こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
夏休み──それは中学受験の天王山。
「塾の宿題が多すぎて、家庭学習まで手が回らない」、「この成績で志望校に届くのか不安」など、親御様の悩みは尽きないものです。
本記事では、過去に書いた夏休み関連の記事の中から、今の時期に特に役立ちそうなテーマを選び、まとめました。
あわせて、今年あらためてお伝えしたいことや、昨年の記事を補足するかたちで「逆転合格」の実例・考察も掲載しています。
迷ったときに立ち返れる「考え方の軸」として、ご活用いただければと思います。
夏の家庭学習、何を削って何を残す?親の判断と限界
昨年公開した、上記の記事では、以下の内容を書きました。
- 夏期講習の課題を全てやるのは非現実的である
- 課題は「取捨選択」すべきだ
- 過去問の扱い方と、塾との付き合い方のヒント
今でも、皆さまのお役に立つ記事だと思っていますが、今年はこれに補足したい点があります。
まず、課題の「取捨選択」ですが、家庭教師をつけているのであれば、その先生にお任せしましょう。
そうでないなら基本的には、「夏休み中、塾から与えられた宿題はこなす」意識でいましょう。
それでも、時間的に全てこなせないケースは多々あると思います。みなさん、そういうものですので焦らなくて大丈夫です。
もしこなしきれない場合、以下の基準で判断すると良いと思います。
・ 塾から指示された優先順位に従って、取捨選択する
・ ある程度、子どもが理解できている内容はそこそこに、危うげな内容をメインに取り組む
注意していただきたいのは、「親御様だけで、『完璧な』課題の取捨選択をするのは難しい」という点です。
特に、真面目な親御様や、伴走に自信をお持ちの親御様にはお気をつけいただきたいと思います。
宿題の取捨選択をする際、「過去問」の内容を確認し、逆算してやるもの・やらないものを決めるという考え方があります。
しかし私自身、この業界に入ったばかりの頃、「過去問の分析」をする際、「5~10年間で、ある単元が出ているか?/出ていないか?」という分析をしてしまっていました。
そして、親御様も指導経験があるわけではないので、過去の私と同様の意識でいらっしゃる方が多いように思います。
もちろん、それは仕方ないことなのですが、その意識のまま、親御様が課題の取捨選択をすると、上位校を目指す場合、上手く行きづらいと考えます。
上位校を目指すご家庭へ
上位の学校を目指す場合、「昨今、受験校で出題されていない単元・内容だとしても、やるべきことはたくさんある」のです。
特に国語は、テストの場での判断力といった「頭の使い方」が問われる科目です。
良かれと思って、「こういうタイプの文章しか出ていないから、こういう文章だけ取り組んでいこうね」と絞ってしまうと、機械でいう「あそび」の部分がなくなってしまい、子どもの頭がどんどん固くなってしまいます。
しかも、夏休み~受験当日まではまだ6ヶ月以上もあり、しかも大人と子どもで時間の感じ方は全然違います。
12才が1年間を過ごす感覚は、40代の4年間に近いともいわれます。すなわち、中学受験生は6ヶ月間を、親御様でいう2年間くらいの感覚で過ごしていることもご留意いただいきたいです。
あと当然ながら、入試傾向は、予告もなく突如変わることがあります。
集団塾時代には、ある難関校の算数入試で、突如、10年以上も出ていなかった単元が出題されて、試験中に号泣してしまった子の話も聞きました。「この単元は出ない」と思い込んでいたのでしょう。
だから、子どもに「志望校ではこれが出るんだよ」と教えることには、実は危険も伴います。
問題傾向を教えること自体が悪いわけではないのですが、ご家庭でバランスを取った伝え方をするのは難しいように感じます。
ですので、親御様からは触れず、塾の先生などに任せるのが無難です。
中堅校志望・基礎が△なお子様をお持ちのご家庭へ
逆に「偏差値50未満」の学校では、秋口の学校説明会で、入試にどういう内容・単元が出るかを教えてくれる場合が多々あります。
そのレベル帯を目指すのであれば、夏休みはとにかく基礎を固める。
秋に「出題範囲の情報」を入手したら、以降は「出る内容」をメインに対策していくことが大切です。
ジャイアントキリングは起こる。偏差値10の差を超えた子の3つの要素
こちらも、昨年公開した記事の紹介です。
テーマは、「夏休み後、成績が思ったように伸びなかった場合、志望校をどう考えるか?」というもの。
上記の悩みに対して、私は当時の記事で「夏前の段階で、志望校は変えなくていい」と書きました。
これは根拠のない励ましではありません。実際に昨年も私の教え子で、夏前の模試の成績と、合格校の偏差値が10離れた学校に合格した子がいます。
プライバシーの関係もあるので、合格校などは詳しく書きませんが、逆転合格できた要因を箇条書きしてみます。
・ 親御様が寛容だった。小4の頃、お子さんはできない問題があるとすぐ感情的になり、勉強が効率的に進められず、成績も全く取れなかった。
・ しかし、学年が進むうちに、お子さんが大人になってきて、少しずつ勉強と向き合えるようになってきた。その過程を親御様が見守れた。
・ 親御様の子どもへの観察眼が鋭い。思慮深い。
・ 幼少期から本を与えた。本人は全く興味を示さない期間が続いたが、読まなかろうが、とりあえず与え続けた。
・ すると、小5になってから本人が小説を読み始めた。一番苦手だった国語という教科が、入試の場で得点源になったのは、読書習慣が土台にあったからだと筆者は分析。(筆者の指導は、土台があるからこそ生きた)
・ 当初は志望校が多岐にわたっていたが、「過去問をやりこめない」ということで、優先順位をつけて絞った。
・ チャレンジ校の受験の前に、既に「合格校」があったため、精神的に落ち着いて挑戦ができた。
ポイントは、「親御様の姿勢」、「読書習慣」、「志望校戦略」です。
1.親の姿勢
「親御様の姿勢」について。
私は小6からこの子の指導をし始めて、そのときはある程度、落ち着いていたのですが、小4の頃は日々の宿題もまともに進められなかったようで、本当に大変だったと思います。
親御様によっては、このタイプの子を「うちの子は、勉強する約束を守らなくて全然ダメだ!」「地頭が悪いからできないんだ!」と決めつけることもあるでしょう。
でも、感情的に切り捨てるようなことをしなかったから、この子の今があるということです。
2.読書習慣
次に、「読書習慣」について。この子に限らず、今まで私が見てきた逆転合格した子の90%が「読書」をしていました。
よく言われるように、本を読むことが「成績に直結するわけではない」と思いますが、それでも「読まないことには、何も始まらない」と思っています。
最近、関西の大手塾「浜学園」が「小4までに『ライオンと魔女』『モモ』といった厚みのある児童文学が読めないと、塾の教材が読めない」と公式発表しました。
塾としては「読書なんて必要ないです!」と言ったほうが儲かるに決まっているのに、あえて、このような発表をするということは、よほど思うことがあったのだと考えます。(それが何であるかは、ぜひ読者様も考えてみてくださいね)
私は浜学園の発表に誠実さを感じ、好印象を覚えました。
3.志望校戦略
また、逆転合格には「志望校対策」が欠かせません。
しかし受験予定校がたくさんある場合、その分、対策が分散してしまい、一つの学校に対応しきれなくなるデメリットがあります。
そのため受験校を絞り、2~3校を集中して対策。さらに「おさえ校」をしっかりつくることで、この子のように安心してチャレンジ校を受験することもできます。
過去問を解くのは、基本的には、2学期以降で大丈夫だと思います。
しかし、夏前の段階から「志望校戦略」については、現実的に考えたほうがいいでしょう。ぜひリンク先の過去記事をご覧ください。
完璧じゃなくていい。中学受験の夏、現実的な乗り切り方
最後に、ここまでで触れていない夏休みにおいて大事なことを「3つ」書きます。
(1) 体調に気を付けましょう。ここ数年の夏の暑さは異常です。
昔、インド人と話をしたとき、「インドでは、『暑季』は夜にしか仕事しない」と聞きました。ちなみに、デリーの暑季の気温は38度くらいだそうなのですが、日本も最近はそのくらい普通にありますよね・・・。
「地球沸騰化」の夏の日中に、無闇にがんばるのは蛮勇ともいえます。塾を無理に皆勤するのではなく、オンライン授業に切り替える。また、たまには「休むのも、戦略」でしょう。
(2) 「夏休みに苦手分野の対策をしよう」と意気込んでいるご家庭もあるでしょう。
しかし、普通は塾に通って、宿題を回すので精一杯です。夏休みは、やりたいことが「7割できれば、超上出来」だとお考え下さい。
(3) 夏休みにがんばっても、夏明けの模試で結果は出づらいと思います。
その理由ですが、「他のみんなもがんばってるから、自分の学力が伸びていたとしても、相対的な順位(偏差値)は変わらない」ということが挙げられます。
また、算理社は出題範囲が「全範囲」になるので、学習した内容の整理ができていないと、解法や知識を上手く引っ張り出せず、なかなか点数につながりません。
むしろ、二学期以降に塾の問題や過去問演習を通して、「引っ張り出す」訓練をすることになるので、「夏明けからが、本当のスタート」ともいえます。
だから、焦らなくて大丈夫です。
みなさまのお子さんの夏休みが有意義なものになるよう、応援しております。
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