中学受験生の入試直前期、学校は休む? 親にできるメンタルサポート

中学受験「あるある」な話題について

正しい努力が積み重ねられているのであれば、最後の最後は、「メンタル」「体力」がモノを言うのが中学入試です。

2/1まで、あと75日。ここまで、真剣に勉強をしてきた生徒ほど、精神的に不安定になりやすい時期といえます。親御様として、諸々の対応に迷うこともあるでしょう。

今回の記事では、「1.入試直前期に学校を休む際の注意点」、また、「2.入試直前期、親ができるメンタルケア」という2つのテーマについて書きたいと思います。

1.入試直前期に学校を休む際の注意点

そもそも、「直前期に学校は休むべき」なのか?

そもそも、「受験を理由として、学校を休む」ことに罪悪感がある読者様もいらっしゃることでしょう。それは当然の感情だとも思います。

筆者はコロナ禍(2020年)より前に、集団塾で講師をしていましたが、そのとき、1月に小学校を休む子は、半分いるか・いないかくらいだったように記憶しています。

ところが、コロナが蔓延し始めて、「万が一にでも罹患したら、受験そのものができない」という事態になってしまいました。

そこから現在(2024年)に至るまで、ほとんどの中学受験生が、1月は学校を欠席しているのではないでしょうか。

私はコロナ禍以降は、3年間、個別指導塾にいましたが、小6生は全員休んでいました。また、家庭教師の生徒も、これまで自分が教えている生徒は、もれなく休んでいます。私は、他の家庭教師の話を聞く機会が多いのですが、他の先生の話を聞いても同様ですね。

何が言いたいかというと、入試直前期に学校を休むのは、関東圏では、良くも悪くも「当然の慣習」になってしまったので、誰もが休まざるを得ないということです。

学校を休めば、かなりの勉強時間が取れますから、「他のライバルは休んで勉強しているのに、自分だけは休まない」という選択は合理的ではない、ともいえます。

ただし、学校を休んで受験勉強をする際に、注意していただきたい点がいくつかあるので、次に解説しましょう。

1月に学校を休むことの盲点は、「体力の低下」

1月に学校を休むと、「とにかく勉強量を増やしていこう」となりがちなのですが、その考え方には盲点があります。

ずっと机に座って勉強だけし続けていると、いざ2/1の入試に挑んだ際、体力が落ちていて、長い試験時間、集中していられない、という事態に陥ることがあるのです。

小学校では定期的に体育の授業があり、また、子どもによっては、友達と活発に外遊びします。それが、約1ヶ月の間、一切なくなってしまう。このことが、小学生の体力に及ぼす影響は、親御様の想像以上に大きいです。

ですので、定期的に外に出て散歩するとか、スポーツジムで一定時間トレーニングするとか、身体を動かす機会をつくるといいでしょう。

「間引き登校」のススメ

あるいは、学校を完全に休んでしまうのではなくて、たまには通ってみるのはいかがでしょうか? 私個人としては、このような「間引き登校」をおすすめしています。

その理由には、体力づくりだけではなく、精神的なものも挙げられます。家と塾でずーっと受験勉強を繰り返していると、やはり気が滅入るものです。

中学生や高校生と違って、小学生は、周囲の大人が、勉強の習慣さえつけてしまえば、長時間の勉強ができてしまうという傾向があります。実は精神的に限界でも、それが全く表には出てこず、入試本番になって・・・というパターンも。

だから、逆にいえば、直前期に「もう受からない!」などと言い出して、号泣したり、大騒ぎしたりする子もいますが、そういう子は親御様もフォローしやすく、ある意味で安心ということになりますね。もし、そういった事態が起きても、親御様も慌てず、「今で良かった」と捉えていただければと思います。

話を戻すと、12歳の子どもにとっては、小学校で、友人や先生と他愛ない話をしたり、授業を受けたり、遊んだりすることが、いい息抜きになるのです。ですので、たまには小学校に行った方が、本人にとってプラスになる場合もある、と親御様は知っておいていただきたいです。

そして、子どもがずっと家にいることで、親と子の距離が近くなりすぎてしまっても良いことはありません。親御様も、入試直前期には、たまにはカフェや映画に行くなど、意図的に・物理的に、子どもと距離を置くと良いと思います。

入試まであとちょっとで、できることはしてあげたいというお気持ちは痛いほどわかりますが、本番では子どもが一人で戦わなければいけません。親御様が世話を焼き過ぎないほうが、受験は上手くいくことは多いです。

2.入試直前期、親ができるメンタルケア

本当に、親は「女優」でいるべきか?

中学受験マンガ『2月の勝者』で、主人公の黒木先生が「お母様は、入試直前期、『女優』になってください」と、保護者たちに告げるシーンがあります。あれを見て、「叱っちゃいけないんだ」「親は朗らかでなければいけないんだ」と思っている方は多いかもしれませんね。

しかし、私としては、黒木先生の発言には半分否定的で、半分肯定的です。

まず、「否定」の部分を述べます。

子どもは、「親がいつもと違う」ことに非常に敏感です。そのため、親御様が「女優」を目指すことで、子に対して、腫れ物に触るような扱いになるのであれば、逆効果になってしまいます。いつもは口うるさい親が急に黙ったら、子どもは「もう、自分には期待していないのかな」と邪推することもあるかもしれません。

また、身も蓋もない話ではありますが、そもそも、勉強量や実力が足りていないのならば、親御様が必死に「女優」を演じたところで、合否結果には何らつながらないということになります。

親が子に、一方通行の感情をぶつけるのは論外としても、普段から、子どもと対話ができている関係性のうえで、叱ったり、厳しい話をしたりするのは、受験直前期でも全然ありです。基本的には、親御様はいつも通りに接して良いように思います。

不合格を想定した「予行演習」をする

次に、「肯定」の部分について述べましょう。

かの佐藤ママ(佐藤亮子氏)のエピソードとして、子どもを塾に送った帰りの車の中で、「不合格だった場合の声かけの予行演習」を繰り返し、一人で涙にくれていた、というものがあります。

我が子の不合格がわかったとき、誰しもが、奈落の底に落ちるような気持ちになるはず。普段は冷静な親御様でも、思わず、言ってはいけない言葉や、見せてはいけない表情を見せてしまうこともあるでしょう。

しかし、まだ次の入試が控えているときに、親御様の不用意な言動で、子どもを後ろ向きにさせることは避けたいものです。

そういう意味で、佐藤ママのような「予行演習」は有効ですし、「女優(=演じる)」という考え方も大事だと思うのです。

入試本番の想定だけではなくて、入試直前期に、「子どもが勉強をサボる」とか「過去問の点数をごまかしていた」とか「もうどこも受からないとパニックになった」とか、お子さんにありそうなマイナスの事態を想定して、そのときに、どう声をかけるのか? 考えてみることもおすすめします。

(まあ、2つ目に関しては、事後対応を想定するよりも、そうならない対策を先に考えるべきではありますが)

佐藤ママの名前を挙げると、「完璧な親にならなければいけないのか」と曲解される方もいらっしゃるかもしれませんが、あなた様なりの気遣いができれば、大丈夫です。

子を思うあまり、親が多少ズレた言動をしてしまったとしても、子どもは「自分のためを思って、何か言ってくれているんだな」「気を使ってくれているんだな」とわかってくれることもあります。

自分の過去の教え子は、「前受けの学校の入試前日、ホテルで勉強していたら、家族が10分おきに、『どら焼きを食べないか?』と声をかけてきた」と苦笑しながら話してくれました。そのご家族の行動を、愛情・気遣いとして受け止めた上での笑い話です。

ただし、そう思ってもらえない場合もあるでしょう。入試直前期の親御様の言動に対して、子どもが愛情を感じてくれるか否かは、「12年間の子育ての答え合わせ」ともいえるのかもしれないと、最近思うようになりました。


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