは、単体でも十分成立すると思います)
私も翌々日には、京都の博物館に行きましたが、レプリカじゃない本物が見られるし(中国やバーレーンなど、万博にはレプリカ展示もある)、「展示品の背景」の解説が丁寧で、万博との違いは大きく感じましたね。
それに何といっても、万博よりは空いている。
だから、お子さんの興味によっては、別の博物館・美術館に行ったほうがいい場合もあるわけです。そういった観点から、万博訪問を検討していただけると良いかと思います。
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