こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
小学校の夏休みの宿題として、「作文」が出された子も多いでしょう。
また、公立中高一貫校の適性検査や、私立中学の総合型選抜(AO入試・一芸入試)対策で作文に取り組むご家庭もあると思います。
そこで今回は、「もっと良い作文が書けるようになりたい」という意欲のある子に向けた、試験タイプ別のノウハウ記事を書きました。
親御様が記事を読んだ上で、各ポイントをお子さんにお伝えいただければと思います。
さて、「良い作文を書きたい」と考える多くの子が、実はまだやっていないことがあります。
それは、「作文を書く目的」を知ることです。
※ 関連記事:『作文の型を覚えても、「浅い作文」しか書けない理由とは?【適性検査・中学受験 総合型選抜】』
「作文を書く目的」ちゃんとわかってますか?
「作文を書く目的を知る」とは、すなわち「出題者が、作文を通して、どんな力を求めているかを知る」ということです。
子どもや親御様で、「作文なんて、『大人が喜びそうなこと』を書いておけばいい」と口にする人がいますが、残念ながら、大きな誤解といえます。
それでOKになるのは、「とりあえず、提出しておけばいい宿題」や、国税庁主催の「税の作文」くらいです。私はこれを「迎合型」と呼んでいます。
倍率の高い入試に「迎合型」の感覚で挑むと、間違いなく不合格になってしまいます。
以下に、入試・課題ごとの「作文の目的」の違いを整理してみました。大きく3つの目的に分けられます。
(1) 迎合型
出題者の立場が明確で、「税金は社会に必要」「税を支払うのは国民の義務」といった結論から逸脱しづらい作文。批判や風刺は減点要因。
→(例)国税庁主催「税の作文」など
(2) 迎合排除型
発想の独自性や、その人らしい考え方が評価の中心。安全策は埋もれる。
→(例)ドルトン東京学園「思考表現型入試」、女子美術大学付属中「自己表現型入試」など
(3) 論理制約型
問題文の誘導を理解し、条件に沿って論理展開できるかが評価の中心。
→(例)都立中高一貫校「適性検査I」など
目的ごとに変わる「正解の形」――作文の3タイプを解説
先述した3項目について、詳しく解説しましょう。
各項目における「やってはいけない典型ミス」も書きましたので、参考にしてください。
迎合型:「税の作文」など、学校で強制的に書かされる作文
夏休みの宿題として、「税の作文」が出される小学校がありますね。以前、上記の記事にて、書き方を解説しました。
「税の作文」公式ホームページで受賞作品を見てみると、「大人が喜びそうなこと」を書いた作品が並んでいます。すなわち「迎合型作文」だとわかります。
現行の税制度は、国民から批判こそ出ていますが、それでも、税が必要不可欠であるのは自明の理です。
よって、一定の「常識的」な結論を書くしかないわけです。
本来、学校の作文課題は、論理的思考力や表現力を磨き、多角的な視点を養うための絶好の機会です。
しかしそれは、丁寧な添削指導がなされない限りは成立しません。また、「税」のように、与えられるテーマによっては、「大人が喜びそうなこと」を書いて終わりになるのが現実だと思います。
ただし、迎合型作文とはいえど、読み手を説得するための根拠の提示は必要です。詳しくは、関連記事で解説したので、ぜひご覧ください。
◆【迎合型】のやってはいけない典型ミス
「結論先行の常套句」(例:「税金は、社会を支える大切なものです」)だけ並べてしまい、論理的な筋道や具体例が伴わない。結果として、説得力のない作文になる。
迎合排除型:「ドルトン東京学園」や「女子美」など私立中学の総合型選抜
私立中学においては、作文や面接のみの試験を実施している学校があります。
たとえば、「ドルトン東京学園(思考表現型入試)」「女子美術大学付属中学(自己表現入試)」などです。
2025年度入試の実質倍率は、ドルトンが男子2.0倍、女子4.7倍でした。女子美にいたっては、11.6倍の超高倍率となっています。
すなわち、これらの試験で「大人ウケが良さそうなこと」だけを無思考で書いてしまったら、間違いなく埋もれます。
くわえて、学校が「作文・面接のみの試験」を実施している理由を考えなければいけません。
こうした試験を設ける学校は、「型通りの学力」では測れない資質を重視しています。
偏差値(暗記力や処理スピード)ではなく、未知の課題に向き合い、自分なりの方法で解決できる力を見たいのです。
その背景には、学校の理念や校風があります。
ドルトン東京学園は「自ら課題を見つけ、自ら学びを創る」ことを教育の柱としています。また、女子美は美術系教育の土台として、独創性や感性を強く求めます。
ゆえに、校風と合わない「優等生的な解答」は、高く評価されないでしょう。「他人ウケ」を狙った発言は、「自分軸」の考え方に基づいていないからです。
両校ともに入学後の学び方は自由度が高く、正解のない課題も多く出されます。そのため、作文試験を課すのは、入学後のミスマッチや伸び悩みを防ぐためでもあるのです。
このような「作文を書かせる目的」を踏まえた上で、対策をしていくことが、大事ですね。
(※ あくまで、上記は私の解釈に過ぎません。両校を受験する場合、公式サイトの「アドミッションポリシー」や、学校説明会における「試験の実施目的」に関しては、必ずご自身で「解釈」されるようお願いいたします)
◆【迎合排除型】のやってはいけない典型ミス
無難な話題や一般論だけでまとめてしまい、「あなたらしさ」がなくなる。
論理制約型:「都立中高一貫校」の適性検査I
都立中高一貫校の「適性検査I」では、作文が出題されます。適性検査Iは、「問題を理解し、指示に従う」ことが何よりも重要です。
ちなみに、都立の適性検査Iは、「共同作成問題」と「独自作成問題」に分かれますが、以下に書く話題は、いずれにも共通する内容だと、ご理解ください。
さて、2023年度の「適性検査I(共同作成問題)」の作文課題では、以下が出題されました。
【文章1・文章2】
(※ 論説文と随筆文が、それぞれ掲載されている。合計で3000文字程度)【問題】
あなたは、これからの学校生活でどのように学んでいこうと思いますか。
あなたの考えを、400字以上450字以内で書きなさい。
【条件】
(1) あなたが文章1・文章2から読み取った、共通していると思う考え方をまとめ、それをはっきり示すこと。
(2) (1)の内容と、自分はどのように学んでいくつもりかを関連させて書くこと。(※ 参考元:東京都立小石川中等教育学校)
要するに、「迎合型」「迎合排除型」のように、「自由に書け」ではなく、問題の指示を理解しながら、本文の内容を踏まえ、一定の方向性に従って書いていく形になります。
今回であれば、以下のように書けばOKです。
- 1段落目: 文章1・2の共通点をまとめる
- 2段落目:その考え方と自分の学び方を結びつける
- 3段落目:まとめ
すなわち、都立の作文課題は、「本文内容・問題指示・条件が理解できているか?」という論理的思考力を問う問題となっています。
ところで、数年前までの「南多摩中等教育学校(独自作成問題)」では、論理的な制約がありつつも、ある程度、自由な発想が問われる問題が出題されていました。
また、直近2年間(2024年度 & 2025年度)の「共同作成問題」も、条件の縛りがやや弱くなっているように感じます。
つまり、都立中高一貫校においては、「迎合排除型」と「論理成約型」の「ハイブリッド型」といえる問題も出題されているということです。
ですので、都立を受ける場合は、「論理成約型」に限定せず、「迎合排除型」といった色々なタイプの問題に取り組んでおいたほうがいいでしょう。
◆【論理制約型】のやってはいけない典型ミス
本文の趣旨が理解できていない。あるいは、設問文を読み飛ばす。「条件不一致」で大きく減点。
まとめ
「良い作文を書く」ために、「作文の目的を理解する」ことの重要性をレクチャーしました。
「書く目的を理解する」ことは、割と盲点になりやすく、しかし大切な点だと思います。
作文に取り組む前には、必ず「何を求められているのか」を明確にするようにしましょう。
次回の記事では、作文の内容をより良くするための「問題提起・ネタ出し・思考の深堀り」の方法について解説します。
【次回記事】
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