作文の型を覚えても、「浅い作文」しか書けない理由とは?【適性検査・中学受験 総合型選抜】

「国語」の指導・学習法

こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。

今回は、「良い作文が書けるようになりたい」という意欲のあるお子さんに向けた、ノウハウ記事・第2弾です。

公立中高一貫校の適性検査や、私立中学の総合型選抜(AO入試・一芸入試)を視野に入れたご家庭に、特におすすめの内容となっています。

  • 「作文の型を覚えれば書ける」と信じて、一生懸命取り組んでいるのに、なぜか評価が上がらない。
  • 「浅い作文」しか書けない。

そんな悩みに、心当たりはありませんか?

なぜ「作文の型」を学んだ後、「浅い作文」になってしまうのか。その理由と対策を、具体例を交えて解説していきます。

(※この記事は親御様向けです。記事内容をご覧いただいたうえで、必要な部分をお子さんに伝えていただければと思います)

「型」を使えば書ける?―典型的な失敗例を紹介

「『型』さえ身につければ、良い作文が書ける」・・・まるで「万能の魔法」のようなうたい文句を見かけます。

確かに「型を知る」ことは大事だと思いますが、型ばかりに目を向けていると、いつまでも、「内容のある作文」は書けません。

実際に、よくありがちな【問題提起 → 具体例 → まとめ】の型「はめただけ」の作文例を見てみましょう。

【テーマ】
「環境破壊」

【問題提起】
私は環境破壊は良くないと思います。たとえば、地球温暖化はくいとめる必要があります。なぜなら、砂漠化の原因になるし、生態系が変わってしまうからです。

【根拠・具体例】
工場や火力発電所から、CO2が排出されます。これが、温室効果ガスとなり、地球温暖化の原因となります。

【まとめ】
このことから、私は環境破壊は良くないと思いました。CO2を削減し、もっと自然を守るべきだと考えます。

小6で作文入試に挑戦しようとしている子が、これを書いたとして、100人の先生が読んだら、99人が「浅い(40点レベル)」と感じると思います。

では、「浅い」とは、具体的にどういうことでしょうか? 以下の内容に分解できます。

「浅い」とは

・「環境破壊は良くない」という結論は当たり前すぎる。「考えた形跡」が見られない。

・論旨の組み立て(「問題提起」~「結論」までの論理的な筋道)が甘い。

→「自分の意見」を補強するために、「具体例」を持ち出すのではなく、「知識(教科書等に書いてあること)」を並べて、字数を埋めただけ。

要するに、環境問題について、「思考の深堀り」をしないまま、単に思いついたことや、知っていることを「型」にあてはめただけなのです。

「調理されていない生肉」を、「きれいなお皿」に並べただけで、「おいしい料理」になるわけがないですよね? それと同じです。

何よりも「内容」を良くする意識を持たないと、どれだけ「型」を使ったところで、「浅い作文」を書き続ける結果になってしまいます。

良い作文は「問い」から始まる―問題提起の深め方

では、「内容」を良くするためにはどうすればいいのでしょうか?

作文の最初に書く【問題提起】は、「ただの主張」ではなく、「思考の起点」になっている必要があります。

そのためには、ひとつのテーマに対して、多角的な視点から問いを立てることが大切です。

思考の掘り下げ方は、大きく次の4つに分類できます。

  1. 過去と現在の比較
  2. 海外と日本の比較
  3. 解決策のアイディア出し
  4. 「本当にそうなのか?」と疑う視点

以下、それぞれの視点から「環境破壊」というテーマを例に見てみましょう。

・過去と現在の比較
→ いつから、環境問題が起こったのだろうか? 昔はなかったのに、なぜ、今はあるのだろうか?

→ 過去に環境破壊を防ぐ取り組みが、上手く行った例はないだろうか?

・海外と日本の比較
→ 環境破壊を防ぐ、取り組みが上手くいっている国はないだろうか? その国と、日本との違いはなんだろうか?

→ CO2の排出割合には、各国で差があるそうだ。この違いは何であるのか? 削減が上手く行く国と、行かない国の違いは何なのか?

・解決策のアイディア出し
→ 環境問題を「法律」で防ぐことはできないだろうか? 現状、それが上手くいっていないとしたら、なぜなのだろうか?

→ 海外の国とCO2削減の話し合いを重ねることは大事だ。 しかし、それが上手く行っていない様子なのは、なぜなのだろうか?

・「本当に」そうなのか? 疑ってみる
→ 「地球温暖化」は本当に存在するのか? トランプ大統領は「地球温暖化」は「でっちあげ」と称している。科学的な根拠はあるのだろうか?

(※ この論点はハマれば面白いが、いわゆる「陰謀論」的な結論に至ってしまう可能性もある。扱いは難しいので、要注意

たとえば以下のように、親御様から問いかけを投げかけて「ブレスト」をしてあげると、「掘り下げ」の手助けになります。

親「環境問題を防ぐためには、どうすればいいと思う?」

子「『法律』で防げばいいと思う」

親「もう法律はあるんじゃないかな? ネットで調べてみようか」

(※ 参考ページ:環境省 エコアクション21『主な環境関連法規』

親「『オゾン層保護法』って、パパママが子どものときに聞いたことあるな。オゾン層については知ってる?」

子ども「~~~~(子どもが答えられればそれで良し。わかっていないのであれば、親御様が知識教えてあげる)

親「オゾン層は、今はだいぶ修復されたらしいよ。ということは、現在、問題視されている環境問題も、取り組みによっては改善できるのかもしれないね」

ただし、親御様自身の学習歴や、ブレスト経験の有無などによって、ここまでのことが「できるか・できないか」は変わってくると思います。

私としても「理想的な例」を挙げただけで、親御様全員が「できるようにすべき」だとは考えていません。

親子のディスカッションは、割とこじれやすいので、上手く関われそうにないなら、無理せず、プロに任せることをおすすめします。

AIを使って、同様の「壁打ち」するのも良いでしょう。その場合、最初はやり方を親御様が見せてあげてください。

(※ なお、AIが活用できるシーンは「壁打ち」だけです。「客観的な情報」を調査する際には使用しないようにしましょう)

「浅い作文」との違いがわかる【改善例】

さて、【問題提起】を掘り下げられたら、あとは【問題提起→具体例→まとめ】の型にはめれば、それなりの作文が書けます。

先述の「親子のやり取り」をもとに、実際に作文を書いてみます。

【テーマ】
「環境破壊」

【問題提起】
現代社会は、様々な環境問題を抱えている。私たち、そして、未来の子孫たちが安心して暮らしていくために、早急に解決しなければならない。

どうすれば、環境破壊を防げるのだろうか。私は、環境破壊を「法律」で防ぐことはできないかと考えた。

【根拠・具体例】
過去に「オゾン層の破壊」が深刻な問題になったことがある。フロンガスの使用によって、オゾンホールが広がり、有害な紫外線が地球上に直接届く危険性が上がったのだ。

しかし、「モントリオール議定書」という国際的な取り決めや、日本の「オゾン層保護法」などの法律によって、フロンガスの使用が制限された。

その結果、今ではオゾン層の修復が進んでいるという。つまり、法律や国際的なルールによって、環境破壊を防げた実例があるのだ。

しかし一方で、地球温暖化を防ぐための取り組みは、上手くいっているとはいいがたい。国ごとのCO2排出量には大きな差があり、特に経済的に成長中の国では、排出量削減が難しいという課題がある。

これらのことから、環境問題によっては「法律を作れば解決する」という単純な話ではないとわかった。

【結論】
たしかに環境破壊を防ぐには、法律の力は必要だ。

しかし、それだけでは足りない。国同士が協力して取り組む姿勢や、一人一人が問題意識を持つことも欠かせないと思う。

将来、より良い環境の中で生きていくためにも、どのような制度が有効かを考え、知識を深めていきたい。

「浅くない作文」とは? 評価ポイントを3つに分解

この作文は、先ほどの作文に比べれば、「浅くない(70点レベル)」と思います。

「環境破壊は良くない」という結論は超王道であり、目新しさはありません。しかし、次のような観点から評価されるポイントを押さえています。

1. 最初に「自分なりの問い」を立てている

「環境破壊を法律で防げないか?」という疑問から書き始めており、問題を「自分事」として捉えられています。

テーマに対して、ただ「正解らしきこと」を言うのではなく、「自分なりに考えようとした」跡が残っています。

2.知識を「意見の補強」に使えている

「オゾン層保護法」のような具体例を「法律による成功例」として取り上げており、「自分なりの問い」とつなげることができています。

単に知識を並べたてるのではなく、「意見の補強」として使う。これができると、作文の印象は一気に変わります。


※なお、結論に「正解」は求められません。大人でも答えが出せない問題に対して、子どもが30分で書く内容に限界があるのは当然です。

大切なのは、そこに思考の形跡」が見えるかどうかです。

ちなみに、「なぜ温暖化対策は、法律だけでは進まないのか?」まで踏み込めると、「深い作文(90点レベル)」になります。

たとえば、経済成長と環境保護のジレンマや、各国の価値観の違いなどに触れられると理想的です。

まとめ:「思考を深める」日常会話がカギ

作文が得意な子は「文章が上手」というよりも、「疑問をもつ」「話し合う」「調べてみる」体験を日常的に重ねている場合が多いです。

親御様のサポートとしては、「じゃあ他に、どんなことが考えられるかな?」と問いかけたり、一緒に調べたりすることがカギになります。

「文章を上手に書く指導」ではなく、「思考を深める対話」をしていただけると良いと思います。

また、理科や社会に関する「最低限の知識」をつけることも重要です。知識がないと、子どもは「疑問」が持てないし、「調べもの」もできません。

塾の学習をこなすこと、また、何にでも広く興味を持つことを大事にしてくださいね。


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