こんにちは。中学受験の家庭教師 鳥山と申します。
「『設問文の読み方』を変えたら、急に点が取れるようになりました」
これは実際に、あるご家庭からいただいた言葉です。
国語の失点が減らないとき、本文の読み方に目が行きがちですが、実は「設問の読み方」がボトルネックになっていることも多いのです。
この記事では、プロ家庭教師の視点で、「設問の読み方」にまつわる失点の原因と、対策を解説します。
問題文は、何度も読み返すことが大事
設問の読み方においては、以下が非常に重要です。
問題(設問文)を何度も読み、「ズレていないかな?」と振り返る。
当たり前のことに見えますが、実は、小学生は、「問題(設問文)を何度も読み直す」という発想を持っていません。
他人から教わらない限りは、身につかないと思います。
私が国語の問題を解くときは、
「問題を読む」→「本文の根拠に戻る」→「選択肢を消去する」→「問題を読む」→「二択に絞った選択肢を精査する」→「また問題を確認する」
・・・というように、何度も問題(設問文)を読んでいます。
難易度の低い問題であれば、1回読んだだけでも大丈夫ですが、小6の模試や入試問題では、平均で2~3回は読んでいると思います。
問題を解くために、あれこれ思考や作業を挟むうちに、設問文が聞いていたことの記憶がぼんやりしてくるので、何度も読みなおし、「問題を正しく捉えられているかな? ズレていないかな?」と振り返っているわけです。
ところが、生徒が解く様子を横で見ていると、問題を1回だけ読んで、解答を出していることもあります。それでは、問題と答えがズレまくります。
そういう子に対しては「問題は、何度も読んでいいんだよ」と伝えて、さっき書いたような手順を、大人と子どもで一緒にやっていくことが大事です。
小5の後半や小6で、国語の成績が下がったという子は、「設問文の読み込みが甘い」可能性もあります。
易しいテストでは、問題を1回読むだけでも頭に入っていた。
難易度が上がって、1回読むだけでは解けなくなっていることに気づかず、今まで通りのやり方を貫いて上手く行かなくなる、ということです。
問題内容を正確に理解しなければ、正答もできるはずがありません。
「何度も読み直す」ためには、スピード感も大事
しかし、子ども側の言い分として、「何度も問題を読んでいたら、制限時間に間に合わなくなるよ」というものがあるでしょう。
たしかに、一理あります。私だって、問題を何度も読めているのは、「超速」でそれをこなせるからです。
情報処理スピードやワーキングメモリ―が高度なレベルで求められるのが、現代のハイレベルな中学入試なんですね。
親御様としては、「スピード感を持って読む」「正確に読む」という、全く別の課題点を、一緒くたにしないようにして、それぞれ対処することが大切です。
スピード対策は、別途やるとしましょう。詳しくは、以下の【関連記事】を参考になさってください。
【関連記事】:令和の中学受験国語は激ムズ。「テストで時間が足りない」悩みの解決策とは?(1)
そのうえで、「問題の聞きたいことを正確に捉え、正確に答える」習慣をつけるために、宿題やテストの復習の際は、時間がかかってもいいので、設問文を何度も読み直すようにするのがいいでしょう。
「設問を読み間違えて失点する子」への対策
「うちの子、問題をよく読まないんです」という悩みは、親御様によくありがちだと思います。
しかし、その解決策として、「ちゃんと問題を読もう」という声をかけるのは、ほとんど意味がないことが多いです。
なぜなら、子ども本人としては真剣に読んでいて、適当に読んでいる認識はないからです。
とはいえ、それは「文字を読んでいる」だけで、「正確に問題を理解することへの、追究の姿勢が甘い」状態であるといえます。
であれば、「追究する姿勢」を作ってあげればいいのです。具体的には、以下のように問いかけてあげましょう。
「この問題、何を聞いているの?」
たとえば、テストの復習の際、一問一問、解きなおす前に必ず、「この問題は、何を聞いているの?」という質問を挟む。
そうすると、子どもとしては、一瞬「あれ?」と考えるのです。この「考える」というワンクッションが非常に大事になります。
これを何度も何度も繰り返していけば、言われなくても、子ども自身が脳内で「この問題って、何を聞いているんだろう?」と自問自答できるようになってきます。
【発展編】問題内容を「解釈」する
ここから先の内容は、設問の読み方の【発展編】となります。
学年が進んで、問題の難易度が上がると、「そもそも設問の意味自体が理解できない」シーンも出てきます。
問題:「今度はあたしがため息をつく番だった」とありますが、このときの「あたし」の気持ちを説明しなさい。
出典:サピックス 2023年3月 『小6 組分けテスト』
さて、この問題は何を聞いているのでしょうか?
問題を読んで、「『ため息をついた』ときの『あたし』の気持ち」だけが問われている、と解釈した方は結構多いのではないかと思います。
ですが、「今度はあたしの番だった」と書いてあるので、他にもため息をついた人物がいるのですね。
そこから考えると、この問題は、「他にため息をついた人物の気持ちと、あたしの気持ちを対比して、記述をさせたい問題」であるとわかります。
文字通り問題を読んだだけでは、問われている内容は理解できないことでしょう。
前回の記事でも書いたように、「文字を読む」と「内容を理解する」行為は、全くの別物なのです。
こういった問題を理解できるようになるために、「何かのコツを教わる」のは、さほど有効ではありません。
そうではなくて、「頭の使い方」を変えなければいけないのです。
大事なのは、「自分は、設問の意味がわからなかったんだ」という自覚を持つこと。
そして、そのために、指導者が適切な形で指摘してあげることです。
そうすれば、徐々に「問題がやらせたいこと」の解釈ができるようになってきます。
問題の聞いていることが、「わかっている」のか「わかっていないのか」、メタ認知がないまま、なんとなく、それっぽい答えを書いている状態が一番まずいので、注意しましょう。
さて、「設問文は何度も読ませています。でも、国語で点が取れないんです」という場合、「スピード感」「読み方のクセ」「語彙・常識」といった別の要因が起因している可能性があります。
このページ下部の【関連記事】で解説しております。興味のある方は、ぜひご覧ください。
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